卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
しばらく様子を眺めていると、どうやら戦闘は無事に終わったようだ。声をかけようとしたところ、向こうから先に話しかけてきた。
「あー! 卍さんじゃん! いつも見てるよー! あ、これ映ってるー?」
「はい、映ってますよー。いつもありがとうございます! でもボクの名前は卍
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>読めない定期
>なんか呪われそう
>卍さんは卍さんで良いだろ
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「……なんでそんなおどろおどろしい名前にしたの?」
「その件についてはボクの両親に尋ねていただければと思います」
「えっ、本名なの?」
「まあいいじゃないですか。ボクのことよりもさっきの戦いですよ! ラーメンを食べながら戦ってましたよね?」
正直、ボクのことを『卍さん』などと呼び続ける視聴者さんには物申したい。だがそれは置いておく。奇想天外なプレイヤーの前では些末な話だ。ボクが問いかけると、彼女はさも当然のようにこう答えた。
「あぁ、これ? 簡単な話だよー。HPやMPを回復するために食べてるのー。これ1杯で50%も回復するんだもんー!」
「なるほど、純粋な回復アイテムとしての利用ということですか……!」
HPやMPが50%も回復する。確かにボクもその点には目を付けていた。ポーションよりも回復量ははるかに高い。
とはいえ、その回復量はあくまで『非戦闘中にのみ使用できるアイテム』としての数値に過ぎない――そんな先入観に、ボクはとらわれてしまっていた。食事はゆっくり休憩しながら行うものだ、と。
「モニター越しのゲームが主流だった時代は、回復アイテムのドカ食いなんて当たり前でしたね……」
ボタン連打で凄まじい勢いで消費される
「いや、そんな時代のことは知らないけどね?」
VRが主流になってからは、その圧倒的なリアリティのせいで先入観が余計に強くなっていた。ゲームの経験は豊富な方だと自負していたのだけど、こんな簡単なことにすら気づかなかったとは……!
「あなたに気づかされましたっ……! 戦闘中でも遠慮なくラーメンをすすってもいい。これこそが自由度、オープンワールド――! さすがです、『戦場のフードファイター』!」
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>戦 場 の フ ー ド フ ァ イ タ ー
>言うほど動きながらラーメン食えるか?
>戦闘しながらラーメンを食べたり戻したりしろ
>参考になるわ。今度から俺も食べながら戦おう
>回復薬の代わりにラーメンを飲むだけ、簡単でしょ?
>カレーなら飲めるぞ!
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「やった! 卍さんに二つ名もらっちゃった! ふふん、いいでしょー」
なお、コメント欄では『羨ましくない』だの『いらない』だの否定的なコメントが流れてきている。まったく心外である。
さて、意気投合したボクたちは、さっそくモンスター狩りをすることになった。
「まずは自己紹介しておこっか! あたしの名前はめりぃ。
「めりぃさん、よろしくお願いします! 先ほどの戦いを見るに、【ナイト】を選んだのは耐久力を上げるためということでしょうか」
「結果的にはそうなるんだけど……。でも、あたしが【ナイト】を選んだのは
「なるほど、ペット職としての採用ですか! ちなみにペット職というのはモンスターなどを使役して戦うタイプの
めりぃさんの言葉にボクは納得した。彼女の
「【ナイト】は本来なら『近接
【フォッダー】においては馬との連携を行うスキルを活用した『
「そうそう! 今は精霊さんとの連携を重視しているから、【サモン・ホース】にまでは手が回ってないんだけどねー」
ふよふよと漂う精霊たちを眺めながら楽しそうに笑うめりぃさん。確かにペット職にはロマンがありますよね。
ペット職はその独特な性能ゆえに、どんなゲームでも一定の人気を誇る
戦闘AIや召喚システムなど、ペット職に関わるバランスには単純な数値だけでは調整できない要素が多い。他の
そんな問題の多いペット職だが、【フォッダー】ではどうなのかというと――。
「ネット上における【シャーマン】の評判は『最強』『雑魚』『使いやすい』『使いにくい』『神』『ゴミ』『AIが無能』『AIが賢い』ですね!」
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>情報が錯綜してて草
>やっぱフォッダーってクソだわ
>これは極めて有用な情報ですね間違いない
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「【フォッダー】は1000億円もの賞金を懸けた大会を開くことを告知していますからね。だから自分の
さすがに1000億円もの賞金ともなれば多くのプレイヤーが参戦する。本気で頂点を狙い、情報戦に臨むプレイヤーも少なくない。
もちろん【フォッダー】をプレイする動機は人それぞれだ。ただ単に普通のゲームとして楽しみたい人もいて、そういう人は正しい攻略情報を載せてくれることもある。
ただ、それ以上にノイズが多い。結局、その情報が正しいかどうかは実際に試してみるしかない。
「しかし――編集されていないリアルタイム配信の映像は信頼できる貴重な情報源になり得ます。ボクの配信ではその利点を生かして【フォッダー】で有用なテクニックや豆知識を紹介していく予定です。どうです? 偉いでしょう!」
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>マジかよ攻略wiki見るわ
>↑この前内輪揉めで閉鎖したぞ
>攻略サイトが無いゲームはクソゲーの法則
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「それならあたしが【シャーマン】としての戦い方を見せてあげるねー!」
雑談しつつ周囲を散策していると、白くきらきらと輝く巨大なゴーレム――【ディバインゴーレム】がこちらに向かってくるのを発見した。
先ほどもめりぃさんが戦っていたモンスターだ。つまり基本的には1人でも倒せる相手なのだけれど、今回は【パーティ】での戦闘。連携して鮮やかに戦わなくては!
「では、前衛をお願いしますね」
「まかせてー。卍さんには傷一つ付けさせないよー!」
そう軽く打ち合わせをすると、鈍重に近づいてくる【ディバインゴーレム】をめがけて、ボクはスキルを発動させた。今回は前衛もいるので、【高速詠唱】はなしだ。
「〈終末の劫火に身を焼かれ、永遠の安寧に抱かれよ〉……【ブレイズスロアー】!」
いつもよりゆっくりと呪文の詠唱を完了させると、【ルビーロッド】から巨大な炎の弾が飛び出す。
炎弾が【ディバインゴーレム】に命中し、HPを大きく削った。しかし、大型モンスターである【ディバインゴーレム】のHPは通常のモンスターよりはるかに多い。長期戦になるだろう。
「【サモン・ウォーター】!」
めりぃさんもボクの隣でスキルを発動させる。そして、めりぃさんの頭上に青い光の球が出現した。
その光の球が【ディバインゴーレム】をめがけて飛んでいくと、青い光線のような一撃を放った。ボクの【ブレイズスロアー】と比べると微々たるダメージだ。
しかし、【シャーマン】の使役する精霊は1体だけではない。
すでに召喚されていた赤・黄・緑の精霊たちが【ディバインゴーレム】の周囲をくるくると回りながら、継続的に攻撃を放っている。
「じゃ、行くよー!」
続けてめりぃさんが何もない虚空に手を伸ばすと、そこから取り出したのは熱々のラーメン。それを左手に抱え、箸でずるずると美味しそうに食べながら【ディバインゴーレム】をめがけて走り出した。
「すごい……。負けていられませんね。〈火花を散らせ〉【フラムブレット】!」
ボクが攻撃している間も【ディバインゴーレム】は周囲を取り囲む精霊を倒そうと腕を振り回して暴れていたが、精霊はひらりひらりとその攻撃を避けていく。やがて精霊への対処を諦めたゴーレムは、こちらへと歩みを進める。
そこへ、ラーメンをすすり続けるめりぃさんが立ちふさがる。
【ディバインゴーレム】は眼前のめりぃさんをめがけて思い切り腕を振り上げ、勢いよく振り下ろす。凄まじい質量による衝撃。普通ならば抵抗もままならず、一瞬でぺちゃんこに潰されてしまうことだろう。
――しかし、これはゲームだ。
めりぃさんはゴーレムの腕の一撃をものともせず、姿勢ひとつ崩さずラーメンを食べ続けていた。もちろんHPは大きく減少している。しかし、まるで物理的な影響を受け付けていないのだ。
その間にもめりぃさんの頭上から新たな精霊が出現し、ゴーレムを牽制し始める。
それだけではない。青色の精霊はゴーレムに攻撃を加えながら、めりぃさんに柔らかな光を送り込んでいた。そして、それを浴びるたびに彼女のHPがじわじわと回復していく。
まさに攻防一体だ。精霊たちの攻撃はHPを削るスピードこそ速くはないが、安定して継続的なダメージを与えており、時間をかければモンスターを倒すことができるだろう。
そして今は――火力に特化した【メイジ】のボクがいる。
ボクは杖を振りかざし、新たな魔法を唱え始めた。
「〈夜空に輝く神の一欠片、大いなる炎の源よ〉」
炎属性の魔法は『命を燃やす』というコンセプトなのか、超近接魔法【ソウルフレア】を筆頭に、MPではなくHPをリソースとする魔法がいくつも存在する。
その性質ゆえ、【高速詠唱】や【無音詠唱】のようなMP消費量を増加させるデメリットを持つスキルのコストを踏み倒せるが、耐久力の低い【メイジ】にとって、その力は諸刃の剣だ。
しかし――今は頼もしい前衛がいる!
ボクが詠唱している間もゴーレムはめりぃさんに打撃を加えている。それを意に介さず、その身に受け続ける彼女を見つめながら詠唱を続け――。
「〈灼熱の業火を身に纏い、天空より顕現せん〉――【メテオ】!」
スキル名を告げ、杖を振り下ろす。
白銀色の焔を纏った巨大な隕石がゴーレムを叩き潰した。
【高速詠唱】
[アクティブ]詠唱時間:5s 再詠唱時間:24h
効果:どちらかの[効果]を[選択]する。
1.[魔法]の[消費][MP]を[増加]させ、[詠唱時間]を[低下]させる。
2.[魔法]の[威力]を[低下]させ、[詠唱時間]を[低下]させる。
[パッシブ][スイッチ]
効果:[選択]した[効果]を[適用]する。
卍荒罹崇卍の一口メモ
デメリットを負うことで
テクニックその6 『フードファイト』
回復力の高い食事アイテムを戦闘中に食べるという斬新なテクニックです。かつてのゲーマーは皆がこのテクニックを利用していたのですが、いつのまにか淘汰されてしまいました。
ちなみに食事アイテムに記載された回復量は完食時の効果です。1割を食べれば表記の1割の効果。2割を食べれば2割の効果。早食いが非常に重要ですが、邪道食いはやめましょうね。
テクニックその7 『コスト焼却』
デメリットを負うことで
なぜならコストは発動対象となったスキルの消費MPに依存して決定されます。つまりMPを消費しない一部の炎属性魔法はノーコストで効果を適用できるのです!
ちょっとだけずるいようにも見えますが、実はこの仕様のせいでこれとは別の有用な【メイジ】スキルの恩恵を受けられません。ケースバイケースですね。