卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第288話 時間の観測者

「新しいフォルダさん!水着ください!」

 

「無いよ」

 

「え!?」

 

「このタイミングでは水着はまだ無いし、かといってこれから作っても同じ効果が出るとは断言できないね。こういうのは乱数だから。……つまり【ジョーカー】×2の神装備も作れないってことさ。ははっ」

 

「確かにそうですね。……あの、ご愁傷さまです」

 

 確かに前の時間軸にあったエンチャントだからといってもう1回作って同じものができるとは限りませんよね。

 

 全く同じ条件と同じタイミングで作れば話は別なのかもしれないけれど、なまじ記憶がある以上同じ状況を再現するのは不可能と言ってもいい。ここでこんな会話をしている時点で前の時間軸とは大幅なズレが出ているのだから。

 

「まあ効果を気にしないっていうなら、だいたい同じデザインで指定して1つ作ってみるよ。元の世界を取り戻せば【ジョーカー】×2装備が帰ってくるかもしれないんだろう?」

 

「むしろ普段はデザインまでランダムガチャなんですね。水着デザインの強装備とか出ても新しいフォルダさんは着れないでしょ」

 

「小耳に挟んだ情報だと、縛りを設けないほうが未鑑定級の装備になりやすいらしいんだよね。よっと」

 

 こうして新しいフォルダさんが軽く項目を設定してガチャを引いてくれる。

 

 性能にはこだわらないけど、それでもどんな性能の水着ができたかは気になります。どれどれ。見た目は赤や黄色などの様々な色があしらわれたど派手なカラーリングですね。恐らく付与効果の影響を受けてデザインが変わっているのでしょう。

 

 

【ジョーカー】

[アクティブ][自身][支援][専用]

再詠唱時間:24h

効果:この[スキル]を[任意][クラス]で[取得]している[スキル]として[扱う]。

 

【ジョーカー】

[アクティブ][自身][支援][専用]

再詠唱時間:24h

効果:この[スキル]を[任意][クラス]で[取得]している[スキル]として[扱う]。

 

【ジョーカー】

[アクティブ][自身][支援][専用]

再詠唱時間:24h

効果:この[スキル]を[任意][クラス]で[取得]している[スキル]として[扱う]。

 

「ごめん、卍さん。これは俺用にしてもいいかな?」

 

「!?」

 

----

>やべえよやべえよ

 

>女性用水着だろうと性能が良ければ着る。それが廃人魂だ

 

>新しいフォルダさん終わったな

 

>まじで終わってて草

 

>社会的地位よりも性能を優先する漢

 

>卍さんの上位互換かな?

----

 

 それからなんとか思いとどまるように必死に説得して、作ってもらった水着を装備する。かなり派手な水着だけど、今までの配信で完全に慣れ切ったボクにはもはや欠片の躊躇も羞恥心も存在しない。

 

 ついでに言うと視聴者も慣れてしまったようで、以前は定番のネタだったのに痴女認定のコメントすらありませんね。

 

 そして見た目についてですが、恐らくは【ジョーカー】というスキル名から道化師をイメージしたカラーリングになったのでしょう。

 

 ……この神引きも元の時間軸に戻ったらなくなってしまうのでしょうか?もしなくならなかったら、後でお返ししますね。

 

 そんな恐るべき未来のことはさておき、いよいよ創造主様に歯向かう【フォッダー】の一大企画が幕を開ける。図らずも新しいフォルダさんの衝撃的発言で少しばかり緊張がほぐれた気がする。

 

「さて、まずはどうしましょう?」

 

 先行きは不透明。そもそも戦い以前の問題として創造主様はどこにいらっしゃるのでしょうか?さらに言えば越えるべきハードルも提示されていない。相手が恐るべき超常存在だということは理解しているけれど、それに対抗するためにはどのくらい強くなればいいんでしょう?

 

----

>目的から考えたほうが早いのでは?最低でも時間軸は操れなきゃ話にならない

 

>どうすんだよ時間操作って。できるわけねーだろ

 

>そこでできるわけないなんて発想に至ってしまう時点で勝ち目がないんだよなあ

 

>全員が時間軸操作できるようになったフォッダー世界を想像して笑った

 

>自分が単独で時間移動するくらいならできそうだけど世界まるごと戻すのは難しいよなぁ

 

>えっ?

 

>それでも相対的視点で見れば観測者以外の世界全てが巻き戻ってるわけだがな

----

 

「……たしかにそれなら可能性がありますね。時間は相対的に流れるというのが現代社会における定説ですから。こんな話をご存知ですか?光の速度に近づけば近づくほど、時間の流れは遅くなる。宇宙船に乗って圧倒的な速度で1年間の旅をしたパイロットたちが地球に戻ってくると、50年もの月日が流れていたという話です」

 

 本人たちの主観では1年しか経っていないはずなのに、第三者の視点では50年もの時が流れている。物体の速度が光に近づけば近づくほど時間の流れが遅くなる。

 

「つまりこの理論に則るならば、光の速度を超えれば時間を遡ることができるかもしれない!なーんて話もありますね。できるかどうかはさておき」

 

 光速を超えるには無限にも等しいエネルギーが必要だというけれど、最近は〈魂の言葉(ソウルワード)〉込みなら光速に達せるプレイヤーもいますからね。未だにあれの理屈はわかってないけれど、恐らく不可能ではないはずです。

 

 しかし仮に時間を操作できたとして、現状の世界をそのまま先の未来へタイムスリップさせることができても、世界の流れは同じにはならない。だから時間の操作で元の世界に戻るのは少々難しいわけだけど……。

 

「ねーねー卍さん。てことはさ、世界が光の速度を超えて動いたことで時間が戻ったんじゃない!?」

 

「盛大にぶっ飛んだこと言いますね……。まあ理屈はともかくとして、我々【フォッダー】のプレイヤーは観測者のポジションにいるとみていいでしょう。めりぃさんの話で言うならば、光の速度を超えて動く世界を外から眺めるポジションということですね」

 

 世界が光の速度を超えて動いたのに、ボクら【フォッダー】のプレイヤーはなんらかの方法でその影響から逃れ、俯瞰した視点でそれを観測することができた。

 

 さらに言えば創造主もまた同じようにこの観測者のポジションで世界を見ていることになる。つまりボクらは創造主と同じ、あるいはそれに準ずる立場に位置しているということだ。

 

「創造主に準ずる視点を得る手段――それが《『位階上昇(アセンション)』》……ということだな?……うん、旨い」

 

 『食材の魔術師』がボクらの後ろでラーメンを作り、味見をしながらもぽつりとつぶやく。

 

「なるほど、【フォッダー】が創造主に対抗する手段となるわけですね」

 

 世界の観測者である創造主に近い視点で世界を俯瞰する。確かにそれができないと話にならないわけだ。どうやらユーキさんはこのことまで想定していたのだろう。けれど、いざ当事者として現象を目の当たりにしないと理解し難い理屈でもある。

 

「なるほど、じゃあ次に問題になるのは……。《『位階上昇(アセンション)』》の理論だね。なぜ時間の流れから取り残されてしまったのか。そこについて考えれば……対抗策も見つかるかもしれない」

 

「うーん、《『位階上昇(アセンション)』》も〈進化(エボルド)〉なんだよねー?じゃあ一旦ゲームの外で調べてもらおっかー!前に卍さんも病院で見てもらったんだよねー」

 

「……なんというかこのメンツ、尋常ではないくらいに話が早いですね」

 

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