卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第290話 真なる神ゲー

「消えた身体なら例の神様の力を借りれば復元できる。あるいはこちらでサイバー義体を用意してもいいし、手段はいくらでもある。君はそのために《『次元脳』》をどうにかして見つけてくればいいわけだ」

 

「例の神様……創造主ではなくアクタニアですね。時が戻ったこの世界でも、以前にかけた制約が有効だといいのですが、もしかしたらまた暴れてるかもしれませんね」

 

 暴れるとはいっても、既に種が割れている以上、そこまでの脅威ではないし、ちょっと明日香さんにちょっかいをかけるくらいだろうけどね。なんなら今頃は制約なんて関係なしに明日香さんの下僕になっている頃かもしれない。

 

「となると……行方不明者を助けられれば、必ずしも元の世界を取り戻す必要はないわけですが、とは言っても……」

 

「単純にそれだけで全てが解決する訳ではないね。創造主に生殺与奪の権を握られている以上、遠からず同じような事は起こりうるだろう。【フォッダー】プレイヤーの記憶が残っているという事実は……()()()()()()()()()()()()()()のだから。……一介の医師が考えたところで詮無きことかな?」

 

「あとは……ユーキさん。ユーキさんの《『次元脳』》はどこかに残っていないでしょうか。AIでも〈進化(エボルド)〉はできるんですよね?」

 

「〈進化(エボルド)〉はAIであっても可能だ。でも、ユーキさんだけは今のところ見つかっていない。恐らくは創造主が直々に抹消したのだろうね。つまり【フォッダー】をプレイしていようが()()()()()()()()()()()()()、というわけさ」

 

 肩を竦めてやれやれと首を振るお医者さん。口から流れるように飛び出す情報量と考察を聞くに、この人が本当にただの医者なのかという疑問が湧いてくるけど、そこは突っ込んでも仕方ない。

 

 問題はユーキさんだ。【フォッダー】の開発者であり、創造主について一番詳しいとされているAI。

 

 ボクとしては【フォッダー】における数々の仕様や声明のせいで、少々イラッとした事も1度や2度ではない。

 

 けれど、それでも彼女はこの世界を守るために懸命に動いてくれて、なによりも――【フォッダー】を開発してくれたこと。それだけでも無限の感謝を捧げたいくらい尊敬している人だ。

 

 とがみんだけではない。彼女もどうにかして救い上げる必要がある。そしてそのためには……創造主に喧嘩を売る必要があるかもしれませんね。

 

 

 ユーキさんは創造主という絶対的な存在を前にして、利益と陰謀が渦巻く神ゲー、【フォッダー】を開発した。

 

 以前ユーキさんはこう言っていた。利益が得られるゲームこそが神ゲーである、と。苦々しげな口調で、純然たる事実を述べていた。しかしボクはやはりこうも思う。義務感でプレイするゲームは楽しくない。

 

 そう、これからボクが目指すのは至って単純な論理から導き出された【フォッダー】を楽しくするための最適解だ。

 

 つまり――創造主さえぶっ飛ばせば、【フォッダー】は世界を救うための訓練施設という枷から解放され、『真なる神ゲー』となり、ユーキさんは2つの意味で救われる。

 

「これからの方針が決まりました。とがみんとユーキさんを救い、創造主を張っ倒します。やはりこれしかありませんね」

 

「当然ながらお国もそのために全力で動いているよ。ただの配信者である君がやる必要があることかな?」

 

「今更そういうこと言っちゃうんですか?では競争でもしましょうか。国家機関と単なる一般人、どちらが先にこの騒動を解決できるか、なんてね」

 

「当然、私も協力するのです!」

 

 ボクの宣言に対してぴょんぴょんと跳ねてアピールを始めるメグさん。頼もしい仲間ができましたね。

 

「……頼もしい限りだね。いいだろう」

 

 ボク達のやりとりをしばらく見ていたお医者さんは、突然AR画面をぽんと表示させ、しばし考え込む。それから指先で画面を操作してファイルを開き、ボク達にそれを見せてくれた。

 

「ユーキさんはこの世界から消失してしまっているが、彼女がそれを想定していないはずがない。これは世界に異変が起きてしまったときの手引書だ」

 

「そんないいものがあるんですね!たくさん文字が書かれてますけど……要するに何をすればいいんでしょう?」

 

「まずユーキさんにはバックアップファイルがあるとされている。何かあったらそこから復元できる可能性があると示されているけど……残念ながらこのデータもまた綺麗に消されていた。創造主とやらは、隅々までこの世界を見ているんだね」

 

「駄目じゃないですかー!」

 

 さっきは強がって表向きには不安を表さないようにしていたけれど、緊張がほぐれていたこともあって、今度は思いっきり頭を抱えてしまう。

 

「でもでも、ユーキさんなら第二案とかもあるんじゃないです?」

 

 メグさんは心配そうな表情をしつつもお医者さんに疑問をぶつける。確かにユーキさんがこんな片手落ちの対策で終わらせるはずがない。

 

「一応バックアップは複数用意されていて、中には暗号で場所が示されているものもあったけど、そこも残念ながら消されていた。その上で、第二案として用意されていたのが《ロールプレイング》による擬似的な人格の蘇生だ。これによって一時的にユーキさんを呼び戻し、助言を受ける。これは当時のデータにはなかった案だから資料には残ってないけど、試してみるかい?」

 

 《ロールプレイング》による擬似的な蘇生。先ほどのバックアップもそうですけど、本人を呼び戻すことはやはり現状では難しいのでしょう。

 

 しかし世界の危機に対して最も詳しいであろうユーキさんの人格から情報を得られれば、次の行動方針を決める糸口になるかもしれない。試してみる価値はありますね。

 

「わかりました、やってみましょう。ユーキさんの天才的頭脳をボクが再現できるかどうかはちょっと自信がないですが……やってみないとわかりません!」

 

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