卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
ところ変わって、配信は病院へと移る。以前、〈
道中でメグさんを引っ張ってきて、一緒に診てもらいに来ました。
ちなみに病院までの道のりで軽く街を見て回った限りでは、案外みんな冷静で、時間が巻き戻るなんてすべてを超越する出来事が起きた割には平和そのものだった。
世間話に耳をそばだてた限りでは、この事態を認識していないというわけでもないようなのだけど……。冷静なのか、楽観視しているのかはわからないけど、暴動が起きるよりは良いのかな、とは思う。
「なんで私まで一緒なのです?」
「前回も一緒だったじゃないですか。比較もしやすいかなと思いまして」
前回もメグさんと一緒に検査を受けたから、今回も同じように見てもらうことにした。
「話は通ってるよ。さっそく検査しようか」
病院を訪れると、前回と同じお医者さんが出迎えてくれた。
「ずいぶんと話が早いですけど、いいんですか?」
「一般のゲームプレイヤーが気づいたことくらい、お偉いさん方も気づいてるってことさ。既に他のプレイヤーからサンプルは取れているけれど、検査をしながら説明しようか」
なるほど、そりゃそうか。【フォッダー】のプレイヤーだけが記憶を保持しているという結果があるのだから、プレイヤーの身体からデータを得ようとするのは至って当たり前のこと。内輪揉めで荒れているなんて話もあったけど、当然最低限のことはちゃんとやってるんですね。
「国がちゃんと動いてるってのはいいことですけど、それを話してもいいのです?私達は一般人なのです」
「【フォッダー】に関しては専門家だろう?それに、メグさんはともかく荒罹崇さんは国家のプロジェクトにまで目をかけられるほどの重要人物なのだから、当然だよ」
国家のプロジェクト、ねぇ。
「……『NPS』から思考データを横流ししてたのは貴方ですね?」
「なんのことかな?」
いかにも『私が犯人です』と言わんばかりにすっとぼけてるけど、追求しても仕方ない。時間が巻き戻るという衝撃的な事件を目の当たりにして、人道に反する計画が実行されても仕方ないレベルの緊急事態だったということは理解している。
そんな会話はいったん隅に放り投げて、さっそく検査をしてもらうことにした。まずは前回と同じくレントゲン撮影などで肉体面に変化がないかを探ってもらった。
「普通の人間とまるで変わりはないね。正常だ。他の被験者の場合とも同じだね」
結果は異常なし。時間が戻っているということもあるけれど、前回診てもらったときにも通常の検査で確認できる項目に変化はなかった。なのでこの結果はわざわざ確認せずとも推測できた。けれどそれはあくまで結果論。何らかの変化が起きてるかもしれないし、ちゃんと確認しなきゃいけませんよね。
「前回は脳神経の動きも確認したと思うけど……。荒罹崇さんは前回診察した結果と同じだね。脳の電気信号が不自然な挙動をとっている。一方、メグさんの脳は前回の検査時には異常が見られなかったけど、今回は荒罹崇さんと同じような現象が起きているようだ。おそらく検査後に〈
検査後に〈
つまり、
「〈
「そうだね。正確には別次元を経由する〈
「ゲームで筋肉が付いた、とかそういう〈
「そうだね。しかし前提として【フォッダー】プレイヤーに齎される〈
「……とがみんを代表とするボクから分裂・複製された人たちは、あくまで3次元に存在する人間ゆえにこの時間に戻ってこれなかった。そういうことですね」
【フォッダー】プレイヤーの記憶や〈
やっぱりとがみんを取り戻すには元の世界を取り戻すしかない。しかし、たとえ世界の時間を自在に動かせる力があったとしても、現状からそのまま時間を加速させただけでは同じ世界には絶対にたどり着かない。
いったいどうすれば……。思わず頭を抱えそうになるボクだけど、なんとかそれを意思で押しとどめる。
自棄になってはいけない、絶望してはいけない。常に思考を続け、小数点以下の可能性を導き出す――それが【フォッダー】をプレイすることによって身についた最適解を選び取るテクニックなのだから!
「助ける手立てはあるよ」
そう決意をしたところで、ボクは淡々と可能性を提示するお医者さんに呆気にとられる。あまりにも予想外の返答で、ほんの一瞬だけど脳が言葉を認識できなかった。
「あるんですか!?」
「すまない、断言しすぎだったね。これはあくまで仮説だけど、聞いてもらえるかな?」
「仮説でもなんでもいいです。話してください!可能性があるのなら、小数点以下でも可能性があるのなら――ボクがその『果て』を掴み取りますから」
ARで画面に表示されたカルテを注視しながら、お医者さんはボクにその可能性を提示する。
「これはここまでの事実から推測できる仮説だけど……まず、〈
「……!」
考えてみれば自然な理屈だ。この世界に戻ってこれなかったのは肉体だけ。お医者さんの話は仮説でありながらも理路整然としていて、ボクに希望を与えてくれた。
間違いない、とがみんはこの世界にいる。
問題は《『次元脳』》と肉体が切り離された状態でも人間は生存できるのかという不安、そしてどこにいるとも知れないとがみんの《『次元脳』》を見つけ出すという具体的な課題だ。
けれど具体的な方針が1つもなかったボクにとって、この話は間違いなく重要で、必要不可欠な鍵となる。
――希望が見えたのなら、後は
特定の〈
それとは逆により上位の次元に干渉する事もできる……。事前の情報通り、上位存在からの干渉に対する対応策となり得る重要な〈