卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第240話 バイオリズム

「〈進化(エボルド)〉なんて知ったことか!まったりお散歩して何気ない日常を過ごしてやりますからね!」

 

 というわけで始まりました、ボイコット。普通ボイコットって言ったら、【フォッダー】をやめるだろって?知りません。

 

 宣言とともにコメント欄が大荒れしだすけれど、もう完全無視だ。人類の進化に貢献なんて絶対しませんよ!

 

「というわけで【ダスター都市】にやってきました。【会社】システムなんてリアルには何も持ち込めないゲーム内機能でしかないですからね。これからいろんなお店や会社を見学しますよ!」

 

 困ったらとりあえずお店を見て回る。今までも定番ネタのように定期的にお店見学パートを挟んできましたよね。なんて言いながら、今までの配信を振り返りつつ、とことこと街をお散歩していく。

 

 まず最初に見つけたのは占い屋を自称する謎のお店だ。外観は怪しげなパープルのテントで、入り口はカーテンで覆われている。確かに占いをやってそうなイメージの建物だ。ちなみに大きさはワンルーム程度で、ビルとビルの隙間に強引に割り込むようにして建造されている。

 

 システム的なお店であれば占いという商売が成立してもおかしくはない。例えば『物をよく拾いそうだよ』って占われたらドロップ率アップが期待できるからね。しかし面白いことにここはプレイヤーが営業しているお店らしい。一体どんな占いをしているんだろうか。ちゃんと当たるんだろうか。

 

 当たるにしても、まあ間違いなく人類の進化にはまったく貢献しないお店に違いありませんね。現在ボイコット中のボクとしてはぱーふぇくとな場所だと言えるでしょう。

 

 カーテンを開けて中に入ると、薄暗い部屋の中に蝋燭によるかすかな光のみが灯る怪しげな空間が広がっている。テントが燃えちゃわないかな?なんて思ったけど、不壊なのできっと大丈夫なのだろう。

 

 薄暗い空間の奥には小さなテーブルと水晶玉。そして占い師だと思われるローブ姿の人が奥側の椅子に腰を下ろしていた。

 

「いらっしゃい……キヒッ」

 

 顔がローブに隠れて見えないのでよくわからないけど、中性的な声ですね。一応男性アバターかな?

 

「ずいぶんと雰囲気のあるお店ですね……えっと、一応表で確認したのですが、占いの館で大丈夫ですよね?」

 

「間違いないさ……ここは最新の科学によって編み出される()()()()()()()、『現代占い』を取り扱っている……」

 

「『現代占い』?」

 

「根拠のない占いなどとは違う。確立された技術によって為される占い、というわけだよ……」

 

「そんなのあるんですか?今の状態を解析して未来を予知するとか?」

 

 確かに計算によって天気や地震などの未来を予測することは不可能ではないけれど、それを占いだと断言してしまっていいのか。そうなると世の中のいろんな仕組みやシステムがだいたい占いになってしまうのだけど。

 

 それにそういうのは大規模なスーパーコンピュータなんかを使って行うのが普通だ。【フォッダー】界にスーパーコンピュータは無い。【A-YS】の世界ならあるかもしれないけれど、少なくともこの部屋にはそういった科学的な代物は置かれていないように見える。けれど……。

 

「それらはいわゆる『シミュレート』というものだよ……占いでも似たようなことはできるけどね」

 

「では、こちらで取り扱ってる占いとは一体どのようなものなのですか?」

 

「——『バイオリズム』さ」

 

「はい?」

 

「『バイオリズム』を知らないのか?『バイオリズム』(英: biorhythm)とは、心身の状態を表す3種類の波(「身体」、「感情」、「知性」)のことをいうが、科学的に実証されていない仮説にすぎず、疑似科学と見なされているのさ……」

 

「どこかから転載してきたみたいな語りはやめてくださいよ。つまり、証明されてないってことじゃないですか」

 

「百科事典に最新の情報が記されているとは限らない……そうだろう?」

 

 そうかもしれないけど、つまりこの人が勝手に立証したと思いこんでいるだけでは?

 

 とは思ったけれど、仕方ないので話を伺ってみることに。『バイオリズム』というのは要するに、人体の好調と不調の波のようなもの。不調な時には物事を失敗しやすいし、好調な時には物事がうまくいく。その好調と不調の時期を知ることで、結果的に『うまくいく』『うまくいかない』を科学的に知ることができるのだとか[要出典]。

 

「ふむふむ、つまり人生を左右する挑戦みたいな行動は身体が好調な時にやった方がうまくいくというわけですね」

 

「そうさ……。ただし、これはあくまで自分自身の身体の好調・不調を知るもの……。つまり身体が絶好調のときに宝くじを買ったからといって当たるとは断言できないさね」

 

 理屈は理解できた。この人の話ではつまり、なんか知らないけど今日は気分がいいなー!ってなる日を知ることができるということだ。

 

「じゃあボクの次にいい感じになる日はいつなんですか?」

 

「それを知るには生年月日の情報が必要だが……あんたは公開してたね。ちょっと調べてやろう」

 

 そう言って占い師さんはAI画面でなにやらページを開き、情報を入力していく。その直後、わなわなと震える声で情報を読み上げた。

 

「あんた……明日は『身体』『感情』『知性』の3つがすべて最低値を記録するね……気をつけたほうがいいよ」

 

「いい感じになる日は!?」

 

「しばらくないね。明日は【フォッダー】にログインしないほうがいい。最悪死ぬ」

 

「死ぬの!?」

 

 このエセ占い師によると明日は最悪死ぬくらい不調らしい。だとしたら、配信者としては逆に明日は絶対ログインしてどのくらい不調になるか配信しないといけませんね。もし絶好調だったらこの占い師の人を訴えてやりますよ!

 

 こう見えてもボクは毎日いつでも絶好調の人気配信者ですからね!今日はさんざんガチ寄りの罵倒を受けて傷ついたけど、それでもなお絶好調!不調な日なんてあるわけありませんよ!

 

 明日が楽しみですね。すぐに結果がわからないのは残念ではあるけれど、占いに即効性があったら逆にびっくりですからね。わくわく。

 

 それからボクは占いの館を出て、特に実利もないお散歩をしたり他のプレイヤーと雑談をしたりして1日を過ごしてログアウト。しばらくはこんな感じでまったり配信して視聴者をふるい落としていきましょう!

 

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