卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第248話 全能狩り

「えー、いいことをして清々しい気持ちになっていたら、なぜか懸賞金が増加してました。なんでだろう?」

 

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>なんでだろう?(すっとぼけ)

 

>早く刑務所にぶち込め

 

>PKはよ

 

>犯 罪 を 善 行 と 認 識 す る 女

 

>むしろもっとやれ

 

>これが卍さんの真骨頂なんだよなあ

 

>最低ですねチャンネル登録ダブルタップしました

 

>新パターン来たな……

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 とことこと歩いて【ダスター都市】の外へ向かうボク。ゆうたさんも、なんだかんだでついてくる。パーティ申請を送ったら承認してくれたので、ボクと一緒に犯罪者(レッドネーム)の仲間として戦ってくれるらしい。

 

 周囲のプレイヤーも、わざわざ街の外へ向かうボクを襲う気はないらしい。そもそも懸賞金自体がゲームとして積極的に殺しにかかるほどの高額ではないのも相まって、今のところは興味を持たないプレイヤーも多いようだ。

 

 とはいえ現在ボクは絶賛配信中。懸賞金を差し置いても、目立ちたがり屋の視聴者さんや最近増加している初見の方々が腕試しがてら襲ってくるに違いない。いつ敵がやってきてもいいように、【フレキシブルアップ】は定期的に掛けて効果時間を切らさない。

 

 無駄なスペースはありません!と言わんばかりに、等間隔でビルが建ち並ぶある種異様な街。だけど最も異様なのは、街と外の境界線だ。正確には境界線が具体的に示されているわけではないんだけど、ある場所を境にビルが一軒もなくなる。だからすぐわかる。

 

 もう少し行くと【ダム水源】が広がっているはずなんだけど、そこまで行くと逆に闘いが面倒になりそうだし、この辺でいいかな。マイホームをどかんとその場に配置して準備完了。ゆうたさんと一緒に屋根の上で待ち受ける。

 

 ちなみにこのマイホーム、今までほとんど触れてないけど屋根が燃えてます。ボクもゆうたさんも装備によって炎属性ダメージを吸収にまで持っていけるので、最高の陣地ですよね。

 

 さて、続いて【トラップハンター】によってさらに布陣を形成していこうか……と思ったところで、さらなる挑戦者がやってきた。

 

「さあ、全能狩りの時間ですよ?」

 

 街の方から光の如き速度で4人のプレイヤーが飛んでくる。宙を自由自在に突き進むその姿は〈ロードウィング〉とも«疾風迅雷»とも違う。制限なしの完全なる飛行だ。ボクたちの【ホーム】の真上を取るようにしながら、急接近してくる。

 

「«階段革命»!」

 

 それに合わせてボクも【マクロ】によって高度を合わせていくと、プレイヤーの1人がぱちんと指を鳴らす。

 

「くらえ!」

 

 瞬間、空気中の水分が凝縮され、氷の槍となって放たれる。全能の使い方は基本こうやって投擲物を発射するのが多いみたいだね。もっといろいろな使い方があると思うんだけどな。

 

 ……と、放たれる槍を軽く避けようとしたところで、自分の身体が急に鈍くなる。なんというか、関節が動かしにくくなった感じ。おそらくはこれも相手さん方の誰かの全能による実質的な妨害(デバフ)なのだろう。しかし、【モーションアシスト】に命令を送って即座にその拘束を解除させ、【テレポート】で槍を避けながら近づいていく。

 

 なるほど、こういった干渉は〈バタフライタクティクス〉の間接的な操作よりも【モーションアシスト】による直接的な最適解の方が制御力を上回るわけだ。互いの全能が相殺される以上、対人において直接的に相手に干渉を仕掛けるわけにはいかないんですね。

 

 さて、ボクに近づかれるのを嫌がったのか、4人はそれぞれ別の方角に散開しながら遠隔攻撃をし始めるけど……。【マクロ】を使わない時点で【フォッダー】プレイヤーとしては二流もいいところ。なんでもできると言っても、ゲーム上の最速は〈疾風迅雷〉だ。この事実を変えることはできない。

 

 なぜならこの世界はステータスによって出力上限が決まっているのだから。

 

 たまに同じステータスでも速く動けるプレイヤーはいるけれど、それは上限値いっぱいまで出力を引き出しているというだけ。たまに〈魂の言葉(ソウルワード)〉で平気でその壁を超えてるような人もいるけれど、それは知りません。

 

「«疾風迅雷»!」

 

 とにもかくにも、圧倒的なAGIをそのまま再現するこの【マクロ】を超えることはできない!

 

 氷の槍を放っていたプレイヤーに一瞬で接近し、【ソウルフレア】をぶち当てて撃破。すぐさま次の標的をめがけて方向を急転換していく。

 

 ちらりと〈ストリームアイ〉で他のプレイヤーの動きも確認すると、ゆうたさんが両手にマシンガンを抱えながらプレイヤーを追い回している。«バタフライタクティクス»以外の手札が1つでもあればなにかしら対抗できそうなものだけど……全能頼りの初心者なのだろうか?

 

 しかし、次の標的は他のプレイヤーとは一味違うらしい。

 

「«バックステッポ»!」

 

 女性プレイヤーがこちらに稲妻を放ちながらボクから距離を取り続ける。«疾風迅雷»の後ずさり版、といったところでしょう。空中にいるにもかかわらず、後ろ歩きのモーションによって超高速で逃げ回る。稲妻は〈魔導〉である〚ライトニングボルト〛のようだが、恐るべき連射スピードで周囲に撒き散らしている。1回程度なら当たったところで問題ないけれど、直進してると多段ヒットしそうで危ない。

 

 «疾風迅雷»のオンオフを切り替えながら軌道を変えていき、ジグザグに避けていく。けれど相手は一直線に逃げて回るので【ソウルフレア】は当てられなさそうだ。当然【テレポート】で近づけるような距離でもない。

 

「【フェアリーブレス】!」

 

 仕方ないので風属性の投射スキルを放ってみる。風属性は速さを取り柄としているので«バックステッポ»に追いついて攻撃を当てることが——さすがにできない。素のAGIが高いわけではない以上、いくら速い攻撃スキルでも最速を超えることは許されない。

 

 なので自分に当ててみることにした。放った【フェアリーブレス】に«疾風迅雷»で体当たりし、盛大に自爆をかましていく。

 

 これで【煈颷の刻印】の効果で炎属性ELMが増加し、同時に【フェアリーブレス】の効果である『命中時に自身のAGIが増加する』という条件も達成した。

 

 これを繰り返しつつ長い長い追いかけっこを続けていく。【フェアリーブレス】のAGI速度増加は5回まで重複可能だ。定期的に自分にダメージを与えつつ付与(バフ)の効果を重ねがけしていき、«疾風迅雷»未発動時の機動力やスキルの速度を高めていく。代わりにじわじわとダメージを受けていくのだけど、同時に細かい速度の最適化によって距離を詰め、追い詰めていく。

 

「えいやっ!」

 

 焦った相手は一度距離を取ろうとして〈バタフライタクティクス〉によって風を制御し、勢いよく突風を吹き付けてくるが……。

 

「【アームズスイッチ】«疾風迅雷»!」

 

 即座に装備を換装し、片手に盾を装備する。【メモリシード】によって製作された着脱可能な盾。これに«疾風迅雷»の速度補正を乗せて勢いよく射出する!

 

 世界最速の慣性を受けて放たれた盾は、突風を突き抜けて一直線に相手をめがけてすっ飛んでいく。

 

「うわわ、〚ライトニングボルト〛!」

 

 慌てて迎撃しようとするが、〚ライトニングボルト〛程度の出力でこの衝撃を殺せるわけがない。

 

 高速で放たれた盾を起点にして【ホームリターン】で瞬間移動を行う。そこからさらに【タクティクスフラッグ】により詠唱時間(キャストタイム)を0にした【テレポート】で刹那の隙も見せずに距離を詰め、【ソウルフレア】を勢いよく叩き込んだ。

 

 あっけなくHPが全損していくプレイヤーさん。まあこんなもんですね。

 




マクロその12 『バックステッポ』
«疾風迅雷»の後ずさりバージョンな【マクロ】です。
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