卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第247話 吹き抜け建築

 必死の説得も相まってか、ゆうたさんはなんとか踏みとどまってくれた。まあボクの人徳があってこそですね。必死すぎワロタ、とか、見苦しすぎて同情された、とかコメント欄に流れてきたけど気にしません。

 

「まったく、誰ですか!ボクを指名手配したのは!素直に名乗り出てください!」

 

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>工作活動1回じゃ手配まで持ってけないんだよな。試したけどなにも変わらなくてがっかりした

 

>もしかしておまえらも工作してたの?俺も3発くらい撃ち込んだけど

 

>俺もやったよ。協力プレイだったのな

 

>視聴者の大半が犯人ってマジ?

 

>システム的な悪行はしてないけど恨まれてる人を指名手配できるってことなんかな

 

>言うても卍さんのファンならあんなフリをされたら速攻で工作しにいくよな??

 

>最近は新規の視聴者からヘイトも買ってたしそれが引き金かもね

 

>つまり従来の卍さんファンは悪くないってことか。にわか死ねや

 

>清々しいまでの責任転嫁。これはファンの鑑

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「視聴者さんは後で処刑するとして、考えようによっては悪くないかもしれません。対戦相手が向こうからやってくるわけです。しかもゲリラで」

 

 基本的にPKはする方もされる方も、一部のクエストを除いてメリットがないのだけど、賞金首だけは倒す価値がある。メリットがないのにわざわざPKばかりしてると賞金首になって、今度は向こうから挑戦者がやって来る。そんなWin Winのシステムなのだ。

 

 というわけでこれからは、一定時間が経過するか、あるいは【牢獄】にぶち込まれるまで、対戦相手が群れをなして襲ってくる。そんな方々をばったばったと薙ぎ倒していければ、ゲーム内スキルの優位性を証明できるに違いない!

 

 さあ、どこからでも掛かってこい!きょろきょろと周囲を見渡していると、突然後方から光の如き速度で岩が飛んでくる。それを«《ガゼルフット》»のオート回避でひらりと避け、飛んできた方向を改めて見やると……いた。1人目の挑戦者だ。かなり離れたところから、小賢しくも岩の砲弾を放っている。

 

「くらえや!」

 

 その言葉と共に、挑戦者の足元の土が隆起し、岩の塊となって放たれる。間違いなくスキルではなく、全能による攻撃だ。つまり最適解の恩恵を受ける以上、〈トンネル避け〉での回避は難しい。

 

「«疾風迅雷»!」

 

 そんな岩の砲弾に向けて最高速のAGIで勢いよく突っ込んでいくボク。

 

「はっ!自滅しに来たか!」

 

 【メイジ】の防御力でこの速度の攻撃を受けたら間違いなく即死。たしかにこのまま体当たりすれば自滅だろう。しかし当然ながら当たるつもりはない。«疾風迅雷»を停止させ、即座に«階段革命»によって上空に駆け上がる。

 

「追え!」

 

 即座に向きを変え、ボクに追いすがろうとする岩石砲。だけど、逃げ回る一方じゃないんです。

 

「【メテオ】!」

 

 【マクロ】で回避しつつ、詠唱時間(キャストタイム)を終えた【メテオ】を発動する。挑戦者の上空から燃え盛る隕石が落下していく。

 

「配信を見てるから知ってるんだぜ?まだ【フレキシブルアップ】を発動させていないことはな!」

 

 確かに。今のボクは【フレキシブルアップ】を発動させていない。つまりこの【メテオ】は〈トンネル避け〉に対応できない。

 

 

 そう思ったのが運の尽きですよ?

 

 

「【フリーコマンド:フレキシコマンド】!」

 

 ——【将軍の旗槍】。【ダブル杯】の入賞報酬。効果は【コマンド】スキルの発動。

 ほんの一瞬しか効果が続かない玄人向けの付与(バフ)スキルだけど、その増加量は絶大だ。〈トンネル避け〉に合わせるなんて、ワケ無いことなんですよね!

 

「しまっ……」

 

 墜ちる流星。押しつぶされる挑戦者。いくら全能が幅を利かせていようが、プレイヤーが到達できる耐久値でこの攻撃を受けられるはずがない。

 

 

「なーんてね。【コマンド】スキルは自身に使えないんですよね」

 

 

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>普通に死んでて草

 

>嘘つきー!

 

>マジかよ自身に使えないコマンドを使うチートとか最低だな

 

->通報しました

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「負けると思った瞬間に、()()()()()()()()を与えてしまう。嘘を嘘と見抜けない人にこのゲームは向いてないんですよねー!」

 

 ボクを追い続けていた岩石砲の制御が崩れ、ゆっくりと自壊しながら地面に落下していく。それについていって自然落下しつつも、【フレキシブルアップ】を発動させる。危なかったー!初戦で死ぬかと思いましたよ!

 

 最後に【エアジャンプ】で衝撃を殺し、すたっと着地。ちなみに今更だけど、ここはビルの立ち並ぶ大都会。【メテオ】を盛大に地面に抉り込ませたボクは指名手配ポイントを上乗せだ。相手だって地面をえぐって岩石砲を作ってたのにずるいよね?

 

「これは助ける必要もなさそうだな。斬っていいか?」

 

「いつから辻斬りキャラになっちゃったんですか、ゆうたさん」

 

 【マクロ】によって超速度で近づかれながら物騒な発言をされると怖いんですけど?

 

 さて、改めて周囲を見渡すと、こんな戦いがあったにもかかわらず周辺は通常営業だ。車は【メテオ】の落ちた地帯を避けて問題なく道路を走っているし、工事のおじさんたちが戦場跡を修復しようと頑張っているくらい。

 

 当然周囲にはプレイヤーもいて、先程の戦いを見ていたようだけど、あそこまで堂々と仕掛けてくる人は今のところはいないらしい。PKというだけで相手が悪いやつでも忌避感を持つ人が少なくないのに、ボクみたいなきゅーとな少女をはっ倒そうとするような人がそんなにいるわけないんですよねー。

 

 あるいは町中で戦闘するのに問題があると考えてるのかも。建造物を壊して巻き添えで犯罪者(レッドネーム)になりたくないでしょうし、いったん外に出てみましょうか。

 

 と、その前にやることがあったんでした。とことことボクはとある会社に向けて歩いていく。目的地は1つ。【ヘル商事】だ。

 

 見つけた見つけた。あの建物がそうですね。見た目は周囲のビルとまるで変わらない没個性的な高層ビルなのだけど、入口に【ヘル商事】と書いてある。駐車場のようなスペースはなく、道路のすぐ脇に直でビルが建てられている。周囲の他のビルも同じように立ち並んでいるのだけど、じゃあ今、絶賛道路を走行中の自動車はどこの駐車場に停めるんだろうね。

 

 それはともかくとして、さっそく自動ドアを通って中に……は入らず。

 

「【メテオ】!」

 

 ビルの上空から隕石を落とす。建物を上層から盛大にぶち抜いていき、1階までを吹き抜け構造にしてあげました!

 

 このゲーム、以前に説明したように、プレイヤーメイドの建物は家として破壊されないのに、初期配置のNPCのお店は建物じゃなくて地形なので壊せます。……普通は逆ですよね?

 

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>これは極悪指名手配犯ですわ

 

>リアルでもこんな事を素でやってそう

 

>これで一気に視聴者厳選できたな。間違いない

 

>チャンネル登録者数爆増してて笑う

 

>厳選できてないじゃん

 

>いいか初見共、これが卍さんだ。震えろ

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