卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第275話 料理研究始めます!

「まずは成分分析からだが……特に異質な物質は入ってないのだろう?」

 

「少なくとも私が【クックブック】で見た限りでは100%ぶどうの果汁のみが使われている。あくまでこれで見られるのはシステム的な領域のみだから、なんらかのテクニックによってシステム外から生み出されたモノであれば見抜くことはできないかもしれないが……」

 

 コック帽を被ったくーるな女性プレイヤー……名前はありすさんらしい。ひらがなだけど読み方はボクと同じですね。なんだか親近感が湧きます。ボクもくーるでかっこいい女性プレイヤーですし。

 

「顕微鏡で見てみたが、それでも特に変わった様子もなかったな。成分自体はまちがいなくぶどうだぜ。魔力の類もオレの《『心眼』》で見た限りでは入ってない」

 

 こちらの方も料理人らしい。名前は夜露死苦さん。荒っぽい喋り方で騙されるかもしれないが、少なくともアバターは女性プレイヤーだ。見た目は10歳くらいの長髪の女の子で、どちらかというと清楚系の見た目をしているのだけど、喋り方とのギャップがまた面白い。《『心眼』》を使えるのだとしたら現実(リアル)アバターを使っているのかな?

 

「素材の面ではおかしいところがないんだねー。だとしたら加工方法?ぶどうジュースってどうやって作るのー?」

 

「システムによる加工なら【メニュー】から選択して終わりですけど、マニュアル操作で作るならミキサーとか、あとは煮たりとかですかね?」

 

「ちなみに成分量的には原液の時点で100%ぶどうジュースだ。味はともかくとしてな」

 

 【クックブック】というスキルの表記上は間違いなくそうなっているのだとか。そしてありすさんが【ストレージ】から取り出したのはぶどうジュース。これはありすさん自身が制作したものらしいので、とりあえずステータスを確認させていただくとまさに雲泥の差。INTという1項目のステータスしか上がらないうえに、上昇量すら負けている。

 

 素材としては全ステータスに対応する上昇効果が得られるアイテムらしいので、問題のジュースでSTRやVITなどといったステータスが上昇することに矛盾はないけれど、それでもすべてが極限まで上がるというのはおかしいですね。

 

「STR増加とINT増加のぶどうジュースを混ぜたらどうなるんですか?」

 

 質問を投げかけたのはボク……ではなくお兄ちゃんさんの中にいる卍荒罹崇卍だ。確かに合体できるなら、凝縮していい感じに全ステータスを引き上げられるかもしれないね。

 

「その場合はSTR増加量とINT増加量がそれぞれ50%分として計算し直される。ポーションとは違って量を増やせば性能が増えるというわけではないんだ」

 

 そう言ってありすさんは、謎機械製のジュースが入ったコップに自身の作ったぶどうジュースを注ぎ込む。そして改めてステータスを見せてくれたのですけど……確かに上昇値が減っていますね。ただし、理論上はこれを全ステータス分だけ掛け合わせれば、全ステータス向上のジュースは作れるということになる。もちろん効果の出力は置いておくとしてね。

 

「全ステータス向上のジュースは作れる。あとは出力の引き上げだな。聖天使猫姫はこのレベルのアイテムを作れるのか?」

 

「作れるわけありませんわよ。その素材で作れる理論上の最高品質のはずなのに、わたくしのスキルじゃこの値には届きませんの……」

 

「システム最高品質を生成できるスキルなのだから、そこはまず間違いないのだろう。その上でこのぶどうジュースは上限を踏み倒している。〈魂の言葉(ソウルワード)〉なら超えられるのか?」

 

「以前なら越えられないと言っていましたが、実際のところ越えられてもおかしくありませんね。だとしたらお手上げですが」

 

 以前は〈魂の言葉(ソウルワード)〉も、あくまでシステムに則った最適解の範囲だと思っていたけど、AGIを超越できるプレイヤーがいるように、限界値を引き上げるような影響力を持つことも不可能ではない。実際には〈魂の言葉(ソウルワード)〉くらいの信念がないと限界値の最適解に到達できないという可能性もあるのだけど、そこは実際の内部処理がわからない以上なんとも言えませんね。

 

 ただし仮に後者のように〈魂の言葉(ソウルワード)〉でなければ限界値に到達できないという仕組みであるのならば、【黄金の才(ユニークスキル)】ならそれを踏み倒した上で最高品質に達することができるはずだ。

 

 にもかかわらず【黄金の才(ユニークスキル)】でも及ばないアイテムが作れるのだとしたら、〈魂の言葉(ソウルワード)〉が限界値を超越する仕組みなのか、あるいは例によって仕様の欠陥が存在しているのだろう。

 

「ちなみに最高品質っていうのは〈引き上げの原則〉を考慮した上でのモノなんですかね?」

 

「わたくし、その〈引き上げの原則〉というものを存じ上げていませんでしたの。だから正直に申し上げますと、わかりませんわね……」

 

 料理スキルを持っているのに料理のテクニックを知らなかったことに思うところがあるのだろう。しょんぼりと雨の感情表現(エモート)を発動させながら下を向いている。かわいいけど、かわいそうなので【スーパーエモート】で晴れにしてあげた。以前にクエストで獲得したネタスキルが役に立ちましたね。

 

「じゃあ早速試してみましょうか!」

 

 というわけで今回取り出したのは【牢獄】のモンスターがドロップした食べられそうな素材たち。至って普通のお肉であり、レアな効果はついてそうに見えない。【クックブック】で調べてもらうと、ややDEX増加に適性がありそうという点を除けば、やっぱり普通の素材だったらしい。

 

 というわけで今回は料理効果をDEXに絞って、普通に作ってもらう。猫姫さんと言えばお手軽系料理に定評がある料理人だ。軽くフライパンで焼いて、パンで挟んで、出来上がりを主張する。

 

 そうして完成した【サンドイッチ】のDEX増加量は60%。60%も上がれば料理としては相当強力な部類なのだけど、例のジュースはこのレベルの上昇値がすべてのステータスに掛かっていた。全然足りない。軽くつまみ食いしてみると、こんなお手軽料理にもかかわらず感激するほど美味しいのだけど、ゲーム的にはステータスのほうが重要ですからね。もぐもぐ。

 

 次に、同じく普通のお肉を、今度はあえて【黄金の才(ユニークスキル)】による味の補正をせずに焼き上げてもらう。効果値の最適化はしてもらうけれど、味は普通の料理人が作ったものと同じということだ。味の補正を無視して素材の理論上限界値をはじき出すなら、どんな味であろうが効果値はDEX+60%になる。しかし、もしそうならないのであれば……。

 

「効果値はDEX+35%……まだ詰めていく必要がありますが、猫姫さんの条件で出せる限界値がそのまま理論上の限界値になるわけではないようですね」

 

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