卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

311 / 543
第303話 衝撃の事実

「ほら、あそこにいるドラゴンがそうだ。だがその前にラーメンで付与(バフ)をかけておこう」

 

 そして『食材の魔術師』に提供された〈引き上げの原則〉に従って産み出された高性能付与(バフ)料理をみんなで頂く。リアルではお昼ご飯を食べたばかりですけど、『食材の魔術師』のラーメンは美味しいので何杯でも食べられますよ!VRなので当たり前ですが。

 

 さて、ずるずるとラーメンを啜りながら戦術について思案する。時間が巻き戻っているという都合上、スキル構成も初期のままだし、なんなら他の職業(クラス)のスキルなんて1つも持ってないんですよね。『超高層射撃支援型展望台コメット』があればここに来る前に軽くレベル上げもできたんだけど、さすがにあの超高層建築を今から建てるには時間がかかりすぎる。

 

 新しいフォルダさんが【女神像】を持ってきているようなので、軽くスキルを覚えることもできるのだけど……。あえて、ボクは何も取得しない。【ジョーカー】×3の水着をかなぐり捨ててスキル縛りで挑みます。……あの時とは完全に逆ですね。

 

 さて、肝心のドラゴンだけど……周囲の落書きにも似た世界観に違わずクレヨンで描かれたような姿をしている。ドラゴンだと言われればそう見えなくもないのだけど、言われなければ謎の絵が動いているという感想しか浮かんできませんね。

 

 のんきに翼をぱたぱたと羽ばたかせながらお散歩をしていて、危険な生物には思えないのですが、本当に強いのでしょうか?

 

 なんだかきゅーとだなーと眺めていると、唐突に、すぐ横にいた『食材の魔術師』が粒子になって消え去っていった。

 

「あー。今、殺られたね。光の速度でドラゴンが接近してきて、白凰さんが爪でえぐられたのが見えたか?」

 

「えっ?」

 

----

>草

 

>食材の魔術師だけピンポイントに殺されてて草

 

>見えるわけねーだろ

 

>いや逆に周りの物とか衝撃で全部吹っ飛ぶからわかるだろ

 

>光の速度で物が動いたら地球がやばいという知られざる事実

 

>ゲームだからね仕方ないね

 

>おまえらたとえエボルドしてもリアルでは光の速度で動くなよ

 

>ゲームだから大丈夫でしょ

----

 

「……なんで彼だけが殺られたのです?」

 

「ランダムらしい。距離は関係なしに一定確率でこの世界の誰かを標的に定めるんだ。もちろん攻撃すれば普通に反撃してくるよ」

 

「ちなみに新しいフォルダさんは今のは見えたんですか?そもそも光の速度より速い物体って見えるんですか?」

 

「《『心眼』》を持ってるのに今更そんなこと言っちゃうのかい?」

 

「目を瞑っていても見えちゃうんですから、光だとかそういう問題じゃありませんでしたね」

 

 というわけで次こそはなんとか目で捉えてみようと身構えていると、『食材の魔術師』がポータルから戻ってきた。その瞬間、粒子になって消滅していった。

 

「本当にランダムなんですか?」

 

「5回に1回は俺が狙われたよ」

 

 ランダムじゃないんですね。

 

 その後も戻ってくるたびに犠牲になってくれるので、安心して攻撃の瞬間を眺められた。何度か見ていると、だんだんと目が慣れてきて、攻撃を視認することができるようになってくる。

 

 しかしそれ以上に『食材の魔術師』本人の成長が著しく、死んで戻ってくるたびにドラゴンの襲撃に対応しようとしたり、さらには反撃まで仕掛けているのが見て取れる。

 

 やはり安全な場所でぬくぬくと観戦するよりも、死なないために必死に抵抗を続ける彼のほうがより多くの経験を得ているのだろう。

 

 となればボクらも見ているだけではいけない。死闘を通じてさらに自身に磨きをかけ、より強くならないといけない!

 

 そこからはボクは敢えてドラゴンにちょっかいをかけて一瞬でぶち殺されるというルーチンを延々と繰り返す。他のみんなも同じようにドラゴンを倒すために何回もこの世界に赴いて、一撃でやられていく。

 

 そしてそのたびに〈進化(エボルド)〉は再構築されていき、光速の戦闘に対応できるように《『次元脳』》が最適化されていき……。

 

「〈メテオ〉!」

 

 ボクが宣言した瞬間、上空から隕石が光の速度で降り落ちる。それを光の速度で回避し、ボクを爪で切り裂こうとするドラゴンさん。しかし即座にボクは〈テレポート〉で離脱。背後に回り込み〈ソウルフレア〉を撃ち込む。

 

 ――やっぱりだ。ابتسامةさんの発見した()()()()()()()()。これは想像以上にイカれていて、この世界がゲームであると強く実感させる最悪のルール。

 

 たとえ【フォッダー】のスキルであろうと関係ない。自身がテクニックであると定義した上で振るえばゲーム内スキルは()()()()()()()()()()()()()()

 

 〈ソウルフレア〉をぶち込んだ後、後方に下がりつつさらなるテクニックを発動させる。

 

「〈サモン・ゴブリン〉!」

 

「ゴブー!」

 

 お久しぶりです、ゴブ蔵さん。どうやらボクのことを覚えているようで、突然の召喚に困惑することもなく、手を振って応えてくれる。中の人はAIですからね。〈進化(エボルド)〉によって記憶を保持しているのでしょう。いつかはゴブ蔵の中の人とも話してみたいな。

 

 そんな風に明後日の方向に思考がよぎったところでドラゴンが腕を振りかぶり、思い切り振り下ろす。すると、落書きみたいな腕がぽろんと取れて凄まじい勢いでこちらに飛んできた!

 

「うわわわ!ゴブ蔵助けて!」

 

「〈ガードジャスト〉」

 

 そんなボクの叫びにお答えしてゴブ蔵が【ナイト】のテクニック〈ガードジャスト〉によって物質干渉力を無効化し、撃ち落とす。……あれ?

 

「ゴブ蔵、もしかして喋りました?」

 

「えっ!?ご、ゴブー」

 

 恐らく、スキルをテクニックに変換する必要があるせいでいつものゴブリン語でスキルの発動を宣言できなかったのだろう。こんなところでボロが出てしまうとは。

 

 他のみなさんがドラゴンを相手取り盛大に戦いを繰り広げている中、ゴブ蔵をじーっと見つめていると、どうやら観念したらしく人間の言葉で喋りだした。

 

「バレてしまっては仕方ありませんね、プレイヤーネーム『卍荒罹崇卍』、お気づきかと思いますが――」

 

「ちょっとまって???」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。