卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第287話 反抗開始

「……は?」

 

 明日香さんの口から、恐るべき事実が語られる。

 

「消されました。この世界……少なくとも地球上にはユーキさんは存在しません」

 

「嘘でしょ?時間が戻っただけじゃないってことですか!?」

 

「……何者かが、ユーキさんという『異物(エラー)』を消した上で、世界をやり直させようとしているのでしょう」

 

 ()()()。言葉を濁してはいるけれど、そんなことをする存在がいるとしたら――。

 

「世界の創造主……」

 

 ユーキさんのやろうとしていたことは世界の創造主に真っ向から喧嘩を売る行為だった。

 

 〈進化(エボルド)〉の果てに創造主に届き得るプレイヤーが生まれるかどうかはわからない。けれど、ユーキさんは明らかにこの世界における知的生命体の中では飛び抜けて優れた存在だった。ともすれば異物(エラー)だと疑われるほどに。

 

「何か手はないんですか!?創造主をはっ倒す方法とか!ユーキさんを復活させる方法とか!」

 

「……」

 

 明日香さんは何も答えてくれない。そりゃそうだ。世界を巻き戻したり存在を消滅させたりできるような神を倒す方法なんて、現状この世には存在しない。神様じゃないボクでも確信できるくらい、当たり前の話。

 

 だからこそ、ユーキさんは【フォッダー】というシステムを介して、その手段を模索していた。

 

 この世にない神様討伐の鍵があるとしたら、それはやはり――。

 

「【フォッダー】の中……ですか」

 

 つい最近までボクは【フォッダー】を〈進化(エボルド)〉の踏み台として使うことを否定していた。全能を使わずに神様を倒す!なんて縛りプレイをして、挙げ句の果てに視聴者にそのことを押し付けてた。

 

 

 ボクのやってたことは完全に間違っていた。

 

 

 ボクが【フォッダー】を修行の場として利用して全力で努力していれば、この事件を防げた、なーんておこがましいことは言わないし言えない。結果は変わらなかっただろう。

 

 でも、それでもボクは甘く見すぎていた。楽観視していた。ゲームは遊ぶためにある、なんてもっともらしい御大層なお題目を並べ立て、今では【フォッダー】にまったく真逆の理由でログインしようとしている。滑稽にもほどがあるよね。

 

 けれど、ボクは再び【フォッダー】に挑む。ころころと意見を変える朝令暮改で自家撞着、無知無能で一知半解な配信者だとバカにされても仕方ない。

 

 ――だとしても。

 

「灑智、ボクは今からまた【フォッダー】にログインするね」

 

「それでは私も……いや、この時間軸に〘リアルステーション〙はまだ存在していないんでしたね」

 

「大丈夫。灑智はネットで情報を探ってもらえないかな?世の中の状況とか、ユーキさん以外にも変化が起きていないか」

 

「わかりましたっ。お姉様。とがみんを――私の妹を、よろしくおねがいします」

 

「ふふっ。とがみんが聞いたら笑っちゃいそうですね?……じゃあ、行ってきます」

 

「はいっ。行ってらっしゃいませ!」

 

 

 そしてボクは再び『VRステーション2』の世界にログインする。ログイン先はさっきまで『食材の魔術師』がラーメン屋の屋台を営業していた繁華街。

 

「できることはやる。そう決めました。お願いします、協力してください!」

 

 脳天気にゲームとして遊んでいたボクが、あまつさえ〈進化(エボルド)〉を目的にゲームをプレイする人々を小馬鹿にしていたくせに、いざ事態が起きてからようやく物事の重大さを理解して協力をお願いする。

 

 改めて字面にすると最低だ。いつもネタでチャンネル登録を外されがちなボクだけど、今度こそ本当に外されても仕方ない行為だと思う。

 

 そもそも所詮1人の配信者であるボクが頑張ったところで無為に終わってしまう可能性のほうが高い。〈進化(エボルド)〉を促進する【フォッダー】というゲームにおいてはある程度の実力があると思っているけれど、それでもボクより上手い人はいくらでもいる。

 

 諦めて、そういった人に任せたほうがいいんじゃないか?ボクもそう思う。

 

 でも、だからといってなにもせずに指を咥えて見ていることなんてできない。それこそとがみんに笑われてしまう。

 

 だからボクはこのゲームに全力で取り組み、〈進化(エボルド)〉の果てを掴み取る。ボク自身でなくてもいい。他の誰かと協力して、この状況をひっくり返したい!

 

 

「しがないラーメン屋でよければ、いくらでも協力するぜ?なんてな」

 

「……!」

 

----

>協力って言ってもどうする?ひたすら試合で鍛錬するとか?

 

>今更戦いまくったからといって神の領域に行けるなら苦労はしないけどな

 

>モーションアシストの最適解にはやる気や意思が関わるわけだから、実際に問題が起きる前と後では案外効率も違うのでは?

 

>事態が起きたから深刻さが違う以上……ってことか

 

>全能がきっかけで飛躍的にできることが広がったように、テクニックも重要だよね

 

>量子操作くらいじゃ世界創造系神には対抗できねーぞ。今度は時間操作するテクニックでも開発するか?

 

>ソウルワードならワンチャンあるけどな。某神の矛盾を操る能力とか意味わからんし

 

>あれも無茶苦茶だけど一応理屈は通ってたぞ。できないことができるようになるわけじゃない

 

>そもそも強く思わないと最適解を教えてくれないとかモーションアシストさんクズでは?

 

>最適解を教えてくれるという前提を踏まえるならソウルワードじゃなくても誰でも矛盾操作できるはずだしな

 

>まあとにかくいろいろやってみるしかない。皆で協力するなら普段はできないような実験もできるぞ。ククク

 

>↑こいつ絶対漆黒の翼だろ

----

 

「みなさん……!」

 

「卍さんってば、最近ネガティブ思考になってないー?」

 

 背後からボクに声を掛けたのはめりぃさん。振り返ると少しだけ首を傾げながら、にっこりとした、きゅーとな笑顔でボクを見つめている。

 

 ――《運命変転》。

 

「そうですね、そうでした……!ボクがすべてをぱーふぇくとに解決しますから、みなさんは黙って着いて来い!」

 

 ボクにはボクのわがままをサポートしてくれる愉快で素敵な視聴者と仲間がいる。創造主だからなんだ?ボクがぶっ飛ばしてあげますよ!

 

----

>まーた始まったよ

 

>全部解決したらチャンネル登録外すわ

 

>で、なんで卍さんあんなに焦ってたの?

 

>察しろハゲ。二度と卍さんのチャンネル見れないようにしてやるぞ

 

>こわい

 

>そもそも時間戻ったならもう1回同じ流れをやり直せばいいのでは

 

>タイムリープ知識で全財産を馬券に変えて盛大に外したの見てて笑った

 

>そりゃ自分に大金賭けられたら同じ調子で走れないわな

 

>これがバタフライエフェクトか。俺は詳しいんだ

 

>はやく卍さんいつもの水着装備しろよ。違和感やばいぞ

 

>無くなって初めて気づくビキニの重要性

----

 

「わかりました!じゃあまずは新しいフォルダさんの店で支度をして、それから活動開始ですね!」

 

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