卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第279話 神は遍在する

 試合場へ【エアジャンプ】で飛び込み、正面を見据える。神様は全能の飛行術で、すたりとボクの前へ降り立った。

 

 互いの距離はそこそこ離れている。20mほどといったところか。だが、現環境の【フォッダー】ではこの程度の距離などまったくの無意味だ。一瞬で距離を詰めてくるだろう。恐らくゴブ蔵を召喚できるような隙はほとんど見せてくれないはずだ。

 

 それでもゴブ蔵は頼もしい戦力であり、ボクの仲間だ。まずは、いかに隙を突いてゴブ蔵を呼び出すか。そこにかかっている。

 

 お兄ちゃんさん相手ではゴブ蔵は呼び出せなかったけど、特定のコンボを前提にしないとダメージすら与えられない神様相手なら、連携プレイは最重要と言ってもいい。

 

【START!!】

 

「〈始まりの炎より生誕せし、根源たる一柱〉……」

 

「今更そんなブラフが通用するわけないだろう!《神なる行動(ディバインアクション)》!」

 

 ボクの【サモン・フィーニクス】の詠唱を前に、神様は足を踏み鳴らす。次の瞬間、膨大な量の水塊が神様の前に出現し、会場ごとすべてを押しつぶさんと解き放たれた。光の速度こそないが、その射出速度は当然にして超高速。たとえダメージを防げたとしても、物質干渉力だけで一瞬にして場外に叩きつけられるレベルの全能だ。

 

 けれど、甘いですよ?

 

「〈灼熱の翼に風を受け輪廻を廻る一羽の鳥よ世界の狭間より森羅万象を睥睨せし神果てなき夢幻の彼方を駆け抜け無限の果てへと辿り着かん事を〉!【サモン・フィーニクス】!」

 

 そんな水球がボクに迫る、その僅かな隙にボクは【サモン・フィーニクス】を唱えきる。

 

 圧倒的な詠唱時間(キャストタイム)を誇る最上級魔法を目にも止まらぬ速さで発動させたボクは水球をその身で強引に受けつつ、絶大なる継続回復(リジェネ)で即座に回復する。加えて«疾風迅雷»で瞬間的に前進し、物質干渉力によるノックバックすら完全に踏み倒した。

 

 そして残る水塊はフィールド端まで突き進んでいくが、【フィーニクス】の放つ炎の力だけで、すぐさま蒸発していく。ボクの装備にセットしている妖精さんは軽く押し流されてしまったけれど、急いで戻ってこようとぱたぱた飛んできている。大丈夫そうですね。

 

【サモン・フィーニクス】

[アクティブ][自身][エリア][召喚][魔法]

消費MP:200% 詠唱時間:5s 再詠唱時間:48h 効果時間:15s

効果:一定時間、[フィーニクス]を[召喚]する。

[フィーニクス]は[自身]を[起点]として[形成]した[エリア]内でのみ活動を行う。

 

 【帝神の加護】でカスタマイズを施し、絶大なコストと引き換えに詠唱時間(キャストタイム)を大幅に短縮させた【サモン・フィーニクス】。最大MPの2倍という本来なら払えないはずのコストで不可能を可能とした。

 

 ――これを成し得た主役は、ある一つの【加護】だ。

 

【邪神の加護】

[パッシブ][ブレッシング]

効果:[自身]の[スキル][発動時]の[コスト][消費]が[増加]する。[増加分]の[一部]を[邪神ポイント]に[加える]。

 

「ありがとう!邪神様愛してます!〈混沌に仕えし魔の眷属よ〉……」

 

「15秒間の生存保証、その間に召喚をするつもりか。ならば我が許可しようではないかっ!」

 

「〈我に従え〉!【サモン・ゴブリン】」

 

 宣言とともに、魔法陣からぽんと呼び出されるゴブ蔵。ゴブー!と、いつものきゅーとな鳴き声で現れる。こんなに頼もしい仲間がいて、ボクは幸せですよ!

 

 ゴブ蔵を呼び出しても、【サモン・フィーニクス】の効果時間にはまだ半分ほど猶予がある。空いた時間にボクは【フレキシブルアップ】、ゴブ蔵は【マジックアップ】を唱えて準備完了。

 

 ボクの付与(バフ)は単体付与だが、ゴブ蔵は【範囲付与】を獲得しているようだ。【円盤ハウス】を頭に装備したまま発動したことで水属性ELMが大幅に強化され、多大な魔法威力アップの付与(バフ)が適用される。【円盤ハウス】って頭に装備できるんですね。びっくり。

 

【範囲付与】

[パッシブ][スイッチ]

効果:[消費MP]が[2]の[支援][魔法]を[エリア]に[変更]する。

 

 麦わら帽子みたいな【円盤ハウス】を頭に装着するゴブ蔵。よく見たら、ボクが渡した時はこんな形状じゃなかったので、恐らく気づかない間に再加工していたのだろう。でも見た目がちょっと無骨かな?後で装飾してあげよう。

 

 と、ほんの僅かに思考が明後日の方向によぎっている間に【フィーニクス】が元の世界に帰還する。再詠唱時間(リキャストタイム)の都合上、ボクはもう【フィーニクス】を呼び出せない。

 

「《神なる行動(ディバインアクション)》!」

 

 【フィーニクス】が帰還したと同時に神様が〈テレポート〉によって一瞬にしてボクの目の前に現れた。それと同時にボクは、何かに突き飛ばされるような感覚とともにHPを大きく削り取られ、後退(ノックバック)させられた。

 

 弾き飛ばされながらも、ボクは困惑する。どうして?〈テレポート〉には移動先地点への量子の設置が必要なはずだ。ボクの《『心眼』》ならそこから前兆を読み取れると思っていたのに……。

 

「……神は遍在する。()()()()()()という概念があるのであれば、同時に()()()()()ことができるのが我の《神なる行動(ディバインアクション)》――そう、我は三千世界の全てに存在し得る」

 

「無茶苦茶な!?」

 

 実質的に全ての地点への〈テレポート〉が可能ということじゃないですか!?

 

 しかし本体のボクは弾き飛ばされたけれど、妖精さんはその場に残ったままだ。妖精さんを起点にボクはスキルを発動させる。

 

「【トラップハンター】!」

 

 妖精さんが足元に猛毒の(トラップ)を設置すると同時に条件が満たされ、即座に起動する。ほんの一瞬だけ猛毒が神様のHPを削り始めるが、すぐに減少が停止した。やはり【オートユーザー】に【解毒薬】を設定していましたか……!

 

 続けて神様はボクや妖精を無視してくるりと向きを変え、ゴブ蔵を次のターゲットに定める。

 

「2度目の【フィーニクス】は呼ばせんぞ!」

 

 神様の眼が瞬間的にきらりと輝き、光の速度で放たれるレーザー。しかしゴブ蔵は避けようともせず、その攻撃を無防備に受け止める。ゴブ蔵の装備に付随する効果であるオートカウンターは発動しない……か。やはり全能技はシステムとして誰が攻撃したのかを判別することができないのだろう。

 

「【インパクトブレット(ゴブブゴブッブ)】!【タイム・カプセル(ゴブブ・ゴブ)】!」

 

 その攻撃ダメージを【魔力障壁】によって受けきったゴブ蔵は、お返しと言わんばかりに銃弾を打ち込みながらバックステッポで後方へ下がる。距離という概念は神様にとって無意味に等しい存在だけど、それでも棒立ちでいるよりはマシだ。そう判断したんだろう。

 

 しかし放たれた攻撃は神様にヒットこそしたが、何も起こらない。険しい道のりになりそうです。

 

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