卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第263話 スポット増殖

 まず最初に目についたのは空中にふよふよと浮かんでいる謎の浮島だ。その上に高層ビルがどかんと建っている。

 

 交通の利便性はともかくとして凄く目立つので、そういう狙いがあるとしたら大成功だ。NPCの方もびっくりして評価を上げたくなっちゃうに違いない。

 

 これに関しては浮いてるの凄いなーって思うだけで、別におかしなことはないだろう。むしろ真っ当な開拓とも言える。

 

 しばらくの間は現実逃避としてそんな面白い建造物に対してコメントしていたのだけど、目を逸らし続けていた現実に改めて向き直ることにした。

 

「なんですか、これ……」

 

 【魔族の街】にやってきたボクを取り囲むように配置された、得体のしれない木々や植物が繁茂している。まるでジャングルのような光景だ。もちろん単純に草木が生えているだけなら『植林したんだ、これも開拓ですね』で終わる話だ。

 

 けれど紫色の葉っぱが生い茂り、血のような蜜が滴り落ちる悍ましい木が植えられている様子をボクは開拓と呼びたくない。以前に訪れたときには自然溢れる世界だと思ってたのに、もはや魔界かなにかとしか思えない様相に変貌している。

 

 そしてこの木々だけど、何やら使い道があるらしい。ボクは存じ上げないのだけど、NPCやプレイヤーが一生懸命に蜜や草花を回収しているのが伺える。

 

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>植物園でしか取れないレア植物じゃねーか

 

>四ツ葉のクローバーが生えまくっててワロタ

 

>インフレ極まってるな

 

>どうやったらこんな魔界を作れるんだよ

 

>草

 

>森だぞ

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「はぁ?【四つ葉のクローバー】が生えてる?そんなわけ……うわぁ、ほんとだ。【三つ葉のクローバー】と間違えたんじゃないかってくらい生えてますよ」

 

 みなさんは大騒ぎで【四ツ葉のクローバー】を回収しているのだけど、現状このエリアのプレイヤー数だけ見れば、1人10個採ってもまだまだ大量に余るという恐るべき有様ぁ。【四ツ葉のクローバー】は下手をすると大会出場券である【願いの石】と交換できるくらい貴重なアイテムの筈なのだけど……。

 

 ボクも急いで他の魔界系植物から目を逸らしながらクローバーを確保しておく。魔界系植物もあかりちゃんさんのサイトを確認したところ、そこそこのレアな素材のようなのだけど、今はいいだろう。それよりも原理のほうが気になる。

 

 単純に回収してきた素材を埋め直しただけではこんな事にならないはずだ。普通は【四つ葉のクローバー】をこんなに集められるならそれこそ自分で使う。にもかかわらずこんなにばら撒けるとしたら、安定供給の手段があるということ。

 

 そして肝心なのは、この土地が採取ポイントになっているようだ。つまり取り尽くしてもいずれ復活する……この土地自体が安定供給のシステムそのものだということだ。

 

「この謎の魔界を作った方に是非インタビューしてみたいところですが、いらっしゃるんですかね?」

 

「俺だが?」

 

 そう言って現れたのは漆黒の翼さん。ある意味こんな事をやらかすのはこの人くらいだと思っていましたが、そうですか。

 

「この前は最大HPを削る攻撃について研究していらっしゃいましたよね?なんなんですか?ゲームを破壊するために生まれてきたんですか?」

 

「その研究の発展形だ。別に複数の研究を並行して行っているわけではない」

 

「なにをどうしたら最大HPを削るスキルで植物栽培できるんですか!!」

 

「ククク……『盟友』の頼みであれば解説してやろう」

 

 いつの間にか『盟友』認定されていました。まあ漆黒さんは研究に関しては非常に優れたお方なので、そんな人に『盟友』認定されるのは別に悪いことじゃないですね。せめて解説シーンをかっこよく撮影してあげましょう。

 

「かっこいいポーズお願いします!」

 

「ククク……こうか?」

 

 ボクの要望に快く答えてくれた漆黒さんは急に左腕を抑えながら呻き始める。多分左腕に魔物が封印されてるという定番ネタだろう。設定としてはかっこいいけど決めポーズとしては如何なものなのか?制御できてないシーンってことですよね?

 

 などという無粋な突っ込みはさておき、360度あらゆる方向からそのポーズを撮影していると、そのままの体勢で解説し始めた。

 

「まず【四つ葉のクローバー】を【植物園】でなんとか見つける」

 

「ほうほう」

 

「【ライフコラプス】で【四ツ葉のクローバー】を刈り取る」

 

「はい?」

 

「【ライフコラプス】は攻撃ではないというのは既に理解しているだろう?つまり、【ライフコラプス】で刈り取られた植物は地面から離れたのにもかかわらず、その場に植わっている植物としての判定を維持し続ける」

 

「は?」

 

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>一流のナイトが放つ攻撃は草花も刈り取られた事に気づかない

 

>攻撃じゃないぞアホ

 

>ひどい揚げ足取りを見た

 

>何言ってんだこいつ、頭大丈夫か

 

>この発想に至った理由が知りたい

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 逆にボクが植物を採取するときって植物に攻撃してる扱いってことなんですか?そこをまず前提として調べてないと出てこない発想ですよね。【ライフコラプス】のような目立ったスキルだけじゃなくて普段から研究の下積みを続けていく漆黒さんだからこそ、といったところなのかな。

 

「しかし植わっている判定が続くからといって何か変わるんですか?」

 

「ククク……【植物園】などの採取ができるマップでは、仮に根こそぎアイテムを回収したとしてもいずれ採取ポイントが復活するだろう?」

 

「まあ残しておかなきゃ新しいのが生えないってなったら絶滅しますよね」

 

「あとは簡単な話だ。地面に植わっている状態の【四ツ葉のクローバー】を他の場所に埋めれば採取ポイントを移動させることができる――この植物たちはレアアイテムが取れる採取スポットだけを一点に集めた『人工植物園』なのだよ」

 

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>発想がイカれてやがる……

 

>効率厨の極み

 

>効率厨はこんな研究してる暇が無いぞ

 

>元の採取スポットはどうなるんだ?

 

>植物園のレア採取地点根こそぎ回収されてんのかよw

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「元の採取地点はどうなるのかという疑問が届いてますが、そこのところはどうなのでしょう?これでは採取ポイントの全体数が増えるわけではないのでは?」

 

「問題ない。激しい戦闘の末に大穴が空いた地面などは暫くすれば修復されるだろう?採取ポイントが無くなった地形を粉々に粉砕すれば、状態はリセットされ、元の採取スポットが復活するのだよ」

 

「なるほど!!アフターケアも完璧ですね!」

 

 この人、これで指名手配されたのでは? 

 




テクニックその109 『スポット増殖』
採取スポットを丸ごと引っこ抜くことによって場所を移し替えるテクニックです。一見するとスポットの位置が変わっただけで別に増殖してはいないのですが、元の地点を粉々に粉砕することで自動修復によってスポットが復活し、結果として増殖できます。
レアなアイテムの採取スポットは採取間隔が非常に長いのですが、こうして増やした採取スポットを大量配置することによって安定した供給を得ることができる、ぱーふぇくとなテクニックですね!
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