卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第229話 突撃調査

 妙な緊張感が【オアシス】をじわりと包み込む中——もう1人の卍荒罹崇卍ことボク1は、普通に『転式学院』について回答してくれた。

 

「すっごく怪しいですよね。怪しい人体実験の検体にでもされそうで怖いです……。みなさんはそんな怪しい学院に入校しないでくださいね」

 

 ボク1は『転式学院』とは関わりがないんだろうか?同じようにボクの名前とアバターを使っているのに別口なのかな?

 

「……ボク2さんについてどう思います?」

 

「あっちの卍さんのことですかね。……ボクはてっきり卍さんになりきるのが流行ってるのかと思ってたんですけど、もしかして何か危険な実験に関わってるんでしょうか。逆に本物の卍さんは心当たりはないんですか?」

 

「えっ!?……ないですけど……。ボク、なにかやっちゃいましたっけ?」

 

「ややこしいことになりそうなので、カミングアウトしておきますが、ボクはただのコスプレイヤーです。本垢については内緒ということで」

 

「大量に発生した『ボク』に便乗したってことですね」

 

「端的に言えばそうですね。いやー、てっきり卍さんの視聴者さんがいつものように連携を取って嫌がらせをしてるんだと思ってましたよ。お騒がせして申し訳ありません」

 

 申し訳なさそうにしているボク1さん。その思考を《ロールプレイング》で模倣してみたけど……なるほど、今は演技をやめてるみたいですね。口調はボクに似せてはいるけど、あくまでなりきりの範疇に留めている様子。中の人は結構若い男性……かな?これまでの知り合いではなさそうです。

 

 

 その後はボク1さんとフレンド登録して、世界(チャンネル)を切り替えて配信を再開する。

 

「本当にボクがたくさんいましたね。どうなってるんですか?コスプレはちゃんと許可を取ってからにしてくださいね?」

 

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>現実逃避するな

 

>卍さんとかいう転式学院の実験体

 

>卍さんクローンとか作ってそう

 

>こわい

 

>フォッダーの闇が深いのには慣れたけど卍さんまで闇が深いのか

 

>もう何も信じられない。騙してたんだな!!

 

>何を騙してたんだよ

 

>わからんけどなんか騙してる。間違いない

 

>これは炎上案件ですわ

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「何を言ってるんですか、ボクだって寝耳に水ですよ!ボクは対【フォッダー】用の量産個体かなんかだったんですか!?」

 

 ボクの主観では、普通に生まれて普通に育った普通の女の子だという自覚はある。だけど、現代社会の技術力なら記憶なんて改ざんできるので、自身の主観さえ信用に足る根拠にならない。こわい。

 

 昨日は灑智に怖がらせられて、今日はボクの量産個体に自身のルーツについて考えさせられるという、『異形』が世に跋扈する昨今でもなかなかないくらいの非現実感を味わってる気がする。

 

「もうログアウトしていいですか?灑智に甘えてきます」

 

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>しゃーない

 

>ちょっと今から転式学院入学してくるわwwwww

 

>無茶しやがって……

 

>知ってるか?ドッペルゲンガーにあったら死ぬらしいぞ

 

>ドッペルゲンガー同士で遭遇して集団突然死起きそう

 

>VRだからセーフセーフ

----

 

 茶化されつつも、いつもとは違って心配するような優しいコメントももらって、今日のところは本当にログアウトすることにした。

 

 『VRステーション2』から飛び出して、〘リアルステーション〙を操作中の灑智にぎゅーっと抱きつく。

 

「灑智ー!ボクってなんなんですかー!?」

 

「わわっ、お姉様っ!もうっ、今ので攻撃を受けちゃったじゃないですかっ!」

 

「灑智が冷たい」

 

「魔力が冷たいですからね」

 

 灑智っていつもひんやりしてるなーって思ってたんだけど、魔力のせいだったんだね。

 

 灑智はとがみんと一緒に呪われた装備の試運転をしていたのだけど、2人ともボクのためにログアウトしてくれることになった。ごめんね。

 

 『VRステーション2』からゆっくりと出てくるとがみん。こういう時はうさぎを可愛がりたいのに、残念ながら現実のとがみんはボクとほぼ同じ容姿だ。よく考えるとすぐ近くにこんなほぼドッペルゲンガーみたいな人がいるのに、量産型のボクがいるくらいで怖がる必要はありませんでしたね。

 

 2人とも配信は見ていたのだけど、肝心の別世界(チャンネル)で起きた出来事は配信不可の都合上見られなかったらしい。だからボクが何に怖がっているのか、イマイチピンとこないみたいだ。なので情報の整理も兼ねて、先程起こった事件を言葉にして伝えていく。

 

「——というわけなんですよ、ボクって『転式学院』につくられた量産兵器とかじゃないですよね?大丈夫ですよね!?」

 

「……最近まで荒罹崇だったわたしの言葉には意味がないよね。灑智ちゃん、どうなの?」

 

「そんなこと言ったら私も記憶改ざんされてるかもしれないですし……でも、心配しすぎですよ。なんならお父さんに電話してみます?」

 

「まあそうだよね。そんな漫画みたいな展開あるわけないよね。ふふ、妹に怖がらせられちゃってメンタルが弱ってるのかなー♥」

 

 灑智ととがみんにからかわれつつも構ってもらい、少し落ち着いてきた。そ、そうだよね。いくら超技術と『異形』が跋扈する現代日本でも、そんな現実的じゃないことが起きてるはずないですよね!?

 

「でもじゃあ『転式学院』ってなんなんでしょうね。ボクが知らないうちに関わってるんでしょうか……」

 

「じゃあ確かめにいこっか、3人で入学しよう♥」

 

「嫌です。怖いです」

 

 比較的落ち着いたけど、それでも怖いものは怖い。

 

「ゲーマー育成校ですよね?じゃあVRにログインできない私も無理ですね……」

 

「みんな冷たいなー。じゃあわたしが1人で行ってくるよー」

 

「……大丈夫ですか?死にますよ?」

 

「普通は学校に入ったくらいじゃ死なないよ?」

 

 とがみんに危険を押し付けるのは非常に申し訳ないのだけど、このままじゃ『転式学院』のことが気になって夜しか眠れないくらいなので、かわりに調査をお願いすることになった。

 

「じゃあさっそく入学申請してみよっか。……うわ、申請するには匿名化のVPNを通した上で量子暗号化してデータを送れって。怪しー♥」

 

 ……本当に大丈夫ですか?

 

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