卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第293話 技能士の提案

「うーん、とりあえず《『位階上昇(アセンション)』》をしてみましょうか。次元を上昇させれば作者と近しい観測点を得られるということは……。理論上、極限まで極めて『果て』に達すれば作者に辿り着けるはずです。いろいろ試すので、外からなにか変化がないか確認をお願いしますね?」

 

「わかったわ。任せておいて」

 

 ハルカさんは院内の設備を利用して『VRステーション2』に入っているボクのデータをリアルタイムで観測してくれるらしい。

 

 基本的に〈進化(エボルド)〉が起きると「いつもより脳が活性化してる!」「いつもよりよく動ける!」「変なものが見えるようになった!」みたいな違いが出る。なので、なんとなくなら感じ取れるのだけど、それが《『位階上昇(アセンション)』》に繋がっているのかはボクの主観だけじゃよくわからない。

 

 基本的には《『次元脳』》みたいに別次元を経由して、3次元のボクの能力が拡張されていくのだろう。けど、〈進化(エボルド)〉で追加される部位が《『次元脳』》と同じ次元止まりなら意味がない。

 

 つまり方針としては、《『次元脳』》のように既に拡張された部位を〈進化(エボルド)〉させて、さらに上位の次元まで引き上げる必要があるわけだ。

 

「そうして次元を上げて強くなっていけば、いずれはNPCである我々が画面を突き破ってプレイヤーを殴り飛ばせるというわけですっ!わかりましたかみなさん!?」

 

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>言うほど強いキャラクターなら画面を突き破れるか??

 

>卍さんは今妄想タイムなんだ。見逃してやれ

 

>でもここまでの情報を統合すると結論としてはそういうことになるんだよね

 

>超強いキャラが派手なエフェクトの技を使えばサーバーを壊せるかも

 

>サーバーは壊れるけど世界も終わる定期

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 コメント欄でも議論が交わされているけど、やはり荒唐無稽だ。いっそゲームの操作権限をハックしたりする方が、まだ自然かも?

 

「まあやる前から考えてても仕方ないのです。ゲームの外に出られるかはわからないけど、《『位階上昇(アセンション)』》の手順くらいは調べてみるべきなのです!」

 

 そう言って頭に手を当て、むむむ……と唸り始めるメグさん。【モーションアシスト】に命令を送っているのでしょうか?

 

「うーん、すーぱーきゅーとな女の子になるように命令してるのに変化がないのです」

 

「メグさんは既にきゅーとですから仕方ないですね」

 

 なんて自分が言われたら赤面間違いなしのセリフで口説いてみたけど、「そういうのはいいのです!」と突っぱねられた。

 

「なるほど。既に自分のことをすーぱーきゅーとだと思ってるから本気で【モーションアシスト】に命令できないんですね」

 

「なんでわかったのです?」

 

 まさか肯定されるとは思わなかった。びっくりマークの感情表現(エモート)をぴょこんと出して、図星だとアピールするメグさん。自信満々なところがまたきゅーとな気がする。

 

「おっとそうでした。ではボクもなにか念じてみましょう。……そうですね。試しに《『心眼』》を強化してみましょうか」

 

 既に魔力やら気配やらいろいろな存在が見えるようになっている《『心眼』》。なんなら壁を透視することもできるし、実を言うと脳の神経回路の動きから思考だって読める。《ロールプレイング》でよくない?と言いたくなるけど《ロールプレイング》の始動に必要な相手の情報収集の過程で必要不可欠だ。

 

 とまあ万能にも程がある《『心眼』》だけど、実はまだ見えていないものがある。存在することはわかっているし、この眼と同一の仕組みを持つ機械なら観測できるはずなのに見えない存在。

 

 

 そう、〈進化(エボルド)〉自身だ。

 

 

 お医者さんの話では《『次元脳』》はボク達の脳に別次元製の拡張デバイスみたいなものが取り付けられている仕組みだという。つまり《『心眼』》が〈進化(エボルド)〉すればそれを観測できるに違いない。

 

 そして先の仮説によると、とがみんは《『次元脳』》としてこの世界に留まり続けている可能性が高いという。それならばボクの目的を果たすためにも、この〈進化(エボルド)〉は必要不可欠。

 

 ボクは目を閉じて意識を心の奥底にのみ集中させていく。【モーションアシスト】の最適解は意志の強さに比例する。強く、強く願えば〈進化(エボルド)〉は果たされる!

 

「でぇい!」

 

 と掛け声をあげながら心に念じつつ、目を開く。何も変わらない。

 

「……測定してみたけど変化なしよ」

 

 ……どうやら駄目だったらしい。ボクの意志の力が足りなかったのか――いや、そんなはずはない。《『心眼』》はとがみんという大切な存在を見つけるための手がかり。成功をさせたいという意志は、十分を通り越して十時間はあったはずなのに。

 

「それでも成功しなかったということは、やはりボクに本気の気持ちが備わっていなかったからなのでしょうか……」 

 

 情けない自分につい独り言が漏れてしまう。しかしそれを聞きつけたメグさんが1つの疑問を呈した。

 

「待ってくださいなのです。そもそもなんで【モーションアシスト】は意志の力という制限(リミッター)を設けてるのです?これがゲームならわかるのです――いや、ゲームなのですけど……。言いたいのはそういうことじゃなくて、最適解で導ける分にはむしろ積極的に〈進化(エボルド)〉できるように誘導した方が、人類の《『位階上昇(アセンション)』》が進むのではないのです?」

 

 言われてみればそうだ。ボクは今までこのルールを意志の強い方が優位に立てるという一種の『マインドスポーツ』を象徴するものとして捉えていた。けれど、人類が"作者"を打ち破るという真の目的を知った上で改めて考えると確かに違和感がある。

 

 【モーションアシスト】が最適解を提供するのであれば極端な話、誰もが《ロールプレイング》を使える。もちろん《ロールプレイング》は控えめに言って人格が半分崩壊してるとしか言いようがないやばい〈魂の言葉(ソウルワード)〉なのだけど、制限(リミッター)さえなければ理論上は再現できるはずなんだ。

 

 だからこそ人格を崩壊させないがための制限(リミッター)という可能性も否定できないのだけど――。

 

「ここは原点に立ち返るのです。私の二つ名は、卍さんがつけてたのです。覚えてるです?」

 

「えぇ、覚えてますよ。『技能士』……【マクロ】を巧みに操るプレイヤーを表す名前で……なるほど」

 

「そうなのです。まずは〈魂の言葉(ソウルワード)〉を【マクロ】に登録してみるのです!」

 

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