卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
キリトさんがゆっくりと【ストレージ】から剣を取り出す。それは、これまでのキリトさんのスタイルである一刀流ではない。元ネタたるキャラクターの象徴、二刀流……!
「さあ……行かせてもらうぜ?」
キリトさんは光の如き速度で駆け抜け、跳躍によってボク達のいる家に飛びかかる。反射的に迎撃を試みようと考えたけれど……駄目だ!うさぎさんの持つ【ビショップ】スキル【応報の奇跡】で、攻撃した瞬間に致死量のカウンターが返ってくる。さらに【守護の奇跡】で与えるダメージも削られる。
「退くぞ、荒罹崇!」
ゆうたさんの声に合わせて家から即座に飛び降り、キリトさんから距離を取る。どうやらキリトさんはボクの家を陣取って、そこから動く気はないらしい。こちらをじっと見据えながら2本の剣を構えている。
「うさぎさんの形成する無敵フィールドから出る気はない、ということですね」
こんな身も蓋もない戦術を持ち出されちゃ、まともに戦ってもしょうがない。家を回収して即座に撤退してもいいのだけど、それは実質的な敗北宣言だ。なんとか一矢報いてやりたい。
家の影に隠れて通常の視界からは見えないけれど、あかりちゃんさんも今はうさぎの隣で棒立ちだ。うさぎ戦術の優位性、あるいはキリトさんの勇姿?を撮影するのがメインといったところでしょう。
「攻めてこないんですか?うさぎさんと一緒に前進すればそこから動くこともできるでしょう」
「うさぎさんに足並みを揃えて前進するほどの練度はない。だが……攻略できるか?この無敵の布陣を!言っておくが、逃げるなら俺の勝ちだ!」
----
>風評被害が酷い
>アスナさんも本気で幻滅してそう
>勝手に勝利条件設定してて草
>不戦勝だからね仕方ないね
----
「……ふむ」
ゆうたさんが光の如き速度で家を回り込み、うさぎのもとへ向かう。システムによって定義されている以上、うさぎをなんとかしなければ絶対にダメージは与えられないからだ。制限されているのはダメージを与える行為。つまりうさぎさんを拾って1匹ずつ切り離していけば
しかし、うさぎさんの近くにはあかりちゃんさんが控えている。
「今のあかりちゃんはうさぎさん専用
「近づけば【アンカー】辺りで縫い留められるといったところか。スピードが下がるだけであれば不可能ではないが、ややリスクがあるな。1匹や2匹を攫ったところでダメージ係数的には誤差だろう」
逆に言えばあかりちゃんさんもまた、近づきさえしなければ何もしてこないということだ。なんというか、戦ってるというよりも陣地を占拠している?といった感じ。これは本当に勝負なのか疑問ではあるけれど、向こうから動いてこないというなら作戦もじっくり考えられるし準備もできますね。
「ここで現状をおさらいしましょうか。【守護の奇跡】は自分の発動したエリアにいる味方が受けるダメージをカット。【応報の奇跡】は自分の発動したエリアにいる味方が攻撃を受けたときにカウンター。本来は回復のエリアなどのスキルを発動しないとエリアは形成されませんが、うさぎさんはモンスター固有の
【守護の奇跡】
[パッシブ][スイッチ]
効果:[自身]の[発動]した[エリア]にいる[味方]の[受ける][ダメージ]を[減少]させる。
【応報の奇跡】
[パッシブ][スイッチ]
効果:[自身]の[発動]した[エリア]にいる[味方]が[攻撃]を[受けた]時、[攻撃]を行った[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。
「つまり単純に切り崩すならば、うさぎさんを拾って遠くに隔離してしまえば、この2つの効果を受けずにすむ、ということですね。しかし、うさぎさんの近くに控えるあかりちゃんさんは現在推定【ナイト】。【アンカー】を発動すれば、うさぎを攫って逃げようとした時点で大きな隙ができますし、キリトさんがすぐに出張ってくるでしょう。そして迎撃した瞬間、即死。これが現状の説明になりますね」
【アンカー】
[アクティブ][自身][キャラクター][エリア][妨害][ガード]
消費MP:6 詠唱時間:0s 再詠唱時間:45s 効果時間:10s
効果:[自身]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[敵][キャラクター]の[モーションスピード]を[低下]させる。[出力]は[自身]との[距離]に[反比例]する。
----
>相手するのが無駄なレベルで笑う
>もうこの戦術があれば全能相手にも負けないだろ
>勝てもしないぞ
>逃げたらおまえの負けなって言えば勝てるぞ
>まじかよキリトさん最低だな
>あかりちゃんさんは可愛いからセーフ
>かわいいは正義
>正義はずるい
----
ただ、この戦術に関しては実は対策がある。というよりも例のうさぎさんの騒動を見てから絶対誰かやってくるだろうなーとは思っていた。
【ダブル杯】や【シングル杯】、あるいは【パーティ杯】の人数ではダメージを完全カットできないことから成立しない。だが、人数に制限のない遭遇戦、あるいはボクの【ギルド】が一強のせいでいまだに経験したことがない【ギルドバトル】においては、むしろこの戦術を使わない方が舐めている。
結論を言うならば……この戦術は全能に対してめっぽう弱い。あの時期においては確かに最強の戦術だったけど、環境が変わった今においてはそこまでの拘束力を持たない。
今回のボクらは全能に縛りを設けているから使うことはできないんだけど……。まあなんとでもなる。
「ゆうたさん、【パーティストレージ】からやっちゃってください。そろそろ
「了解した。【アームズスイッチ】!」
そうしてボクの【ストレージ】から取り出したのは、例のアタッチメント機構の盾だ。それを間髪入れずに、あかりちゃんさんに向けて放つゆうたさん。
「攻撃?それじゃあカウンターが……あっ!」
さすがに気付いたときにはもう遅い。あっけなく盾に弾き飛ばされ、うさぎさんもろとも吹っ飛んでいくあかりちゃんさん。ダメージは確かに無効化された。けれどカウンターは発動しない。
なぜなら盾の発射は攻撃でも何でもない。勝手に家が吹っ飛び、物質干渉力と地形ダメージを与えるだけのオブジェクト。
そして一瞬にしてうさぎさんと切り離されたキリトさんに、久々の超弩級炎属性魔法が炸裂する!
「【サモン・フィーニクス】!」
宣言と共に、現世に顕現する命を司る超越存在、【フィーニクス】。
その暴威から逃れることはできない!
「くっ!」
【フィーニクス】の得意技は
急いで吹き飛ばされたうさぎさん達の下へ向かおうとするキリトさんの行く手を、事前に回り込んでいたゴブ蔵が塞ぐ。
今ゴブ蔵が発動しているのは視認した相手のステータスを下降させる【ネガティブゲイズ】。これによってAGIが低下したキリトさんはほんの少しだけ動作が遅れ……。
キリトさん。次はうさぎさんではなく、あなたの二刀流とバトルしたいですね。
テクニックその104 『無因果攻撃』
武器や防具でないオブジェクトを投擲によらず発射する行為。これは状況だけ見ると自分が攻撃のために行っている行動なのですが、システム的に見ると勝手にアイテムが吹っ飛んでいるだけなので因果関係が無く、プレイヤーによる攻撃とはみなされません。
攻撃に反応して発動するカウンタースキルなどから逃れられるので地味に便利。久々にテクニックと呼ぶにふさわしい感じの普通の裏技が出てきましたね。