卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第270話 背水の陣

「続けてもう1発、【イグニッション】【フェアリーブレス】!」

 

 【タクティクスフラッグ】で再詠唱時間(リキャストタイム)を踏み倒し、妖精さんが煌めく風を送り込む。先ほどとは違って、距離は離れているけれど、軌道を操作すれば当てることは難しくない。

 

 そして【イグニッション】によって出力が増加した【フェアリーブレス】は、風属性とは思えない殺傷能力を獲得する。それに加えて【イグニッション】は炎属性。つまり【煈颷の刻印】で風属性ELMに対してさらなる補正が乗る。

 

【煈颷の刻印】

[パッシブ][オート][スイッチ] 再詠唱時間:0s 効果時間:30s

効果:[風属性]を[受けた][場合]は[炎属性][ELM]を[増加]させる。

[炎属性]を[受けた][場合]は[風属性][ELM]を[増加]させる。

それぞれ[1回]まで[適用]され、[発動]の[度]に[効果時間]は[リセット]される。

 

 光の如き速度で一陣の風が駆け抜ける。先の交戦でHPを減らしているお兄ちゃんさんなら、まともに当たれば一撃だ。さあ、どうくる?

 

 もちろん〈トンネル避け〉があるので完全に命中させるのは難しいのだけど――そんな思考がふとよぎるが、それすらも甘い考えだった。

 

 空気をすぅっと吸い込んだお兄ちゃんさん。そのまま勢いよく吐き出すように叫ぶ!

 

「波ッ!」

 

 お兄ちゃんさんの全身から衝撃波が放たれ、煌めく風は哀れにも霧散した。嘘でしょ!?【イグニッション】【フェアリーブレス】を全能の出力で相殺した!?

 

 いや、相殺どころではない。【フェアリーブレス】を粉砕した上で衝撃波は【闘技場】全体にも及ぶ広範囲の地面をめくり上げながら、恐るべき勢いで迫ってくる。

 

「«階段革命»!」

 

 x軸の移動では避けきれないと判断したボクは即座に空中へと離脱する。妖精さんも一緒に引っ張り上げ、上空へ。

 

 同時にボクの手にある【ストームワンド】がキラリと輝き、自動的に突風を発射した。【ゲールウィンド】を妖精さんが行使してくれたんだ。恐るべきスピードでお兄ちゃんさんに迫る突風は、上空からの攻撃であることで【空神の加護】の補正を受ける。

 

 再び衝撃波で牽制しようとしたみたいだけど、その前に命中するほうが早い。続けて杖が【シルフストーム】を発動させ、【ゲールウィンド】を起点にして広範囲に風の嵐を生じさせた。エリアダメージは〈トンネル避け〉では踏み倒せない!

 

 ダメージを受けながらもお兄ちゃんさんはボクをめがけて衝撃波を撃ち放つ。

 

 【ゲールウィンド】も【シルフストーム】もダメージは低い。けれど【タクティクスフラッグ】は貯まる。【ゲールウィンド】の4回攻撃と【シルフストーム】の6回攻撃によって【フラッグ】は上限である8ポイントに到達した。これにより消費MP6までの【メイジスキル】の詠唱時間(キャストタイム)を踏み倒すことが可能になる。

 

 大半の炎属性スキルがHP消費である以上、踏み倒せるスキルはそう多くないけれど……。【テレポート】で衝撃波をすり抜け、魔力剣による斬撃を量子単位の微細な動きで回避しつつ、お兄ちゃんさんの頭上へとボクは落下していく。

 

 落下しながらも唱えるのは炎属性の範囲魔法――。

 

「〈大いなる炎の意志よ、燃えよ、弾けよ、炸裂せよ〉!【フルバーニング】!」

 

 宣言と同時に、自身を含むエリア内に大規模な爆発が巻き起こる。当然ながら、お兄ちゃんさんを巻き込んで仕留めるつもりだったけど、爆発の及ばないギリギリのところまで退避されてしまった。

 

 にもかかわらず、彼のHPは一瞬でほぼ空っぽまで減少した。

 

「卍さんにとってHP消費の炎属性スキルは詠唱する必要はないんだったね……。今のはブラフか」

 

「こっちとしては【アブソーブ】を耐えられたことのほうが驚きなんですけど」

 

 すたっと地面に着地し、油断せずにお兄ちゃんさんに目を向け続ける。【フルバーニング】と同時に、詠唱時間(キャストタイム)を踏み倒して発動した【アブソーブ】。どちらが入っても一撃で決まると思っていたのに、首の皮1枚が残ってしまった。

 

「これは【食いしばり】のエンチャントさ。【A-YS】の装備に付いていることがある」

 

 なるほど、装備の効果か。とはいえ、その手の効果で耐えたのなら、今のHPは『1』のはずだ。回復スキルを発動させる様子もないし、風属性のスキルでトドメを――。

 

「おっと、忘れていないか?僕の剣の効果を!」

 

 その言葉と共に紫色の剣――その切っ先をボクに向けるお兄ちゃんさん。そうか、【ケイオスブレイド】は最大HPと現在HPが離れていればいるほど威力が増加する……!

 

「【フェアリーブレス】!」

 

 一撃でも通れば勝てる。にもかかわらず、お兄ちゃんさんが【ケイオスブレイド】を横薙ぎに振るうだけで霧散してしまう。

 

 しかしプレイヤーをターゲットに取る【アブソーブ】なら、攻撃で相殺することはできないはずだ。【タクティクスフラッグ】を貯めて速攻で決める。

 

「さぁ、一発当たれば即終了。人生オワタ式の真骨頂、《背水の陣》――その真髄をとくと見よ!」

「出番ですか?待ってました!」

「アタシは回避担当!」

「いくぜぇ?【アブソーブ】には気をつけろよ?」

「計算は任せてください!相手の射程はわかっています!」

 

 先の【フェアリーブレス】によって【タクティクスフラッグ】は1つ。無詠唱の発動には8つが必要だけど、貯めるのはそう難しいことではない。【メイジ】の【タクティクスフラッグ】は発動時点でポイントが1つ貯まる。つまり相手に当たらなくても、風属性のスキルを発動さえすればすぐに【アブソーブ】の準備が完了するだろう。

 

 残る問題は1つだけ。相手は射程外に逃げるつもりだということだ。

 

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