卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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2章 despair 小数点のその果てを!
第30話 お便り紹介


「みなさん、おはこんにちばんは!『卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる』……通称『きゅーてくちゃんねる』です!」

 

「あしすたんとの屠神 明日香です♥」

 

 配信スキル【ストリーミング】を起動し、中空に浮かぶ仮想レンズに小さく手を振り、満面の笑みで挨拶する。そこへ、明日香さんが横から割り込むようにして自己紹介をした。

 

「ちょっとちょっと、勝手にあしすたんとを名乗らないでくださいよー」

 

「だめなんですか? おねえさま……」

 

 ボクが釘を刺すと、明日香さんは悲しげな視線で訴えかけてくる。あまりの愛らしさに頬がゆるむ。

 

「だめとは言ってません。明日香さんを今からきゅーてくちゃんねるのあしすたんとに任命します!」

 

「わーい、ありがとうございます♥」

 

 ボクがそう宣言すると、それはそれは嬉しそうに抱きついてくる明日香さん。ここぞとばかりに髪をくしゃりと撫でたくなる。

 

 そんな配信の様子を見ていた視聴者さんからコメントが流れてきた。

 

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>明日香さんかわいい

>今日から明日香さんのきゅーと&てくにかる配信ちゃんねるにしないか?

 

>となると卍さんはクビだな

 

>明日香さんを見に来たのに卍さんが映ってて失望しました。チャンネル登録外します

>チャンネル登録外そうと思ってボタンを押したら間違って登録してしまった

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「まったく。明日香さんが超絶きゅーとなのには同意しますが、あくまでこの配信は『卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる』であることをお忘れなきよーに!」

 

 あくまでボクのちゃんねるだというのに、コメント欄はボクへのツッコミ祭り。しかも誹謗中傷している人に限って、メンバー登録済みのガチ勢だったりするから始末に負えない。

 

「さて、そろそろ本題に入りましょうか。つい先日活動を開始した『フォッダー不思議探検隊』。すでに山ほどお便りをいただいております。本当に感謝です!」

 

 お便りは当然メールやSNSで届いたのだが、配信で読み上げるにあたって【フォッダー】内にお手紙として出力しておいた。こういうのは形式が大事ですからね。

 

 明日香さんがセレクトした珠玉の数通を朗読してくれるらしい。彼女のセンスに期待ですね。

 

「それでは読み上げていきましょう♥ えーと……『最近、幼なじみの様子がおかしいです。なぜかいつも私にくっついてきて、頑なに離れようとしません。なぜでしょうか』」

 

「知りません。爆発してください」

 

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>草

 

>普通のお悩み相談で草

 

>どうでもよすぎる……

 

>確かに爆発してほしい

 

>なんでそんなお便りを採用したの?

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「他のお便りはないんですか?」

 

「『トーストを落としたときにバターを塗った面が床に着地するのはなぜですか? 気になって夜しか眠れません』」

 

「トーストを手に持ったときの一般的な高さから落下させると、ひっくり返って着地することが多いんですよ。そして、トーストを手に持つときや皿に乗せるとき、バターを塗った面は上を向いていることが多いですよね? そういうことです」

 

「『マーガリンは体に悪いのでバターのほうがよいという話を聞いたのですが、本当ですか?』」

 

「マーガリンが体に悪いという主張の根拠として挙げられているトランス脂肪酸は、バターにも入っていますよ。おいしさや使いやすさで選びましょうね」

 

「『明日の天気を教えてください。彼女とデートをする予定です』」

 

「それは気象庁に聞いてください!」

 

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>卍さんのなんでもお悩み相談コーナーかな

 

>つまりバターの面を下に向けて持てば落としても床にバターの面がつきにくいということか

 

>参考になる

 

>俺も相談のお便り送ろっと

 

>さすがトースト博士ですわ

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「【フォッダー】に関係していそうなお便りをお願いします!」

 

「もう。おねえさまったら、好き嫌いはだめですよ♥ えっと……『北の果てに変な【祠】があります。通常は行けないと思われる場所なのですが、遠目にも建物だけは見えます。未実装マップでしょうか?』」

 

「おっ、それらしいお便りも来てるじゃないですか。みなさんもこういうお便りを見習ってくださいね。……ちなみに【フォッダー】の話ですよね?」

 

「お便りには【フォッダー】のお話だとは書かれていませんわね♥」

 

 本来は【フォッダー】の不思議を募集しているのだから、特に記載がなくても【フォッダー】の話だと考えるのが普通なのだが、残念ながらこれまでのお便りがその当たり前を否定してくる。

 

「北の果て、ですか。マップ的には【ガベジー荒野】をさらに北上したところにあるのでしょうか?」

 

「行ってみないとわかりませんね♥」

 

「ですね。そういえば寿美礼さんの【鑑定屋】が【ガベジー荒野】に引っ越したという噂も聞きましたし、ついでに挨拶しに行きましょうか」

 

 【ガベジー荒野】にある【訓練場】を利用した〈鑑定遡行〉。装備を鑑定したあとにロールバックを引き起こして未鑑定の状態に戻すというバグもといテクニックだ。

 

 このテクニックを活用するために寿美礼さんは【訓練場】の隣に引っ越したらしい。

 

 引っ越しのきっかけを作ってしまった手前、挨拶くらいはしておかないとね。聞いておきたいこともありますし。

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