卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「ふむふむ、システムから適当にランダムで人材がやってくるみたいですね。じゃあまずは何人か雇って【アンプルアロー】でも作ってもらいましょうか。完全に自分用ですけど」
ぽちぽちっと雇用ボタンをタップすると、押した数だけ空からNPCが降ってきて、きれいに着地していく。そんな彼らに【アンプルアロー】の作り方を教えると、せっせと作業に取り掛かってくれた。ポーション調薬係1名と矢の製作担当1名でツーマンセル。素材はボクの【ストレージ】に入っていたものを渡してみたけど……。
「会社経営ならどこかから仕入れられそうだね。他のプレイヤーが素材を売ってるところとか」
なるほど、さっそく会社一覧から素材を売ってくれそうなところを調べてみると、薬草を栽培している会社さんがありました。そこに取引をお願いしてみることにした。
「なんだか別のシミュレーションゲームみたいで楽しいですね。大量生産したところで、それを消費するだけの需要があるのかはわかりませんが」
いくら大人気ゲームの【フォッダー】だからといって、NPCを雇ってポーションを作り始めたら、プレイヤーだけでは消費し尽くすことなんて不可能なはずだ。
まあそのポーションを合わせてさらにアイテムを作れることも考えると、試行錯誤によって生産テクニックのシンギュラリティが起こる可能性もあるのかな?生産活動で一番重要なのは素材の確保。それがNPCによって行えるのであれば、技術の発展も飛躍していくに違いない。
そして今回の目的は魔族の街を発展させるための準備活動。幅広いアイテムの改造に乗り出して、魔族の街のみならず技術の発展も狙っていきましょうか!
「じゃあ次は妖精さんの確保ですねっ!」
「あれ、ボクが妖精さん集めたがってることって言いましたっけ?」
「あんなに妖精さんの使い方について考えてるのを見てれば、すぐにわかりますよっ。妹ですしっ!」
さすが灑智!確か【ロジング砂漠】にいるんでしたね。NPCも派遣してみましょうか。NPCを何人か追加雇用してステータスを見てみたけど、かなり能力値が低い。
新規実装のエリアの敵が弱いわけがないですし、派遣するにしてもレベル上げのために慣らしを行ったほうが良さそうです。妖精を仕入れている店があるなら、自前で供給するまでの間はそちらから購入しても良さそうですが……。
とりあえずコメットでしばらくレベル上げをしてもらうようにお願いして、妖精の件は後回しにした。
「まずは【アンプルアロー】ですけど……たしかこれは〈定義拡張〉のルールによって作られているんでしたよね?」
今もせっせとNPCの方々が作っている矢を眺めながら、ボクは考えをまとめるために思考を言葉にしていく。配信をしているのだから、何を考えているかちゃんと口に出していかないとね。
どんな奇天烈な矢であっても撃てる弓が存在するなら、システムでは矢として扱われる。このような屁理屈めいたシステムで〈ホームタクティクス〉をはじめとする様々な派生テクニックが生まれていたけれど……原点に立ち返ってこの矢を強化することもできるのでは?
「単純に内容量を増やすことはできるけど、それだと100%の力は発揮されないんだったよね?」
「そうでしたね。そちらは『発動』という性質を持つ【オートユーザー】にしか成し得ない領域です」
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>そういえばホームアローなんてのもあったな。なんか矢で撃てたら強そうなのってあるかな
>なんか発想が凝り固まってるよね。なんでもありじゃんそれ。ちなエアプ
>馬鹿でかいミサイル撃ってきた奴いたけどあれも定義拡張だったんだろうな
>クロノスの人だっけ?単純にもっとでかいの作ればやばそうだね
>凝り固まってるってどこがだよ。めっちゃ画期的なんだが?
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凝り固まってる。コメント欄に流れてきた1つの反応が目に入る。こういった発言は、割と茶化すコメントが多いボクのチャンネルでは日常茶飯事なので普段なら軽く流しているんだけど……今回ばかりは心に響いた。
なんだ?何を見落としている?この人は何に気づいた?聞いてみたいところだけど、やはり自分で考えるべきだろう。
プレイヤー達はこれまで定義を拡張していくつかのアイテムを作ってきた。タンスを搭載することによって家具、つまりアイテムとして扱われる家。あるいは逆に、装備としての要件を満たさないことによって装備から切り離した盾なんてのもある。
けれどこの2つのアイテムと比べると、『矢』の定義にはなんらかの穴があるように感じられる。具体的にその穴が何なのかはわからない。
けれどこの自称エアプの人の指摘。これこそが毎日100回以上終わっている【フォッダー】にさらなる滅びを与える『パンドラの箱』であるような気がしてならない。
「……駄目ですね。思考がもやもやしてきました。一旦他のアイテムについて考えるとしましょうか。新しいフォルダさんみたいにエンチャント効果のガチャもやってみたいですよね」
「でもそれって、なんか普通だよね♥なんかもっと面白い案だしてよ♥配信映えしないよ?」
「いやいや、こういうのも巷ではガチャの結果を配信するだけで視聴されてしまうという意外な需要がありましてね——」
そして何か画期的な新製品について語り合っていた時……何かのスイッチが押されてしまったような正体不明の直感が脳裏をよぎった。
こういった直感はとがみんの方が得意なようだけど、元々1つの身体であったがために、〈
「とがみん、今、何か感じませんでしたか?」
「……引き金が引かれたね」
「えっ、なになにっ?どういうことですかっ?」
灑智だけは«リアルステーション»であるが故か、あるいは〈
しかし、少なくない数のプレイヤーが今の切り替わりを感じ取ったはずだ。
ゲームに参加しながら配信を見ているプレイヤー達も先程の言葉で言い表せない謎の感覚についてコメント欄で語り合っている。やはり【フォッダー】をプレイする多くの人々は既にこの領域に踏み込んでいるんですね。
そんな中、とがみんが超常的な直感に基づいておもむろに【ストレージ】を開いていく。その中のアイテムを思念操作によってぱらぱらと確認していき……そして気づいた。
「——『武器』が『矢』に拡張された」