卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第262話 逃れ得ぬ再々戦

 というわけで再々戦の約束を取り付けたボク。確かにボクも今回の戦いは正直勝ったとは言えないな、とは思ってた。結果だけを見ればボクが本気を出していないのは当然として、向こうも段階的にギアを上げながらの戦いでこちらへあえて隙を用意していたのが伺える。

 

 こっちが縛りプレイしているのに相手だけは本気を出せ!なんて口が裂けても言えないけど、そんな戦いではスキルの価値は証明できませんよね。

 

 少なくとも最初から本気を出されていたら今回の戦いのキーカードである【サモン・フィーニクス】の発動時間を確保するのは難しかった。3対1で手加減ありでも勝つのは正直難しかったのに、次は2対1の手加減なし。今の(ビルド)では勝てない。さらなるスキルの洗練化とテクニックの開発をしていく必要がある。

 

 よって再戦の時期は、そろそろ始まる開拓イベントが終わってからということに決まった。『終わってから』というのも終わってすぐというわけではなく、とりあえずイベントはこういうことを何も考えずに楽しんでいこうね、という話であって、つまりいつでもいい。要は対抗策を万全に整えて勝ち確になってから挑んでもいいというわけだ。

 

 神様のおおらかさに感謝しつつ、できる限り早く期待に応えられるように頑張っていきたい。と言っても開拓イベント中にこの件について考えるのはやめよう。せっかくそのために期間が設けられたのだから、先のことは考えずに頑張っていきましょうね!

 

「そうか、開拓イベントがあったか。具体的な評価基準も、そもそも何をすればいいのかすらわからないのだがな……」

 

「つまり評価者であるNPCの方に気に入られればいいんですよ。賄賂を送りましょう、賄賂」

 

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>それが通るならあらゆるイベントで通用しそう

 

>ダブル杯もシングル杯も賄賂で突破しようぜ

 

>1000億円の賄賂を送れば公式大会でも優勝できるんじゃね?

 

>まあ勝てるだろうな

 

>本末転倒すぎて駄目だった

 

>参加者1人につき1000億な

 

>経済崩壊しそう

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 どこかの某【女神】様を除けば基本的にNPCの方々はNPCの仕事に誇りを持っていらっしゃるようなので、実際には通らないと思いますけどね。システム的な評価基準があるなら、それを突く歪な手段も狙えますけど、今回はふぁじーに曖昧な主観評価なので、むしろそういった手段は真っ先に落とされるでしょう。

 

 つまり今回は間違いなく【フォッダー】ではあまり見られない正攻法による普通のイベントだということです!ボクも正攻法で今回のイベントを真面目に乗り切って全うな開拓を行い、優勝を狙っていきますよ!

 

 まずは準備を進めていかなければなりません。急いで【ダスター都市】にあるボクの会社に戻り、社員の進行状況を確認してみる。戻ってみると、そこにはとがみんがいた。

 

「あっ、おかえりー♥社員のレベル上げとアイテム回収をしておいたよ」

 

「ありがとうございます!ちなみにテクニック用アイテムの売上はどうですか?」

 

「うん、新規プレイヤーが最近結構増えてる影響もあってそこそこ売れてるかな?【魔族の街】に支店を置けば十分に開拓って扱いになりそうだよ♥まあ【魔族の街】は始めてすぐのプレイヤーには来れないけどね」

 

「なるほどなるほど。こういう感じで正攻法に発展させるのが今回のイベントですからね。お店を建てて流通を広げていく……。開拓と言えばこれでしょう!」

 

 というわけでボクはイベント開催と同時に有用なお店を【魔族の街】に複数建造し、プレイヤーなら何度も訪れたくなるような街作りに貢献していきます!

 

「正攻法のイベントではこういう緻密な前準備がモノを言うんですよ。勝つのはボクですからね。みなさん見ててください」

 

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>フラグやめろ

 

>これが最近牢屋に入ってたり全能ぶち殺して遊んでた人の発言ってマジ??

 

>正攻法で言うなら間違いなくもっと準備してる人いそう

 

>こういう調子乗って失敗するのが卍さんのきゅーと要素だから仕方ない

 

>これ演出でやってるとしたらマジで俳優の才能ありそう

 

>まてまて!もしかしたら卍さんが億が一、本当に優勝する可能性もあるだろ!開催前に小数点以下の可能性を捨てるのは良くない!

 

>本戦じゃなくてこんな唐突に発生したイベントで小数点以下の伏線回収かよw

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 まあこんな感じのコメントが流れるのはわかっててやってますからね。ボクの配信においてはプロレスみたいなもんですよ。これで勝ったら盛り上がるし負けても盛り上がる、配信者の基本テクですよ!いや、まあ勝つんですけどね?当たり前のように優勝するんですけどね?

 

 堅実に店を建てて流通を発展させる基本的な開拓事業。これを達成させるためにアイテム集めや商品の開発・量産を続け、会社をアップグレードさせていく。あまりにも堅実すぎて特筆して語るべきことは起こらなかったけれど、前準備とは得てしてそういうもの。開催日が楽しみですね!

 

 

 さて、時は流れ開催日当日。意気揚々と社員に支店建設の指示をしてボクも会場である【魔族の街】へと向かう。

 

「おはよーございまーす!きゅーてくちゃんねるへようこそー!今日は待ちに待ったイベント開催日!と言っても今日から1週間続くんですけどね?初日にばばーんと建物を建てて一瞬で準備が終わる人なんていないですし、そもそも建てた後の流動なんかも評価に入れなければならないでしょうし。つまりこんな朝から来てもまだあんまり変わってないかなー?とは思いますけど、まず見ていきましょうかー」

 

 ポータルを潜り【グレイブウッド】へと向かい、そこからさらにポータルを逆側から入って【魔族の街】へ突入する。やっぱり開催当日なだけあって人の行き交いが多い。先程はあまり進んでなさそうだとは言ったけど、これはみなさん頑張って朝から活動しているようですね。

 

 さて、本日初めて【魔族の街】にやってきたボク。前日にも下見をしていますからどんな変化が起きてるかくらいは比較できますよ。さーて、開拓は進んでいるかなーっとね。

 

 

 そんな軽い気持ちでイベント会場にやってきたボクだったけど、その直後にボクは後悔する。もっと心の準備をしておけばよかった。そうだった。このゲームは【フォッダー】だったんだ。

 

 ありとあらゆる魑魅魍魎が跋扈する【フォッダー】。そんなゲームでイベントが無難に進行するはずがない。そのことをいつの間にか忘却の彼方に置いていた。

 

 

 簡潔に、シンプルにボクの視界に現れた【魔族の街】について述べるとするなら——この街は混沌(カオス)の渦に飲み込まれていた。

 

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