卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第251話 無職の超越者

 あかりちゃんさんもこの戦術の欠陥に気づいたらしく、もう戦うつもりもないようで、そのままおとなしく降参してくれた。

 

 結果論ですけど、キリトさんとあかりちゃんさん、うさぎさんまで含めて数の暴力で殴りかかってきてくれたほうが、ボクは苦戦していたかもしれませんね。

 

 とはいえ、うさぎさんは別に戦う気もないらしく、のほほんと日向ぼっこしているだけ。たぶんただついてきただけで、お願いしても積極的に戦ってはくれなかったでしょう。

 

 そんなきゅーとなうさぎさんをなでなでしながら、次の挑戦者を待つ。ちなみにうさぎさんとは【レギオン】を組んでいないので、ボク達は結界(エリア)支配者(ドミネーター)としての恩恵を受けられない。

 

「あかりちゃんさんはどうしてキリトさんと組んでいたんですか?」

 

「配信でいいところを見せたいから、撮影してくれって。あかりちゃんも卍さんと戦うつもりはなかったけど、アスナさんにもお願いされちゃったからね」

 

「キリトさんを振ったはずのアスナさんが今回の件に関わっていたんですか?」

 

「なんかキリトさんが勝手に暴走しちゃってたみたい?それで仲直りしたかったんだって」

 

 ……なにやら複雑怪奇な事情でこじれているご様子だ。二刀流を解禁したキリトさんの真の力も見てみたいし、うまく解決してくれるといいんですけど。

 

 

 さて、それからも有象無象の初心者(ニュービー)達が押し寄せてきたのだけど、全能頼りのプレイヤー相手に苦戦する要素はもはやない。

 

 なにせ便宜上、全能とは呼んではいるけれど、できることはさまざまな物理現象をスキルに頼らず自由に起こせるというだけだ。後半になってくるとスキルに頼らず自在に瞬間移動してくるプレイヤーなんかもやってきて、戦術の幅は広がってきた。けれど、たぶん自由度が高すぎて何に使えばいいのかつかめていないんだろう。

 

 いつかは全能だけでも強い人が出てくるんだろうけど、少なくとも今は、全能とゲーム内スキルを組み合わせて戦ってくるほうが脅威だ。遠くから伸ばした量子を利用して【トラップハンター】を発動してきた相手と当たったときなんかは、本気で牢獄送りになるところだった。おそらく手や足といったスキルの起点となる部位の量子だけを、こっそり送り込んできていたんだろうね。

 

 

「さて、これで『ゲーム内スキルこそが至高』だと皆様にもわかっていただけたでしょう!」

 

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>なんかパッとしないプレイヤーばっかりだったからわからん

 

>ただの初心者狩りがほとんどだったからな……

 

>キリトさんがいただろいい加減にしろ

 

>キリトさん暗黒道に堕ちてたじゃねーか!

 

>全能よりゲーム内スキルが強い× 初心者の全能よりゲーム内スキルが強い○

 

>次は卍さんが全能のみで並み居る強豪プレイヤーをはっ倒すってマジ??

 

>マジだぞ

 

>まじかよ全能最強じゃねーか

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「いやいや、ボクは全能が強いなんて証明はしませんから!とにかくゲーム内スキルや装備は強いんです!以上!じゃあそろそろプレイヤーも来なくなってきたので、お開きに……」

 

 

「全能と聞いては見過すわけにはいかんな。我以外に神の権能たる全能を行使できる者なぞ存在しないというのに」

 

 

「神様、ですか」

 

 もちろんアクタニアではない。奴はすでに明日香さんの下僕として牙を抜かれた。当然BANを食らった【女神】でもない。そう、解散しようとしたボク達に声をかけたのは、この世界屈指の縛りプレイヤー、『無職』の神。

 

 これまでは装備を使って普通のプレイヤーと同じように活動していたみたいだけど、謎の〈魂の言葉(ソウルワード)〉である《神なる行動(ディバインアクション)》を持っている。今回の企画でも地味に警戒していた存在と言える。

 

 『無職』、つまり職業(クラス)を持たないというロールプレイの欠点を、全能によって補っている。言ってしまえば、これまで戦ってきた初心者と同じように、ほとんどすべての既存のスキルを無視して戦う初心者(ニュービー)スタイルだ。けれど、それを全能が定着する前から続けてきた年季のあるプレイヤーでもある。

 

 油断はできない。

 

「神か。最近、PvPで頭角を現したとされるプレイヤーだな」

 

「それは、全能で……ということですか?」

 

「いや違う……強いて言うなら、〈トンネル避け〉が配信された日以降だな。直接戦ったことはないが、あの日以来、すさまじい勢いでランクマッチの順位を駆け上がっているようだ」

 

「我は神であるからな。これまで本気を出していなかっただけよ」

 

 警戒の裏付けとして、実際に強いらしいというお話をゆうたさんからいただく。なるほどなるほど。相手として不足はありませんね。

 

「では神様!これまでの初心者(ニュービー)とは違う真の全能の力を見せてください!ボクは全力で対抗しますよ!」

 

「よかろう。3人まとめてかかってくるがよい」

 

 不遜にも上から目線でそんなことをのたまう神様だが、不思議と嫌味はない。そういうキャラ付けなのはわかりきっていることだし、むしろ1対1でなんて言われたらツッコミを入れていたところだ。

 

 これまでいろんな神様がゲーム内外に出てきたけれど、そのインパクトを超えるだいなみっくなバトルを期待していますよ!

 

「じゃああかりちゃんはちょっと離れて実況解説やるよ!卍さんの配信見てる人もあかりちゃんの配信見に来てね?」

 

 あかりちゃんさんはそう言いながら、うさぎさん達と一緒にちょっと離れたところに建物を建てて陣取る。大量のうさぎさんに埋もれながら、こっちをのんびり眺めている。あらゆる意味でずるい。

 

 

 さて、あかりちゃんさんの配信はひとまず置いといて、屈伸したり背を伸ばしたりして、戦いの前の準備運動をしてみる。ゲーム的には意味がないけれど、心理的には「これからが本番だ」って明確なイメージがつかめるので、意外と有効なアクションだ。プロゲーマーの方もやってるらしい。

 

 一方、e-sports選手のゆうたさんは棒立ちで戦いの開始を待っているようだけど、こういうのはルーティンというやつで人によるんだろう。なお、ルーティンとは日常的に行う動作のことだけど、ボクが戦いの前に準備運動を始めたのは今回が初めてだ。つまり、実はまったく関係がない。

 

 

「準備はできたか?さあ……神の威光にひれ伏せ!」

 

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