卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第301話 パーミッション

|「どうしたのです?卍さん。鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしているのです」

 ふと気づけば卍さんが虚空を見つめながら呆然とかたまっているのです。また、私には見えないものを見てるのです?普通ならちょっと危ない光景だけど《『心眼』》がある以上、他の人に見えないものが見えてしまうのも当たり前のこと。少しだけ不思議に思いつつも問いかけてみることにしたのです。|

 

 ……〈ロールプレイング〉でも相手の考えを読み解くことはできますけど、基本的にボクはその力を乱用したりはしない。必要な情報をピンポイントで抜き取ることもできるし、ぷらいばしーの問題もあって普段は自重するようにしているのだけど……。そんな自重とは裏腹に、ボクの〈進化(エボルド)〉は全ての情報を開示してしまっている。

 

 急いで動作をオフにしつつも、世界の断片を垣間見た気がして、心臓がドキドキする。

 

 

 間違いない……。これは"システムウインドウ"だ。

 

 なんなら"システムウインドウ"の端っこには"キャラクターシート"なんて項目まであり、現状の"システムログ"から別のページに切り替えることさえできる。

 

 どうしよう、これ言っていいのかな……。いや、この世界がゲームであるということはユーキさんによって既に明かされている。むしろ明らかに重要な手がかりだ。非常に残酷で、世界を混沌の渦に放り込みそうな内容だけど、言わない選択肢はない。

 

 そう思って《『心眼』》で読み取った情報を公開しようと思ったのだけど……。

 

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>卍さんなんか変なもの見てて草

 

>これを見て呆然としてたのか

 

>面白そう

 

>現実にもスキルがあるってマジ???

 

>盛 り 上 が っ て き ま し た

 

>ステータスオープンはよ

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「えっ、何、配信に映ってます!?……いやいや、もしかして〈ロールプレイング〉で情報をジャックしてます!?」

 

 どうやら既にこの世界は"システムウインドウ"なんてなくても個人のプライバシーなんて皆無だったらしい。話が早くて大変よろしいことだけど、恐らく"作者"なんて関係なくそのうち世界が滅ぶと思う。間違いない。

 

 そんな個人の感想もまた"システムログ"につらつらと書き連ねられており、タップしてスクロールすれば、いくらでも行動の履歴を遡れる。ある意味では過去を振り返るのにとても便利なアイテムだ。メモに使えるかも?

 

「……間違いなくこの世界を支配している上位の法則ね。ご丁重にも、反応があったワードには括弧書きがされているし。この括弧の違いが周波数の違い、といったところかしら」

 

「なんで括弧をつけてるのです?」

 

「まあ、単純に考えるならその方が分かりやすいと思ったのでしょう。プレイヤー個人にここまで膨大な"システムログ"があるのでしたら、特定の情報を収集するときのためにタグ付けしておくべきですからね」

 

「……この世界が誰かに作られているっていう分かりきっている事実を改めて実感したわね」

 

 はぁ、と深いため息をつくハルカさんの声が聞こえる。それからすぐに、なにやら意味を理解し難い不可思議な呪文のようなものを唱え始める。

 

「えっ?なんですかなんですか?」

 

「その眼球をコピらせてもらったのよ。〚トレーサビリティ〛って言うんだけどね……。これを通じてゲームにハッキングを仕掛けられそうだから試してみるわ」

 

「ハッキング?」

 

 眼球をコピる、なんて聞き捨てならない発言もあったけど、ここは敢えてスルーして、それよりもなお聞き逃せない単語に目を向ける。この世界はゲームだという……。それをハッキングできるってことですか!?

 

「間違いなくこの《『心眼』》はこのゲームの読み取り(Read)に関する上位の権限(パーミッション)を保持しているわ。最上層……とまではいかないかもしれないけど、ここを突けば他の権限(パーミッション)にも触れられるかもしれない――まぁ、ここまで大胆なことをすれば消されるのも時間の問題かもしれないけどね?」

 

 "作者"に対する一世一代の大反抗。箱庭の中でNPCが暴れているだけなら問題ないかもしれないけれど、上位の権限にまで触れられることがわかった以上、いつボクらにバグの修正が施されるか、わかったもんじゃない。

 

 なにせボクらの発するこの世界がゲームであるということを前提とした単語にはご丁重にも新たなタグ付けによるカテゴライズがされている。検閲されていると見て間違いないだろう。

 

 今のところ、ボク達の状況に変化はまだ訪れていないけれど……。あるいは5分前仮説のように、知らぬ間に世界が再構築されている可能性すら否定できないのが恐ろしい。

 

 今回の時間逆行は高次元の拡張脳を持つことで耐性を得ていたようだけど、その気になればそれすらも貫通して人1人を消すなんて容易いことだ。ボクらの"作者"対抗戦線は、"作者"自身がそれをあえて見逃しているという脆い前提の上に成り立っている。

 

「解析はハルカさんに任せましょう。ボクらはどうします?」

 

「ぼくはどらごん?に興味があるなー。他に案がなければいってみよ?」

 

「他に案って言えば"システムウインドウ"の検証くらいなのですけど、それはハルカさんがやってくれるはずなのです。でもそろそろお昼時なのです。一旦休憩を挟まないです?」

 

 そういえばابتسامةさんも"システムログ"経由でそんなことを言ってましたね。一世一代の決戦で食事をしてる暇はない!なーんてわけにもいきませんし、今はボクらだけじゃなく国や様々なプレイヤーが1つの目的に向かって走っている。そんなみなさんに今回は任せておいて、重要なタイミングで最大限のポテンシャルを発揮できるよう、ひとまず休憩するとしましょうか。

 

「そうですね。お昼を食べて、午後にもう1度集まるってことにしましょう」

 

 そしてボクは【フォッダー】からログアウトする。病院内の『VRステーション』から出て、〈テレポート〉で一足飛びに自宅に戻る。

 

「おかえりなさい、お姉様。情報たくさん集めておきましたっ!」

 

「ただいまー!そしてありがとう!どんな感じだった?この辺りは割と平常運転みたいだけど」

 

 帰りは〈テレポート〉で戻ってきたけど、病院への通り道で軽く見回した限りでは街中は落ち着いた様子だった。暴動やらなにやらが起きてもおかしくないとは思ってたんだけど、案外冷静なんだなーって思った。

 

「ああ、それは私が魔力を広げているからですよ。今は世界中を覆っているので、そういったネガティブな感情は抑え込めるように調節しているんです」

 

「はい?」

 




魔導その5 〚トレーサビリティ〛
物体のコピーを自在に行う〈魔導〉です。莫大な魔力を必要としますが、
視界に捉えた物質を好きなようにコピーする事ができるそうです。
ただし生き物を丸ごとコピーする事は出来ず、さらにはAIをコピーする事も出来ません。
このように法則として一貫しない特殊な制限こそが『〈魔導〉に理由は無い』と言われる所以の1つですね。
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