卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
牢獄の中をとことこと歩き、ダンジョンの入り口を探す。少なくない数のプレイヤーが同じように牢獄にいるようで、部屋の中で家具を置いてまったり過ごしているプレイヤーもいれば、目を皿のようにして足元を見回している方もいる。
「やれやれ、【フォッダー】に犯罪者がこんなに存在しているとは。世もまつですね」
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>おまえもだぞ
>世もすえ定期
>やーい犯罪者
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「ボクは冤罪ですから!さてさて、あかりちゃんさんの攻略サイトによると、この通路を抜けた先にダンジョンがあるそうです。にしても、普通に脱獄できる抜け道があるってふざけてますね。ガードは仕事してくださいよ。いや、やっぱり仕事しないでください」
仕事をされて脱獄できなくなったら困りますからね。ありがとう、ガードさん!
さて、仮にも牢屋から抜け出せる裏ルート。いくらガードが仕事しないとはいえ、隠れた抜け道みたいな感じなんですかね?どんな感じのダンジョンかなー楽しみだなー。そんなことを考えながら通路を歩いていくと、何やら見えてきた。あれは看板かな?
『ここから脱獄できます!挑戦者いらっしゃい!』
「まさかの脱獄推奨!?」
看板の横には大穴が空いており、時折挑戦者が出入りしているのが見受けられる。
そして死亡してしまったのか、看板の前に瞬時に出現するプレイヤーもいる。なるほど、難易度は高そうですね。
と、そんなダンジョンにまた1人、足を踏み入れようとするプレイヤーが……あれは漆黒の翼さん!?
「漆黒の翼さん、お久しぶりです!」
声をかけてみると、ダンジョンに入るのをやめてこちらに近づいてきた。
「ふむ、『適応せし者』か。貴様も研究か?」
「研究?いや、別にやってはいないですけど……漆黒さんはどうしたんですか?」
「実験中に少々やらかしてしまってな。【ガベジー荒野】破壊の容疑で指名手配されてしまったのだ。せっかくだからここのマップの視察も行っておきたいと思ってな。あえてやってきたのだよ」
うーん、さすが漆黒の翼さん。ボクが見てないところで【ガベジー荒野】を粉砕してしまったらしい。そういえばボクも【ガベジー荒野】で〈魔導〉の試し撃ちをしてたけど、あれくらいじゃ何もありませんでしたよね。どんだけやらかしてしまったんでしょうか……。
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>もしかして実は卍さんも冤罪じゃなくてガベジー荒野の破壊罪だったのでは……
>自分の罪を他人に冤罪を押し付けられたと弁明して逃れようとしてたらしい
>工作の影響もあるかもしれないけど、自分でも犯罪のポイント稼いでそうだな
>【悲報】卍さん、視聴者に冤罪を押し付けていた
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「それはともかく漆黒さん。今から牢獄を抜け出すんですか?【パーティ】を組みましょうよ!」
「いいだろう!しかし、このダンジョンは手強いぞ。俺も
自分の失敗を隠さず、堂々と告げる漆黒さん。なるほど、漆黒さんほどの猛者でも死亡の可能性があるダンジョンですか。
「おまけに1日1回までしか挑戦できないのだ。死亡したら脱出は最低でも明日になる」
「げっ!それじゃあ絶対に失敗できませんよ!もう開拓イベント始まっちゃいます!」
審査基準もガバガバで、開始日から1週間開催される開拓イベントだけど、それでも1日出遅れるのは非常に痛い!
だからといって怖がっていては脱出できない。絶対に失敗しない!狙うは一発突破!頑張りましょう!
「ではダンジョン内では一度挑戦歴がある漆黒さんに従いましょう。何かあったなら何でも言ってください」
「よかろう。それではまず1つだけ先に言っておく。この先のダンジョンは内部がランダムになっているため明確な攻略手順が存在しない。俺も実質的に初見となる」
「なるほど……。ちなみに漆黒さんはどんな感じで死亡してしまったのですか?」
「カルマ値に依存したダメージを与えてくる敵がいてな。ターゲット指定がキャラクターであるが故に回避もできず一撃で葬られた。おそらく重犯罪者ほど脱出が困難になるという仕組みなのだろう」
そして漆黒さんはその敵に一撃でやられる程度の重犯罪者らしい。危ない人だ。しかし、危ない人でもボクにとってはお友達であり脱獄の共犯!ボクならおそらく一撃でやられることはないはず。その敵はボクが代わりに撃破しましょうか。
軽くダンジョン内部の情報を共有し、改めてダンジョンに突撃する。
ほら穴に入ると内部は土をそのままくり抜いたかのようなエリアだった。ボク達より少し前に入ったプレイヤーもいたはずなのだけど、影も形もない。おそらくはインスタンスエリアなのだろう。
一応
先頭をボクにして2人で薄暗い洞窟を抜けていく。カルマ依存のダメージを与えてくる敵はより近いキャラクターをターゲットに狙ってくるそうなので、その対策だ。もちろんそれ以外の敵が出てきたらそれに応じて陣形を変えていく予定。
ちなみに漆黒の翼さんの現在の
「【ナイト】に面白い研究ができそうな欠陥でも見つかったんですか?」
オーソドックスな槍と鎧を装備している漆黒さんに質問を投げかけてみる。未鑑定じゃないみたいですね。槍の方は刃先がとてつもなく細い。注射針よりも細い。なんかすぐ折れそうなくらいの装備だ。刺されたら怖いけど、このゲームは基本的に刃物だろうとなんだろうと相手をふっ飛ばす鈍器なので、実際は危なくないよ。
鎧は——光沢を放つ黒い鎧で、紋章のようなデザインはないようだ。闇属性かな?【ナイト】は光と闇の属性スキルを持つ
「【ライフコラプス】というスキルがあってな。最大HPを下降させるスキルだ。それの使用方法を模索していたのだが——このスキルは死亡後に蘇生しても
【ライフコラプス】
[アクティブ][近接][妨害:確定][物理][条件:暗黒の力/オン]
消費MP:6 詠唱時間:0s 再詠唱時間:45s 効果時間:4m
効果:[キャラクター]の[最大HP]を[下降]させる。この[効果]は[重複]し、[適用]の度に[効果時間]を[リセット]する。
「なるほど、ついさっき神様が使ってた武器スキルの類型ですね。最大HPが0ということは蘇生しても復活できないんですか?」
「いや、一応は復活する。HPが0の状態でな。その状態ならダメージ判定が行われない限り、HPが0でも活動できるらしい」
ゾンビかな?
「ククク……なかなか面白い仕様だろう?まだ研究途中ではあるが、この仕様を利用した新たなテクニックを模索中なのだよ」
全能が広まった世界でも相変わらずゲーム内のテクニックを研究し続ける漆黒さん。さすがですね!憧れちゃいます!
テクニックその105 『ゾンビ現象』
なんらかの形でプレイヤーの最大HPが0になってしまった場合、蘇生したら最大HPが0なのにも関わらず死亡しないという仕様です。
これはダメージを受けた時に初めて死亡判定が行われるというゲーム内の処理によるものなのだとか。
もちろんこの状態でダメージを受ければタンスの角に足をぶつけた程度のダメージでも死にます。