卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第271話 テレポート

「もうこうなれば当たれば何でもいいですよ!」

 

 なんてヤケになった演出をしつつ、杖を勢いよく空振りさせながらお兄ちゃんさんに接近する。杖を振るうたびに【アンプルアロー】が撃ち放たれ、毒薬だのポーションだのが嵐のように宙を舞う。

 

 対してお兄ちゃんさんはぴょんと跳ぶと、全能で空へと退避する。追いかけるようにボクも【エアジャンプ】を行使するけど、完全なる自由飛行と【エアジャンプ】を比べたら向こうに分があるのは明らかだ。すると【ストームワンド】の妖精さんが杖から自動で【ゲールウィンド】を発射する。お兄ちゃんさんを追いかけて突風が飛んでいくけれど、それでも届かない。やがてコントロールの限界を超えて霧散していく。

 

 速度で追いつけないなら、【ルビーロッド】の妖精さんと連携して回り込むように動くが、超射程の【ケイオスブレイド】が振るわれるせいで思うように近づけない。妖精さんは速攻で弾き飛ばされ、地面にめり込んでしまった。かわいそう。

 

「逃げるんですか!?卑怯ですよー!」

 

「どんなスキルでも一撃でとどめを刺せるような火力を出せる人に近づけるわけないよね?」

「悪いな。でも本気でやるって約束したからよ?」

「実際ボクって割と卑怯な手も平気で使いますしね」

 

「«疾風迅雷»!」

 

 攻撃の合間を縫って超速度での接近を試みるが、【ケイオスブレイド】を当てられそうになってギリギリで横に飛び退く。

 

 おまけに、一瞬の予備動作のあとでレーザーが飛んでくるんだけど、これは正真正銘の光速――というより、光そのものを一点に集約して放って攻撃しているのだろう。

 

 撃たれるタイミングに合わせて一瞬だけ«疾風迅雷»を起動して、光線の射線からなんとか逃れる。

 

 神様が使ってきた全能技も、恐らくこれだ。図らずも本番前に対策ができるのはいいことだけど、勝てないのは困る。

 

「〈派手に弾けろ〉【イグニッション】!」

 

 炎属性最大最強の付与(バフ)技を行使し、次に発動するスキルの効果を引き上げる。これによって実質的にボクの炎属性ELMを別属性のスキルにそのまま適用できる。つまり今から使うのは炎属性のスキルではない。何かというと――。

 

 【ケイオスブレイド】が勢いよく振るわれ、刃がボクのすぐ真横に迫ってきた瞬間を見計らってスキルを発動させる。その瞬間、ボクはふっとその場から消え失せ、お兄ちゃんさんの頭上に現れる。

 

 そう、ボクが強化したのは【テレポート】だ。移動距離を大幅に引き上げて、速度すらも超越した瞬間移動を可能とする!

 

 さぁ【ソウルフレア】を喰らいなさい!勢いよく【ルビーロッド】を押し当てようとしたその瞬間、意趣返しのようにお兄ちゃんさんが視界から消える。

 

 ――後ろだ。

 

 【パスファインダー】の効果でお兄ちゃんさんの移動先を把握したボクは、杖を横殴りに振るって振り返る。そこで視界に入ったのは、今にも【ケイオスブレイド】を振り下ろさんとするお兄ちゃんさん。

 

 ――【ルビーロッド】の物質干渉力じゃ絶対に勝てない!

 

 とっさに【ストームワンド】を手放し、【ストレージ】から取り出したのは小さなミニチュアの家。なんの変哲もない家だけど、【ストレージ】から顔を出すと同時にメロディが流れ始める。

 

 その曲の名前は【誘いのレクイエム】。その効果は――あらゆるダメージ判定の遅延。

 

 これで【ケイオスブレイド】のダメージと物質干渉力が丸ごと先送りになり、後退(ノックバック)も即死も無効化された。

 

 【ミュージックボックス】を即座に再収納しつつ、お返しの【ソウルフレア】を叩き込む。こちらはダメージを踏み倒したまま、相手にだけ一方的な打撃が入る。

 

 最後に【フェアリーブレス】も重ねて、お兄ちゃんさんは今度こそ跡形もなく消滅した。

 

【ゲームセット WIN:卍荒罹崇卍 LOSE:おにいちゃん】

 

 

 「さてボクの勝ちですね。対戦ありがぐあぁあああああ!!!!」

 

 試合後の挨拶をしようとしたところで、【ケイオスブレイド】のダメージが遅れて発生し、盛大に爆散するボク。そして即座に同じ場所にリスポーンした。

 

「今は死にましたけど試合は終わってますからね?無関係に死んだだけですからね?」 

 

----

>誰もそんなところに突っ込み入れようとしてなかったのに……

 

>叩いてくれっていうフリだと判断しました!!低評価入れます!!

 

>雉も鳴かずばうんたらかんたら

 

>さすが卍さんだ。たとえ勝っても期待を裏切らない!

----

 

「むむー。負けたよ。悔しいなあ」

「【テレポート】を〈テレポート〉で返した時には勝ちを確信したんですけどねー」

「やっぱりHP1で戦い続けるってのが良くないのよねー」

「でもHP1だからこそ《背水の陣》の条件が満たせる訳で」

「〈魂の言葉(ソウルワード)〉の原理としてはHPが1じゃなくても最大級のやる気が出せれば同じように出力が上げられるんですけど……」

「主人格サマ的には追い詰められてねぇと駄目らしいからな」

 

 お兄ちゃんさんは喋り方も声色も巧みに変えながら、身振り手振りで一人芝居を始める。なるほど、《背水の陣》はやられそうなときに本気を出す〈魂の言葉(ソウルワード)〉ということですか。ある意味ではボクの《運命変転》と似たような〈魂の言葉(ソウルワード)〉なんですね。

 

 ただボクはどちらかというと《背水の陣》よりも気になってることがあって、それを聞いてみることにした。

 

「全能の〈テレポート〉には制限とか無いんですかね?スキルの【テレポート】涙目なんでしょうか……」

 

 少なくとも再詠唱時間(リキャストタイム)という縛りは存在しない。好きなように使えるようならどこからでも不意打ちを撃てることになる。今回はここぞというときまで使用は控えていたようだけど、どうなんだろう?ちょっとした疑問を投げかけると、快くお兄ちゃんは答えてくれた。

 

「自身と対応する量子を事前に移動したい地点へ置いておく必要があるんだ。僕らが放つ量子の加速速度はプレイヤーと同じだから、空間座標的な面で言えば瞬間移動だけど、速度の面で言えば普通に移動するのと変わらないよ。もちろん事前に仕掛けておけば別だけどね」

 

 そう言って何度か瞬間移動を繰り返してみせるお兄ちゃんさん。簡単に言うならば量子という自分の小さな分身を向かわせて、後でその座標へ移動するのが〈テレポート〉なんですね。

 




魂の言葉(ソウルワード)その13 『背水の陣』
自分が追い詰められている時こそ勝利の活路が見える!そんな主人公タイプの自己暗示です。
ステータスの制限を超越して、恐るべき身体能力を生み出す。単純明快な〈魂の言葉(ソウルワード)〉ですね。

テクニックその112 『テレポート』
自身の身体と対応する極小の量子を配置することで、配置した場所に即座に転移する事ができるテクニックです。いわゆる全能技、〈バタフライタクティクス〉の系譜ですが、〈トンネル避け〉に類似する技術も必要とする、高度なテクニックですね。
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