卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第274話 料理開拓連盟・始動!

 先程掬ったぶどうジュースを、試しにひと口飲んでみる。こっちは加工後の製品だったらしく、たしかに甘酸っぱくて美味しい。とてつもなく美味しいってほどではないけれど、ボク好みの味だ。

 

「ちなみにボク好みの味というのは、果汁10%くらいで定義上はジュースとは呼べないもののことを言います」

 

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>わかる。100%果汁ってなんの自慢にもならないよな

 

>最近出てきた人工果汁飲料とかいうのほんとすこ

 

>果汁と同成分に配合された甘味料だっけ?本物より美味しいよな

 

>なぜ同一成分なのに味が違うのか。これがわからない

 

>量子単位では違うらしい。この前目視してみたら全然違った

 

>不正表示じゃねーか。さっさと訴えろ!!

 

>なんで量子単位の違いが眼で見てわかるの??

 

>人類の進化を受け入れろ

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 よくよく考えると、さっきから漂っている煙もぶどうジュースなんですよね……。見た目は邪悪ですけど、いつでもジュースを吸える世界とか、なかなかの好環境では?そんなあさっての方向へすっ飛んだことを考えていると、めりぃさんがぽつりと言葉を漏らす。

 

「味と効果が一致しないスキル……どこかで聞いたことあるよねー」

 

「俺も心当たりがあるな。まさかここまでのことをやらかすとは」

 

「スキルの概要だけは聞いたことがあるな。私も薄々怪しいとは思っていた」

「あの【黄金の才(ユニークスキル)】ならありえるな」

 

 めりぃさんの言葉を皮切りに、皆さんはある一人のプレイヤーのことを思い浮かべる。ボクも言わんとすることはわかる。こんなことができるプレイヤーは課金者であるあの人しかいない。お金持ちなことを除けば割と常識的な人だと思っていたのに、まさかここまでのことをやらかすとは。

 

「猫姫さん……あなたに何があったんですか……?」

 

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>ちょっとまって欲しいですの!わたくしじゃありませんわよ!!

 

>おっ本人か?

 

>なりすましだろ

 

>ここまで状況証拠が揃ってるのに犯人じゃないとかありえんだろ

 

>猫姫さんとかいうぶどうジューステロリスト

 

>猫姫さんぶどうジュース好きなの?

 

>ぶどうジュースが好きすぎて布教活動ってマジ??

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「わたくしじゃありませんの!!」

 

「おや猫姫さん。ずいぶんと近くにいたんですね?偶然にしては……」

 

「いやいやいや、本当に偶然ですわよ!イベントが開催されてるのですから同じマップにいて当然ですの!」

 

 慌てて弁明し始める猫姫さんを見てるとなおさら怪しく見えてくるけど、やらかしたからって必死に否定するほどの事件でもない。だから本当なのでしょう。魔族の街がぶどうジュースまみれになるくらい【フォッダー】においては日常とも言えますからね。

 

「猫姫さんー!悪いことをやったら素直にごめんなさいするんだよー!身体がべとべとで困ってるんだからねー!」

 

「そういういじりは卍荒罹崇卍さんだけにしてくださいですのー!」

 

「ちょっとちょっと!ボクならいいってどういうことですか?ダメですよみなさん!ボクにそういうことをすると牙を剥きますよ!」

 

「そこで牙を剥くなんて言葉を使うセンスが面白いよな?」

「ボク的には人生で使ってみたいワードベスト3位くらいですよ」

「1位と2位が地味に気になるね」

 

 まあ猫姫さんがそこまで言うのなら、猫姫さんが犯人というわけでもないのでしょう。となると、このやけに性能の高いぶどうジュースは【黄金の才(ユニークスキル)】に依らなくても作れるということになる。

 

 ちなみに猫姫さんのスキルである【『ディオニューソス』】は、味と効果を決めたうえで、その食材が出せる理論上の最高値を叩き出すスキルだ。つまり出力を最大にしたうえで、不味い料理を作ることも可能なんだけど……。そうなるとまーた猫姫さんの【権能】の領域が脅かされていることになるんですね。

 

【『ディオニューソス』】

[アクティブ][補助][オーソリティ]

消費MP:2 詠唱時間:0s 再詠唱時間:30s

効果:[料理]の[味]と[効果]を[決める]。

[出力]は[最大]となる。

 

「最近は【『アイテール』】レベルの自由な飛行を行う全能技まで出てきましたし、【黄金の才(ユニークスキル)】の設計段階で欠陥があるんじゃないですか?」

 

 某【『クロノス』】の人の領分なんかは、早々脅かされることはなさそうに見える。けど猫姫さんの受け取るスキルだけは、なんか絶妙にテクニックで代用が利くんですよね。

 

 自由自在の瞬間移動ができる【『オネイロス』】の領分も、最近は侵略されつつありますが、それでもまだあのスキルにしかできないことはいくらでもありますし。

 

「いや、逆に言えばこのぶどうジュースの技術を取り込めばわたくしも至高の料理人になれるかもしれませんの!【黄金の才(ユニークスキル)】にかまけて努力を怠っていたのが悪いのですわ!」

 

 ぶつぶつと【黄金の才(ユニークスキル)】の再リコールはできるかしら……?などと呟いていた猫姫さんだったが、どうやら考え直したらしい。腕を高く掲げ、最強の料理人になることを堂々と宣言する。

 

「そうですか。がんばってくださいね。応援してますよー」

 

「ちょっとちょっと!そこはわたくしに協力してくれる流れじゃありませんの?」

 

「ボクは今から開拓イベントに参加するので……」

 

「俺もそろそろ【闘技場】のランクマッチに参加しないといけないからな……」

 

「ゴブゴブゴブブ……」

 

「冷たすぎですのー!」

 

「冗談ですよ。もしかしたら猫姫さんの料理発展を手伝えば開拓につながるかもしれませんし、協力しますよ!」

 

「あたしも協力するよー!お兄ちゃんにも付き合ってもらうから。ね?」

 

「協力と言っても何ができるかはわからないけど、できる限りのことはするよ」

 

「ゆうたさんは冷たいですねー。かつての強敵(とも)に協力してあげようとは思わないんですか?」

 

「……やれやれ」

 

 というわけで、ボク達きゅーてく連盟+先程の料理人の方々でぶどうジュースの秘密を解明していくことになりました。

 

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