卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第277話 不戦勝の呪い

 さて、それでは量子操作によっていい感じにぶどうジュースから混入物を取り除いていくことになりました。

 

 今回の工程はお兄ちゃんさんがやってくれることに。彼は複数の人格で命令の強度を上げつつ、同時進行で全能の操作もできるので、こういった作業には適性がある。ひょいひょいとコーヒーや毒薬の成分をより分けて、別のコップに移し替えていく。

 

 やがて全ての成分の選別が終わり、元通りのぶどうジュースに戻ったところで料理は完了した。恐らく味評価の落差は相当に大きいだろう。さて結果は……。

 

「全ステータス強化値+60%……。当たりだな。あのぶどうジュースは〈引き上げの原則〉を最大限に利用して作られたもののようだ。〈バタフライタクティクス〉はシステム的なルールにまでここまでの影響を及ぼすのか……」

 

「なるほど!これなら、これからは他のプレイヤーもこのアイテムを供給できるようになりますね!神様戦でもさっそく、これを利用して」

 

「待て荒罹崇。〈バタフライタクティクス〉を活用して作られたアイテムは全能縛りの項目に入らないのか?」

 

「あ」

 

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>アウトです

 

>使ったらチャンネル登録外す

 

>それ無しで勝てよ

 

>神様は平気でがぶ飲みしてきそう

 

>対戦相手だけ一方的に強化されてて草

 

>卍さんがぶどうジュースの研究をしようと思い立ってしまったばかりに……

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「いやいや!確かに生産工程には〈バタフライタクティクス〉が用いられていますが、完成品としては立派なシステムに則ったアイテムです!いいですよね?ですよね?」

 

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>はー卍さんには失望したわー

 

>こんなガバガバな縛りで勝って嬉しいか??

 

>マジ??卍さん諦めるの??マジで??

 

>卍さんならゲーム内スキルで神を倒せると信じていたのに……

 

>妹が先程の卍さんの発言でショックを受けて寝込んでいます。撤回してください

 

>あーあ、視聴者の妹泣かしたーいけないんだー

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「はい。縛ります」

 

 これはさすがに次の挑戦じゃ勝てないかも……。いやいや、ダメですよボク!【モーションアシスト】に隙を見せてはいけません。勝ちますから!勝てますよ?《運命変転》します!はい勝ったー、ボクの勝ちー。

 

 一瞬だけ精神的に錯乱しつつも、なんとか《運命変転》で心を落ち着かせていく。そうそう、ステータスなんて〈魂の言葉(ソウルワード)〉1つで簡単にひっくり返る飾りみたいなものですから!ぼくのきゅーとでてくにかるな戦術があれば勝てるんですよ!

 

「仕組みがわかったのはいいんだけど……そもそもこのマシンはどういう意図を持って設置されていたんだろうね?いずれは他の誰かが見つけていたのかもしれない。けど、現物を見せてしまったせいで再現できるってバレてしまった」

「見せびらかしたかったんじゃないですか?そういう人結構いますよ」

「でもそれならアタシだったらこんなの見つけた!って堂々と宣伝すると思うなー。アイテムは紹介したいけど匿名希望、みたいな?」

「もしかしたら本気でこのマシンなら開拓イベントで優勝できると思っていたのかも」

 

 お兄ちゃんさんが装置を作った理由について考えている。作った人が何を考えているかは、当人と会って《ロールプレイング》でも使わない限り読めない。けれど、ボクがあえて同じことをするとしたら……。この料理アイテムを広めて優位性を得る戦術がある、と予想する。それが一体なんなのかは見当もつかないけど、善意の行動だとは思えませんね。

 

 まあ今は気にすることでもないでしょう。少なくとも神様戦を終えるまでは縛りプレイを続けていくつもりですし、そういった意味では現在のボクとは無関係の話だ。

 

 ありすさんと夜露死苦さんは、今回の検証結果を利用して早速、強度の高い料理アイテムを量産し、【会社】システムを利用してNPCへの教育も行うらしい。もちろん販売は【魔族の街】。開拓ポイントの獲得を狙っていくようだ。

 

 しかし、そうなると本当にボクが何をやっても優勝は無理な気がしてくる。効果値の高い料理を売るお店というライバル。他にもいくつもの新しいテクニックを活かしたお店や開拓がなされていくはずだ。

 

 まあそれでも【会社】システムによってお店を建てるのは悪いことじゃないし、堅実に商売していきますか。

 

 その日はゆうたさんたちと魔族の街をいくらか見て回っていく。変なオブジェクトも多いけれど、きれいな花々を植えて景観重視の開拓をしている人もいる。NPCの気に入りそうな作戦を模索している方々も少なくないらしい。そうしてだいたいの偵察活動が終わったら、とがみんと一緒に堅実にお店を建てて、テクニックに必要なアイテムや素材を売っていく。

 

 特に特筆することのない平凡なお店。だけど、そこそこお客さんがやってきてうまいこと経営が回っているようだ。このお店に需要があるということは、全能だけじゃなくてテクニックを活用した戦術で戦おうとしている人もいるってこと。優勝はできないかもしれないけれど、ボクの目的は達せられたかな?

 

 

 そんなこんなで1週間が経過し、優勝者発表の日。

 

「おめでとうございます!!!卍荒罹崇卍さん、とがみんさんの2人組が優勝ですー!!!」

 

「あれ?」

 

 なぜか優勝しちゃいました。

 

「おめでとー卍さんー!とがみんー!」

 

 めりぃさんがまるで自分のことのように感情表現(エモート)を連発して喜んでいるけれど、腑に落ちない。

 

「ボクのお店って、まあお客さんは来てくれたけど別に発展に貢献してるってほどでもありませんでしたよね?夜露死苦さんの料理屋のほうがよっぽど大繁盛でしたけど」

 

 ありすさんと夜露死苦さんがあの後別々に始めたお食事処。それぞれ別の方向性の料理を売って客層を奪い合わないようにしていたようで、どちらも高いステータスアップや特殊効果の付与(バフ)付き料理を【会社】システムによって量産販売していた。当然毎日満員御礼でたくさんのお客さんが訪れていたし、今までの謎施設と違って景観を壊すような迷惑行為もしていなかったように思える。

 

「確かにあのお店は大繁盛してたしお客さんもたくさん来てたよ!!!……でもさ、泥水やら汚水をたくさんぶち込んだ料理なんて食べたくないよね???」

 

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>食べるけどね

 

>投入した泥水やら汚水は全部全能で取り除くんだよなあ

 

>おう、綺麗ピカピカに掃除したトイレの便器舐めてみろや

 

>これは正論

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「待って待って!他にも良いことしてる人もたくさんいましたよ!魔界のような植物じゃない普通のお花を育ててる人もいましたし!アレは景観も良くて最高ですよね!」

 

「その花に食われてNPCがデスペナになったんだけど???」

 

「何考えてるの???」

 

 そんな花を植えるメリットを教えていただきたい。

 

 とにかく、そういった意味のわからないオブジェクトや、むしろ被害しか及ぼさないお店などなどを除外していった結果、消去法でボクのお店が優勝になりました。

 

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>おめでと卍さん

 

>不 戦 勝 で 優 勝 す る 女

 

>優勝記念にチャンネル登録外しました!!

 

>卍さんって配信映えしないしょーもない優勝多すぎて笑えてくるよな

 

>カードバトルも不戦勝で優勝したんだっけ?

 

>相手を不戦敗にするソウルワード使えそう

 

>これはアンチ爆増間違いなし

 

>アンチ(ファン)

 

>ファンが一致団結してアンチ活動を続ける謎の配信チャンネル

 

>これは神回

 

>これは新参も卍さんの魅力にひれ伏したな間違いない

 

>最高に白ける筈のシーンがなぜか大盛り上がりしてしまう現象

 

>このすっとぼけた展開を持ってくるのが卍さんの持ち味なんだよなあ

 

>AWP-002との戦いなんか誰も見てなかったからな

 

>相手が負けを認めてるっぽいのは配信で見たけどいまいち信じられんわw

 

>人類にご奉仕するAIが繰り出した渾身の八百長だぞ

 

>いつも馬鹿にしてるけど卍さん応援してます!!

 

>こんな展開が期待される配信者とか終わってる

 

>取れ高0で勝手に盛り上がる配信者とかむしろ始まってるぞ

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