卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第244話 机上論

 ……意味がわからない。〈乱数調整〉?ゲームの話ですか?いや、ゲームですけど。

 

「この世界で〈魔導〉が発動した回数によって未来の流れは変化する……。それなら都合の良い未来を選ぶこともできる……。これが占いの秘奥さ。未来を見るのではなく、好きなようにコントロールできる」

 

 確かに理屈の上では通る。風が吹けば桶屋が儲かるように、〈魔導〉が発動すればその先の未来は変動する。けれど、その理論には致命的な問題がある。

 

「他の者が〈魔導〉を発動した時点で再び変動してしまうのではないか?」

 

 ゆうたさんの指摘のとおりだ。確かに世界でボク1人だけが〈魔導〉を扱えるのであれば、好きな未来を選び取ることができる。けれど、残念ながら〈魔導〉という技術は全世界で絶え間なく発動している。

 

「そこなのさ……〈魔導〉を扱える存在が全人類で1人であれば自由に世界を動かすことができる……。けれど、残念ながらそれはできない。できるのは()()()()()()()()()()()()()()()……。言ったろう?手品みたいなものさ」

 

 なるほど。例えばテストで100点を取る未来を見てしまえば、テストの解答もついでにわかるわけですね。そして、それを前提に行動してしまったら、やっぱりシミュレーションが破綻してしまうのでは?

 

「やっぱり机上論の上では——って奴ですね。残念ながら現実的には難しそうです」

 

「秘奥などと勿体つけておいて弟子を騙す……。これが現代における占い師の秘奥、話術によるペテンさ。勉強になった?」

 

「オチがつきましたね! いや、誰もが世界の未来を自由に選べるようになったら本格的に人類が終わりますからね?ある意味ではホッとしました」

 

「そうなったとしても未来の選び合いで相殺されそうだな。しかし、テクニックに活かせないのは残念だが勉強になった。なるほど、()()()()()()()()、か」

 

 さて、秘奥を教えてはもらったけれど、それ自体は今のボクらには使えそうにない代物だった。代わりに占いの発祥やさまざまな種類を雑談がてらに教えてもらう。

 

 結果的には【フォッダー】にはあまり活かせそうにないけれど、そもそもボクはボイコット中。こんな感じで【フォッダー】と関係ない話で盛り上がっていくのもいい感じですよね!

 

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>なるほど……全員の魔導師をぶち殺せば世界の未来を思い通りにコントロールできるわけか

 

>ここにテロリストがいます!!

 

>通報しました

 

>全人類がなにかしらの魔導を使えるんだけど??

 

>人類殲滅計画かな

 

>自分のバイオリズム調べてみたけど明日は絶好調日だってさ

 

>ちょっと弄れば毎日絶好調日にできるんだよなあ

 

>身体のバランス崩れて体調を壊しそう

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 コメント欄では全人類でたった1人の魔導師になるために、いかにして人類を滅ぼすか議論をしていらっしゃる。

 

 まあ全能を使えば確かに全人類を滅ぼすこともできるけど、残念ながら(?)受け手の側も全能の使い手。同格の存在が相手であればそう簡単にはいかないんですよね。

 

 さて、占い師さんにお礼を言って今日はもう店を出ることにした。また暇な時に会いに来ましょうかね。……それにしても、なんで【フォッダー】で占いのお店なんか開いてるんでしょう?

 

 占い屋のテントから外に出て、ゆうたさんと一緒にビルが立ち並ぶ町並みをとことこと散歩していく。

 

 辺りを見渡して面白い会社がないかなー?と探しつつも、ゆうたさんに軽く話題を振ってみた。

 

「そういえば、最近の対戦環境はどんなもんなんですかね?」

 

「末期だな」

 

 ゆうたさんは端的に一言でボクの質問に答える。言葉が少なすぎるけど、それだけで想像がついちゃって笑えてきますね。

 

「動画があるぞ。見てみるか?」

 

「見てみたいです!ゆうたさんの対戦動画ですか?」

 

「いや、これは最近の【シングル杯】の観戦動画だな。今回のシングル杯はさすがに環境が読めないのでな、参加は見送ったんだ」

 

 慎重ですね。負けたからといって特にメリットはありませんが、かといって時間を浪費するくらいなら観戦と研究に当てたかったのでしょう。

 

 そんなことを考えているうちに、ゆうたさんはメニュー画面を操作して観戦の動画を見せてくれた。空中に真四角な映像モニターが出現する。

 

 モニターに写っているのはボクの知らないプレイヤーだ。けれど、ゆうたさんがわざわざ撮影して保存しているということはPvPでは有名なプレイヤーなのかもしれない。

 

 どちらのプレイヤーも重装備で全身フルプレートの鎧を着ているのだが、武器を装備していない。【ナイト】/【モンク】同士のミラーマッチなのかな?

 

「少なくとも今回のPvPではこの装備スタイルが流行している。おそらくは耐久面を重視しているのだろう」

 

「ちなみにこういう重装備は【ナイト】とかじゃなくても装備できるんですけど、適性じゃない職業(クラス)だとステが下がるんですよね。……と視聴者さんに説明しておきます」

 

 つまり、この装備スタイルが流行しているということは、装備のためだけに重装備に適性のある職業(クラス)を選択しているということになる。

 

 さて、装備で推察できるのはそれくらいか。試合開始前のカウントが終了し、ついにバトルが始まる。さて、〈バタフライタクティクス〉ありの環境はどんな戦いになってるのかな?

 

「さあ試合が始まりました!まず最初に動いたのはエヌビスさん!左手側のプレイヤーで——」

 

 そして面白半分で試合を実況解説しようとしたことを後悔する。

 

 エヌビスさんが軽く右手の指をパチンと鳴らす。その瞬間、一瞬にして大竜巻がエヌビスさんの前に出現し、フィールドをぶち壊しながら対戦相手——☄さんに迫る。

 

 それに対し、☄さんはほんの一瞬……瞬きよりも短い刹那でその場から消失する。同時にエヌビスさんの背後に現れ、勢いよく殴りかかった。

 

 瞬時にそれを悟ったエヌビスさんは軽く地面を足でタッピングする。同時に背後のフィールドが勢いよくせり上がり、鋭利に尖った岩となって☄さんに襲いかかる。

 

 もちろんこのゲームは尖った刃物やオブジェクトでも串刺しになることはないが……地形ダメージを受けつつ、大きく上空に打ち上げられていく。

 

 ☄さんは上空に飛ばされながらも体勢を制御して、地上に向けて拳でジャブを数回放った。

 

 たったそれだけで空気が圧縮され、激しい熱を帯びて発火・炎上し、エヌビスさんをめがけて超速度で射出される。

 

 しかし、エヌビスさんが再び足を地面に叩きつけると、彼をめがけて放たれたはずの炎がまるで逆再生のように跳ね返り、☄さんを撃ち抜いた。

 

 

【ゲームセット WIN:エヌビス LOSE:☄】

 

 

 

 

 

 

「ゲームのスキルは??」




テクニックその103 『乱数調整』
〈魔導〉を発動する度に世界の流れが変わっていく。普通に過ごしている分にはなにも変わりがありませんが、未来予測などを行おうとするとこの微細な変化が影響を及ぼし、それまでのシミューレーションの結果とまるで違う結果に移り変わってしまう。
で、あれば〈魔導〉を行使すれば擬似的に好きな未来を選び取ることができる——という机上論のテクニックです。
実際には〈魔導〉を使う人が他にいる限りは成立しないんですけどね。
シミューレーションの結果が変わってしまうとしたら現代ではどうやって事象の予測をしているかというと、常にシミュレーションを繰り返し、その変化を観測する事によって『流れ』を考慮に入れているのだとか。また、直近の出来事であれば変化の幅も少ないので『流れ』を考慮せずとも確度の高いデータとして有用に使えるらしいです。余談でした。
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