卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第305話 時間停止

めりぃ >やっと見つけたよー!

 

卍荒罹崇卍 >何を見つけたんですか?確かユニークスキル持ちの人を探していたとお聞きしてましたが

 

めりぃ >帝王龍さんだよー。あと」さん!クロノスもオネイロスも時間や次元に干渉できるスキルだから必須だってお兄ちゃんが言ってたのー!

 

 自信満々にチャットでそう言ってくるめりぃさんだけど……。【黄金の才(ユニークスキル)】って、ゲーム内のスキルですよね?

 

めりぃ >そうだよー。でも、ユーキさんが意味もなくそんなスキルを配るとは思えないの!

 

卍荒罹崇卍 >なるほど、一理ありますね。猫姫さんが盛大にスルーされているという悲しい事実はさておき、2人とも話してみたいです

 

めりぃ >わかったー!じゃあ、グレイブウッドで会おうねー!

 

 【グレイブウッド】で?魔族の街があった頃ならまだしも、今は特筆するような施設もないはずなのですけど……。今から最速で魔族の街の開放イベントを起こすこともできますが、そういう指定もありませんね。けれど彼女が意味もなくそんな場所を選ぶはずがありませんし、なにか考えがあるのでしょう。

 

 めりぃさん、あるいは一緒にいるというお兄ちゃんさんの思惑を探りながら、チャットの内容をみんなに説明する。それから一度【フォッダー】に戻り、めりぃさんに【コールグループ】で呼び出してもらうことになった。

 

 【ギルドハウス】があればたくさんのポータルから簡単に【グレイブウッド】に行けるのに………。

 

 それでも【コールグループ】を使っていた時代は移動するたびに他のプレイヤーとの交流が盛んで、悪くないゲーム性だったのかな、なんて振り返りながらも遠隔【パーティ】申請を受諾して、ボクらはめりぃさんに【グレイブウッド】の入り口へ召喚された。

 

 その場にいるのはめりぃさん、お兄ちゃんさん、帝王龍さん、」さん。聞いていたメンバーと同じですね。

 

「」だよー!こんにちはー!」 

 

 まず最初に挨拶をしてくれたのは」さん。【黄金の才(ユニークスキル)】の使い手で、子供っぽいきゅーとな喋り方をする女性プレイヤー。ただ、唯一の欠点として、彼女が会話に絡むと異常なまでに言葉が聞き取りづらくなる怪奇現象が起きていたのだけど……。今ならそれが感覚ではなく理屈でわかる。

 

「こんにちは、」さん。お元気でしたか?」

 

「えーとねー、」はげんきだよー!」

 

 ボク達の世界は"システムログ"というテキストデータの羅列によって構築されている。そしてそのログには特定のワードやアクションに対して自動的にタグ付けのようなものがされているのだけど……。そういった"システムログ"に使われる特殊な文字列と彼女のプレイヤーネームが一致してしまっているんだ。

 

 あるいは"システムログ"というフィルターを観測することができない人々にとってはなんの異和感もないのかもしれないけれど……。【フォッダー】のプレイによって無意識に行われた〈進化(エボルド)〉が、次元を隔てて発生する周波数というわずかな異和感を感じ取れるようにしてしまったのかもしれない。

 

「ちなみに」さんは異和感はないんですかね?その名前で」

 

「んー?よくわからないけどもうなれたかもー?」

 

 」さんと話していると、めりぃさんがこっちこっちと手招きをしながら声をかけてくる。

 

「さっ、中に入ってさらにポータルの裏側から入って入ってー」

 

「それって魔族の街に行く道なのです?私たちはまだあのクエストはクリアしてないのです」

 

 メグさんがめりぃさんに疑問を呈する。確かにその問いは正しい。

 

 イベントをクリアしなければポータルの裏側を通っても何も起こらない。【フォッダー】にしては珍しくクエストのフラグを条件とした明確な制限を設けていると思っていたものだけど、さすがにそれを突き破れるようなテクニックは思いつかない……。

 

「大丈夫だよ。【女神】様が許可してくれたからね」

「ほんとに最悪のNPCだよな?」

「ユーキさんがいないから本当に何でもありになっちゃったんですよね……」

 

「あぁ、NPC特権ですか……」

 

「めりぃさん、」はなにをすればいいのかなー?」

 

「随分な大所帯だなァ?【女神】サマもこんなにプレイヤーが押し寄せるとは想像もしてないだろうぜ」

 

 総勢9人。【パーティ】の通常限界人数を超える大所帯でわいわいと雑談しながら【グレイブウッド】の中に入り、ポータルを回り込んで【女神】様のエリアに入場する。

 

 本来ならポータルを逆側から通ってもフラグを満たしていなければ通常通り【グレイブウッド】の外に出ることになる。けれど、めりぃさんが言った通り、ボクたちは本来の条件を無視して【女神】のエリアに入ることができた。

 

「よく来たわね、歓迎するわ。この【女神】様がね!」

 

「めりぃさん、こんな人に頼っても仕方ないですよ?」

 

「しょうがないんだよー!ユーキさんがいない今、この人が【フォッダー】界の最高権力者なんだからー!」

 

 大げさな身振り手振りで不満を表しながらも、驚くべき事実を口にするめりぃさん。……マジですか?

 

 確かにこの人、クエストの時は何でもありかってくらいの職権濫用を繰り返していたし、逆に他のNPCの人はあまりそういった滅茶苦茶をしないんだなーと感心していたのだけれど……。クエストフラグを平気でぶち壊せる特権はNPC共通のものじゃなくて、この人だからできることだったんですか!?

 

「なんでこんな【女神】にユーキさんは特権を与えてしまったのです?」

 

「ユーキさんでも失敗することはあるんだ。仕方ないだろう」 

 

「」はねー。【女神】さまもすきだよー」

 

「まあ逆に敵役としてはこの上ないくらいのヘイトを稼ぐ有能人材であることは間違いねェだろうからな」

 

 みんなで【女神】様を話題にしてわいわいと盛り上がっていると、

 

「ちょっとちょっと!あんた達、私に頼みがあるんじゃないの!?その言い草はないでしょ!」

 

「そうだったのです。でもめりぃさん、お兄ちゃんさん。一体なんのためにここに来たのです?」

 

「それはねー。今から2人に【黄金の才(ユニークスキル)】を使ってもらって、【フォッダー】に負担をかけちゃうかもだから、その保険かな?」

 

「……?」

 

 めりぃさんの要領を得ない説明に、疑問符を浮かべるボク。すると、その説明を引き継ぐようにお兄ちゃんさんが口を開く。

 

 しかしその言葉はめりぃさん以上に意味のわからない唐突な言葉だった。

 

 

「帝王龍さん、君は――本当に時間が止められるんじゃないのかい?」

 

 

「ハッ……なぜそう思ったんだァ?」

 

 

 突拍子もない質問に対して帝王龍さんは表情を変えず、あくまでいつもの調子で質問で返してくる。

 

 一見するとその回答が否であるが故の質問返しに見えるけれど――間違いなく、度外れの推論に返すような態度ではないことが見て取れる。

 

 帝王龍さんの質問返しに対して、お兄ちゃんさん――その内部人格の1つである『ボク』が説明を始める。

 

「最初にボク――オリジナルの荒罹崇があなたに会った時、不可解なテレポーテーションを用いてましたよね。【黄金の才(ユニークスキル)】持ちに会うのは初めてでしたから、【黄金の才(ユニークスキル)】の持ち主は複数の能力を持っているものなのかと考えていました。【『クロノス』】の時間停止はすべてのプレイヤーが観測可能な停止状態ですが、それとは別に認識できない時間停止を持っていてもおかしくないですからね」

 

「そりゃそうだなァ。時間を停止してその間に移動をすれば、擬似的なテレポーテーションが成立する。あるいはそれとは別に空間に介在する能力を持っていてもおかしくはないな?」

 

「後者はありえませんね。【『オネイロス』】の管轄に踏み込んでいますから。課金してもらえる唯一無二の【黄金の才(ユニークスキル)】に能力被りが発生したら苦情が出ますよ」

 

「じゃあ前者はどうなんだ?」

 

「以前あなたと【サバイバル杯】の模擬試合をした時、あなたは他人の迷惑を考えて【黄金の才(ユニークスキル)】である【『クロノス』】を封印した。しかし、そんなことをせずとも他者に観測できない時間の停止ができるのであれば、他人の迷惑など気にもせずに【『クロノス』】を行使できるはずです。もちろんフェアな戦いにはなりませんが」

 

 ボクが考えもつかなかった考察を、お兄ちゃんさんの中にいるボクが淡々と披露していく。帝王龍さんは続けろと言わんばかりに顎で彼を指し示した。

 

「あの時のボクは【黄金の才(ユニークスキル)】の持ち主と戦いたがっていた。もちろん【『クロノス』】の第2効果を秘匿するためという可能性もありますが……これまでにボクが見てきた【黄金の才(ユニークスキル)】は方向性の違う2つの力を持っていることはなかった。それに、ただでさえ他に比べても強力なスキルなのに、1人だけ別種の効果があったら課金者間でも不平等ですよね?」

 

「別の可能性は考えなかったのか?たとえば、〈テレポート〉が使える能力者だったとか。当時はともかく今は量子操作による〈テレポート〉がある。そういった戦術を秘匿していただけと考えるのが自然なはずだがなァ」

 

「確かにそうかもしれません。けれど、間違いない。〈ロールプレイング〉で答え合わせをする必要すらありません。ボクの仮説が間違っているのであれば、そんな勿体ぶった悪役ムーブをする必要がない。そうでしょう?」

 

 

「――正解だ。俺は時間を止められる。手順なんて存在しない。思うだけで世界のすべてが俺の意のままになるんだよ」 

 

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