卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「おはようございます……。きゅー……てくちゃんねるへ……ようこそ……卍荒罹崇卍で……すー……」
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>死にかけてる……
>これ半分呪いだろ
>本当にバイオリズムのせいなのか?
>人類に貢献しない報いだぞ
>バイオリズムが最悪のプレイヤーに今挑めば勝てるんじゃね?
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これ、本当に『バイオリズム』のせいなんですか……?今までこんなに体調が悪かったこと、ないんですけど……?
例の占い師のところに朝早くから顔を出すと、改めて詳しく解説してくれた。今日はボクと同じ生年月日の人にとって、最大級に、身体・感情・知性すべてのバランスが崩壊している日なのだそうな。これからはボクもちゃんと『バイオリズム』を調べてから活動しないとなりませんね。
幸い、軽く検索しただけで、生年月日を入力すればグラフ形式の『バイオリズム』データがわかるツールを発見した。占い師さんが使っていたのと同じようなものだ。これがあれば、別に占い師さんに頼る必要もないですし……正直、廃業なのでは?
「現代占いは『バイオリズム』だけではないのさ……さらなる占いの深淵に挑んでみるか……?」
「やはりまだ先の境地があるのですね……ついにボクもフォーチュンテラーになっちゃいます……?」
さらなる占いの深淵には大変興味があるのだけど、残念ながら体調が最悪でやる気が湧いてこない。仕方ないので【モーションアシスト】を利用して『バイオリズム』に干渉していくことにした。
軽く3回。とん、とん、とん。足を鳴らすとともに、靴から放たれた音波がボクの体を突き抜け、『バイオリズム』を整えていく。最初の1回で身体のバランスを整え、次の1回で感情を制御し、最後の1回で知性を活性化させる。
「『バイオリズム』を制御したのか……これでは先程のツールは使えなくなったかもしれないさ」
「あ、確かに。一定の周期で健康状態が変化するっていう話なのに、その周期をずらしてしまいましたからね」
と言っても、また体調が悪くなったらチューニングし直せばいいだけだ。好きなときに最適な状態を再現できるなら悪くありませんね。
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>ボイコットはどうしたんだ
>またテクニック提供してて草
>これは昨日の全能テクを使ってるだけだから問題ないぞ。初見か?
>そもそも自分自身の体調管理だったら全能いらなくない?
>かっこつけたかっただけだぞ
>全能テクあればもう他のテクニックいらなくね。進化だって好きなように調整できるじゃん
>全能テクあればもうゲーム内のスキルいらなくね?
>ゲーム内のスキルを無視して全能で殴り合うだけのゲーム来たな……
>そもそも量子操作すれば人体の姿を保つ必要性すらないからな
>これもう半分アセンションしてるだろ
>全部アセンションしてるぞ
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「みなさんはせいぜい頑張って〈
「なかなかやる気があるな……。弟子になるか……?鍛錬を積めば秘奥を伝授してやることも検討するさ……」
「占いの秘奥……?気になりますね!でもボク、配信してるんですけどいいんですかね?まあボイコット中なので、やめろというのなら切りますが」
そんなことを聞いてみると、コメント欄が再び炎上し始める。「配信を止めるな」「いやさっさと止めろ」と、意見が割れる。視聴者さんの中には今までのファンもまだいらっしゃるので、そこまで冷たいことはしませんけどね。
「構わないさ……すべての人間が全能になった世界においてはちょっとした手品みたいなもんさ……」
確かに『バイオリズム』の件に関しても【モーションアシスト】1つで陳腐化しましたしね……。
というわけで弟子にしてもらいました。これで占いの技術を体得したら、灑智を占ってあげよう。
「まずは『占星術』……知ってるさ?」
「雰囲気はわかります!月の大きさとか、星の動きから占うんですよね!」
「そう……星座占いはその簡易版さ……。生まれたときの星の配置から人生を占うホロスコープだとか、流れ星のような特殊な出来事から吉兆を予測したりもするね……」
意外と普通の講義ですね。『バイオリズム』なんかはそういう人体の仕組みが解析されたってことで納得がいきますけど、星座が実際に人生に関わったりするんでしょうか?
「占星術は最近まではオカルトとされていたけど……〈魔導〉の発見によってついに実証された……。星と〈魔導〉は、関係が深そうだろう……?」
「なるほど。ということは、実は昔の占星術は〈魔導〉を前提にしていた、という可能性もあるんですね!」
「そういうことさ……生まれた日の星の配置によって魔力は変化する……。そして魔力の色や質によって人の性格も少なからず影響を受ける……つまり、これからは星座占いじゃなくて魔力占いがオススメさ……。魔力を見られるんだろう?」
「見られますけど……それによってどんな変化があるかは統計を取ってみないといけませんね」
正直《『心眼』》は最近、あまり活用できていない気がする。〈魔導〉を使う人なんてあんまりいないし、主観の神様であるアクタニアでさえ、魔力を持っていても権能は魔力と無関係。せいぜい「どこにプレイヤーが隠れているか」がわかるとか、【モーションアシスト】でも済むようなことしかできない。
「それなら〈魔導〉をもっと知ったほうがいい……。おおよその物理法則を起こせる今の環境でも、〈魔導〉にしかできないことがあるさ……」
「〈魔導〉にしかできないこと……」
「秘奥は〈魔導〉の存在が前提さ……。それを調べたらまた来るといい……」
そうして今日の講義は終わりとなった。別にいつ来てもいいけど、「〈魔導〉でしかできないこと」を知ったうえで、基礎知識くらいは身につけておいたほうがいいんだって。
占い屋の外で視聴者さんに問いかける。
「〈魔導〉でしかできないことってなんですか??」
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>自分で調べろ
>そりゃ大体の物理法則は例のテクで使えるんだから物理法則を無視した動きだろ
>トンネル避けは物理法則無視してないの??
>理論上は可能だから無視してない
>じゃあもうあれじゃん、未来予知とかそういう創作系能力だろ
>それ物理法則と世界の情報全部知ったら出来ますよね?
>おう早く世界の情報全部知る方法よこせ
>世界の情報全部知ってたら未来予知とかする気も起きなそう
>ぜんぜん全能じゃねーじゃねーか卍さん誇大広告やめろ
>魔導でしかできないこと多すぎワロタ
>意外とフォッダー終わってなかったな
>世界の情報を全部知る方法がないだけで終わってないことになるフォッダー
>でも魔導でしかできないことは魔導を使えばできるんですよね??
>フォッダー終わってた
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嵐のように流れゆくコメント欄。ところどころ荒れているコメントも見受けられるけれど、やっぱり視聴者さんが増えただけあって、ついていくのも一苦労だ。
「なるほど、案外いろいろありそうですね。でも物理法則で再現できない=〈魔導〉で再現できる、というわけでもなさそうですからね。やっぱり〈魔導〉の基礎知識くらいは必要かな?」
魔力を最適解で動かすところまで考慮するなら、知識なんて後からいくらでもついてきそうだ。けど、せっかく師匠から「ちゃんと調べてくるように!」と宿題をいただいたのだ。自分で〈魔導〉を使って練習してみよう!