卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第255話 次回、ゴブ蔵死す

 洞窟を進み続けて5分くらい。ここまではモンスターとの遭遇もなく、安定した進み具合だ。

 

 漆黒の翼さんによると、道の構成も完全にランダムらしい。今回は一本道が続いているけど、前回は早々に分かれ道があったのだとか。

 

 仮に迷路のような構成であれば〈トンネル避け〉を利用して貫通できるのだけど、こんな感じで分岐が少ないのは逆に困りますね。

 

 念のためにとゴブ蔵も再び召喚しておき、ボクの後ろについてもらう。時折召喚を忘れてしまうので、マメに呼び出しておかないとね。

 

 そんなことを考えつつも《『心眼』》を光らせて周囲に目を凝らしていると——見つけた。モンスターだ。

 

 3つの首が別々の方向を向いて生えている巨大な犬型モンスター。全身黒めの体色で、鋭い牙が特徴的。攻撃してみないことにはわからないけど、【ケルベロス】と言ったところか。

 

 ちょうど【ケルベロス】のいる場所だけ通路が狭くなっていて、そこに立ちふさがるように居座っている。雑魚モンスターではなく、中ボス的な立ち位置なんでしょうかね。

 

「あれは〈トンネル避け〉で回り込めば回避できる。そろそろ〈トンネル避け〉に対応できる戦闘パターンにアップデートしてもらいたいものだがな……」

 

 脱獄する分には別に構わないけれど、一理ありますよね。こちらはどんどん戦闘力がインフレしてるのに、相手はそのままなんですから。全能前提のボスとかもいるかもですけど。

 

 内心で同意していると、漆黒さんがなぜか堂々と【ケルベロス】の前に突撃していく。どしたんですか!?避けるんじゃないんですか!?

 

「実験の貴重な素体だ!貴様も付き合え!」

 

 光の如き速度で【ケルベロス】に迫り、注射針のような槍を突き出しながらスキルを発動させる。

 

「【ライフコラプス】!」

 

 瞬間的に黒く染まった槍の穂先が【ケルベロス】にヒット……しない。黒く染まったエネルギーが吸い込まれるようにボクに向けて飛んできて、最大HPを削っていく。

 

「ちょっとちょっと!なにやってるんですか!」

 

「こっちのセリフだ。貴様、ターゲット変更系のスキルを持っているな?」

 

「そんな盾役(タンク)じゃないんですから、そんなの持ってるわけ……」

 

魑魅魍魎の杖

【ディープフォーリング】

[パッシブ][エリア][オート]

消費MP:24 再詠唱時間:30s

効果:この[スキル]は[範囲]で[妨害]が[発動]した[時]に[エリア]を[形成]して[発動]する。[効果]の[対象]を[自身]に[変更]する。

 

「ありました」

 

「さっさと離れてろ」

 

 もしかして先の神様との戦いでボクがやたらとダメージを受けてたのって、このスキルのせいでは?

 

----

>神様が謎の攻撃で襲ってくる!!(自滅)

 

>アホかな??

 

>近接攻撃だろうと通常攻撃だろうと問答無用でタゲ取りするとかこれ最強だろ

 

>間違いなくメイジの装備する武器ではない

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 漆黒の翼さんは改めて光の如き速度で【ケルベロス】に迫り、注射針のような槍を突き出しながらスキルを発動させる。

 

 瞬間的に黒く染まった槍の穂先が【ケルベロス】にヒットする。しかし、【ケルベロス】は反応を示さない。

 

「ククク……こいつ、受動(パッシブ)モンスターだな」

 

受動(パッシブ)モンスターってのは攻撃されないと戦おうとしてくれないモンスターのことですね。道を物理的に塞いでいるので、本来は【テレポート】などがない限り、攻撃しないと通れないのでしょう。それはともかく、なんで反応してくれないんですか?」

 

「最大HPダメージスキルの隠された効果だ。スキルの定義の上では攻撃ではないうえに、最大HPが減ることによって割合で見るとHPが減少していない。だから受動(パッシブ)モンスターは反応を示さない」

 

「久々に絶妙にゲームチックなバグが来ましたね。つまり攻撃判定にならないってことですか。ゾンビ状態の敵に当てても倒せないんですかね?」

 

「そうだな。HPが0の敵にとどめを刺すことはできず、最大HPがマイナスのまま生存する」

 

 漆黒の翼さんが【ライフコラプス】でつんつんと突きながら、じわじわ削っていく。【ケルベロス】さんは全く気づかず、のほほんとあくびをしながらこっちを見つめている。かわいそう。

 

「ここからどういう実験をするんですか?一応ボクも今日中には脱出したいので、手短にお願いしますよ」

 

「回復でもダメージ判定が行われるかという検証をしてなかったことを思い出したのだ。やってみてくれ」

 

「それ、【ケルベロス】じゃなくてもできますよねー?まあやりますけど」

 

 しばらくして無事に【ケルベロス】の最大HPが0に到達した。ゲージでは変わらず満タンだけど、漆黒さんは相手のHPの数値を知ることができる汎用スキル、【データスキャン】を持ってるからわかるのだとか。未鑑定でなければ装備のデータも見れる便利スキルですよ。

 

【データスキャン】

[アクティブ][キャラクター][視界]

消費MP:4 詠唱時間:0s 再詠唱時間:30s

効果:[視界]の[キャラクター]の[HP]/[MP]/[ELM]/[装備]を[開示]する。

 

 というわけで【ケルベロス】に回復スキルを撃ち込んでみると、一瞬でHPを全損させて消滅していく。なるほど、回復でも死亡判定が行われるみたいですね。これが何かの派生テクニックに繋がるかはわからないけど。

 

「なるほど、ククク……次はゴブ蔵を実験体に使わせてもらっていいか?」

 

「ゴ、ゴブー?」

 

「やめましょう、ね?」

 

----

>ゴブ蔵、死す!

 

>来世でまた会おう

 

>良いやつだった……

 

>漆黒の翼とかいう諸悪の根源

----

 

「ククク……これは貴様にもメリットがある話だ——上手く行けばこのダンジョンを攻略できる」

 

「ゴブ蔵!頑張ってください!」

 

「ゴブー!」

 

 困惑しつつも、どんな無茶振りにも答えてくれるゴブ蔵のこと、ボクは好きですよ。

 

 ゴブ蔵かわいそう、とかチャンネル登録外します、とかそんな感じのコメントを軽く流しながら漆黒さんに詳細を聞いてみる。

 

「ではまずどうするんですか?ゴブ蔵のHPを0にするんですか?」

 

「そうだ。もちろん現在HPではなく最大HPを0にする。この槍でな」

 

 そう言いつつゴブ蔵をつんつんしていく。ゴブ蔵は全く痛くも痒くもないご様子で興味深そうにそれを眺めている。ダメージ判定じゃないから、ってことなんでしょうけど、あんな細い槍が身体に刺さるのは想像するだけで怖いですよね。

 

 漆黒さんは【ライフコラプス】でしか攻撃できないので、再詠唱時間(リキャストタイム)の問題でちょっと時間がかかる。けど、【タクティクスフラッグ】を使えば再詠唱時間(リキャストタイム)は踏み倒せる。【ナイト】はダメージを受けるときにフラッグが1つ貯まる仕様なので、代わりにボクが漆黒さんをぽこぽこ叩いていく。

 

 そんな感じで謎の殴り合いを繰り返し、やがてゴブ蔵のHPがマイナスに突入した。ここからはタンスの角に足をぶつけただけで死んでしまう究極の虚弱状態だ。

 

「さて、ここまではあくまで前提条件なんですよね。次はどうするんですか?」

 

「【サモン・フィーニクス】だ」

 




テクニックその106 『最大HP減少の定理』
最大HPを削り取るという極めて強力な効果を持つ【ライフコラプス】ですが、
HPの割合で見ると全く減ってないので受動(パッシブ)型のモンスターは攻撃されたと気づきません。
頭の良いモンスターであれば反応できる筈なのですが、AI操作ではないモンスターだと駄目みたいですね。
通常の妨害(デバフ)なども、たとえば攻撃力ダウンなどの妨害(デバフ)であれば反応しますけど、催眠術みたいな妨害(デバフ)だと目が覚めても攻撃されたとは思いません。【ライフコラプス】は後者に該当するのでしょう。
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