卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第228話 拭いきれぬ違和感

「せっかく炎属性を有効利用できると思って回復魔法を使ってたのに、威力上がってなかったんですね……。しょぼーん」

 

 しょぼーんと落ち込むボク1さん。確かにできそうって思っちゃいますよね?普通は試した後に気づくものですけど……。

 

「まあまあ、気分を切り替えて妖精さん採取と洒落込みましょう!【オアシス】はこっちにあるんですよね?」

 

「ですね。【モーションアシスト】が嘘をつかない限りはちゃんと辿り着けるはずです」

 

 3人のボクとゴブ蔵がまだ見ぬ【オアシス】を求め、地平線の果てを目指して炎天下を歩み続ける。そんなボクらの後ろに何十人もの視聴者さんが追従する。図らずも形成された大軍勢が砂漠のモンスターを蹂躙していく。

 

 プレイヤーやそれに対抗すべく生み出されたボスモンスターならまだしも、その辺に出てくるようなモンスターにボクらが負けるはずもない。〈トンネル避け〉すら突破できずに沈んでいき、素材へと変化していく。

 

 そうしてモンスターを蹂躙しながら砂漠を駆け抜けていくと、視線の先に小さな青い水溜まりのようなものが見えてきた。水溜まりを取り囲むように草や木が繁茂しており、まるでその場所だけがシステム的に区切られた別のエリアであるかのように思わせる。

 

「あれが【オアシス】であることにまず間違いはないでしょうね。どんな場所なんですか?」

 

「この砂漠ってすっごく広いですよね?だからその中継地点として用意された補給スポットみたいです。この砂漠には【オアシス】を筆頭に定期的にランダムなスポットが形成されるんですよ」

 

「なるほど。【オアシス】だけではなく、砂漠自体の性質としてランダム配置になっているんですね。素材を採取するのに苦労しそうなエリア構成ですね」

 

 【オアシス】以外の特殊スポット限定の素材なんてものもあるだろうし、【モーションアシスト】がなければ、当てもなく延々と彷徨い続ける羽目になっていたかもしれませんね。逆に何度訪れても楽しめる面白コンテンツとして流行るかもしれないけど、それは配置されるスポットの種類にもよるかな。後で調べてみよう。

 

 砂漠の性質について雑談しながら、ボクらはゆっくりと【オアシス】へ距離を詰めていく。近づいていくと、青い水の上をふわふわと小さな光の粒のようなものが飛び交っているのが目に映る。——妖精さんだ。

 

 ボクの肩に乗っている妖精さんは光を放っていないんだけど、なんでだろう?ふとそう思い、肩に目を向けるとすでにぴかぴかと輝いていた。にっこりと太陽のような微笑みを返してくれる。恐らくは【オアシス】自体がなんらかのパワースポットになっているのだろう。ここにいると妖精さんが光を放つんですね。

 

「……楽しそうに飛んでますけど、採取してもいいんでしょうか?」

 

「向こうから来てくれないかな?おいでおいで!」

 

 ボク(ボクではない)が手招きをすると、数匹の妖精がひらりと宙を舞いながら近づいてきて、その手に乗った。

 

「やった!大切にしますからねー!」

 

「なるほど、そんな感じですか!来てください!」

 

 ボクも同じように妖精さんにアピールしてみると、2匹の妖精さんが来てくれた。すでにいる妖精さんと一緒にボクの肩を定位置にして、ほのぼのと日光浴を始める。

 

 しかし、それによって自分のエリアが手狭になったのか、最初の妖精さんはぱたぱたと空を飛び、代わりにゴブ蔵の頭に飛んでいった。

 

 どうやらそれ以上の妖精さんは来てくれないようで、大量採取はできないらしい。自分から捕まえに行くのはかわいそうだし、逃げられそうなのでやめておく。

 

「さて、目的の妖精さんとも会えましたし、解散にしますか?」

 

「そうですね。誘ってくれてありがとうございました!これからこの妖精さんとの連携コンボを開発してきます!」

 

「ボクはとりあえずお家で一緒に遊んでから考えましょう。なんだか可愛がりたくなるんですよね、妖精さん」

 

「同じボクでもやっぱりそれぞれで行動パターンが違うんですねー」

 

 結局、彼女らがなんでボクの格好をして、ボクと似たような思考回路をしているのかはわからないままだけど、聞いても教えてはくれなそう。まあ、今回はサブ目標である妖精さんの採取も果たせましたし、よしとしましょうか。

 

 遅れてやってきた視聴者さんたちも妖精さんを採取し始めたので、この後はなにか面白い妖精さん活用の方法を披露したいところですね。

 

 というわけで流れ解散となったのだけど、視聴者さんが集まって【オアシス】も賑わってきたので、なんとなくその場でまったりとその光景を眺めていくことに。本物であるはずのボクが放置されて、2人のボクが質問責めにあってるのがちょっと寂しい。まあ、今回の『フォッダー不思議探検隊』の企画におけるテーマとなる方々なので仕方ないことではあるのだけど。

 

「やっぱり炎属性が好きなの?」

 

「大好きですよ!ただ、それでも他の属性が明らかに優位であるとなれば縛りを設けてまで使うほどのこだわりではありませんね。裏で装備集めを完了したら(ビルド)を変えようかと思ってます」

 

「ゲーム以外に趣味はある?」

 

「最近はTRPGに特にハマってます。以前から少し手を出していたのですが、【フォッダー】と密接な繋がりがあるとなれば、これは遊ぶしかないでしょう!ということで。配信外でも時々遊んでいるんですよ」

 

 視聴者さんの質問に対して、おおよそボクも同じようなことを言うだろうなーと思うような答えをそのまま返していく彼女たち。完璧な再現力ですよね。

 

 (ビルド)やコミュニティなどの環境が同一でないからこそ、ボクと彼女らには僅かな思考パターンの違いがあるけれど、逆に同じ環境下であれば、思考も含めて完全に同じであったに違いない。IFを語る意味はないかもしれないけど、彼女ら自身がボクのIFであるかのような言動をとっている。

 

 仮にファンであるとしたら相当な研究を積み重ねてますね。卍荒罹崇卍ガチ勢でしょうか。

 

 しかし、そんな忠実なIFの再現も、とある質問によって完全に姿形を変えた。

 

「『転式学院』ってどんなところなんだろうね?卍さん知ってる?」

 

「——今、何か言いました?」

 

「あれ?聞こえなかった?『転式学院』っての、ちょっと前にバズってたじゃん?あれが——」

 

「——いま、なにかいいました?」

 

 ぞわりと鳥肌が立つ。質問者も2度目の反応でなにか様子がおかしいことに気づいたのか、後ずさりつつも質問を切り替えていく。ボクの【フォッダー】以前の配信に関する無難な質問だ。それに対して彼女はごく当たり前のようにすらすらと答えている。その所作にはなんの違和感もない。

 

 けれど、たった今発生した強烈な違和感を拭い去ることはできなかった。ボクと視聴者さんが何かを感じ取る。

 

「……『転式学院』と関連がある?」

 

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