卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第306話 厨二病の極致

 お兄ちゃんさんの持つ人格の1つである『ボク』の推論を、帝王龍さんは肯定する。

 

「どういうことなんだ?テクニックと同じようにゲーム内スキルを発動する方法があるのか?」

 

 問いかけたのは新しいフォルダさん。確かに【黄金の才(ユニークスキル)】である【『クロノス』】の保持者が時間を停止させることができるのであれば、そう考えるほうが自然だ。

 

 しかし、

 

「悪ィがそうじゃねェ……いや、正確に言えばゲームが関わってると言えなくも無いが、【黄金の才(ユニークスキル)】はあくまでシステムに沿ったモノだ。俺が使うのは恐らく原理も結果も異なる」

 

 もしスキルを模倣するだけで時間が止められるなら、そんな重大なスキルを【黄金の才(ユニークスキル)】という限られた存在への配布に留める意味がない。

 

 もちろん【『クロノス』】が一般プレイヤーに配布されてしまえばゲーム自体が成り立たなくなってしまうのは間違いないけれど、例えばゲーム外に『アシストソース』として配布することもできるし、やりようはいくらでもある。

 

 だからこそ、帝王龍さんが時間を止めることができるという話にボクは驚きを隠せなかった。

 

 一方帝王龍さんは「なんて言えばいいかわかんねェが……」と前置きして、言葉を選びつつぽつりぽつりと語りだす。

 

「【『クロノス』】を【フォッダー】で初めて使った時、俺は止まった世界を見て、その圧倒的な力に感動したんだ」

 

「たった1人の単なるプレイヤーがゲーム全体を左右する力を得たことで、世界のすべてを支配できたかのような全能感に陥った」

 

 当時の帝王龍さんは【『クロノス』】がプレイヤーに迷惑を掛けてしまうことなど考えもしなかったらしい。「今となっては黒歴史だがな」と自嘲しつつも話を続ける。

 

「それで精神が昂ぶっちまってな。もしかしたら現実でも止められるんじゃないか?なんて思ったんだ。いや、思ったどころじゃねェ。そんな()()()()()()。そうして家の外に出て高らかに叫んだ。【『クロノス』】……ってな」

 

 無茶苦茶にもほどがある。厨二病でも本気でそこまで考えることはなかなか無いだろう。キャラクターの技なんかを真似することはあるかも知れない。けれど、本気でそんな技を使えるとまでは普通は考えない。でも――この話の流れから考えれば結果は……。

 

「今思えば気が狂っていたとしか思えないが……現実として()()()()()()()。理由はわからねェ。他の【黄金の才(ユニークスキル)】持ちにもそういうことがあるのかと思って探りを入れたが、そんなことはないんだろう? 」さんよ」

 

「……【『オネイロス』】を現実でつかうなんてできないよ。【黄金の才(ユニークスキル)】だからってことじゃないとおもう」

 

 帝王龍さんの衝撃の告白に、」さんも目をぱちくりさせて驚いていたけれど、やがて自分が問いかけられたことに気づいて返事をした。

 

 猫姫さんにも聞いてみないとわからないけれど、少なくとも【黄金の才(ユニークスキル)】だから現実でも能力が使えるようになるというわけでもないらしい。

 

 」さん以外も帝王龍さんの話をいまいち信じきれない……というより、情報が少なすぎて判断しきれないらしい。様々な質問を各々が帝王龍さんに投げかけているけれど「知らん」「わからん」「わからんけどできる」と答えにもなっていない返事しか返ってこない。

 

 帝王龍さんが時間を止められるというのは事実だとしても……なぜ止められるのか、その理屈は帝王龍さん自身にもまるでわかっていないようだ。

 

「そうなんですか……【黄金の才(ユニークスキル)】持ちは現実(リアル)でも能力を使えるのだと推測していたのだけど、帝王龍さんだけだったんですね。当てが外れてしまったかもしれません……」

 

 しょんぼりとうなだれるお兄ちゃんさん。お兄系の中にいる『ボク』は【『オネイロス』】もまた何らかの形で現実において行使できるのではないか?と踏んでいたのだろう。

 

 ゲームを自由自在にログイン・ログアウトできる【『オネイロス』】が現実において行使できるとしたら、それは次元の壁を突き破る重大な鍵になるのは間違いない。だからこそ時間に介入できる【『クロノス』】と共に期待していたのだろうけど、そううまくはいかなかった。

 

「私もユーキにシステムデータを見せてもらったことがあるけれど、【黄金の才(ユニークスキル)】は正真正銘のただのスキルよ。ゲーム内のシステムに応じた効果にしか影響を及ぼせない。逆に、それで本当に時間が止められるものならぜひ見てみたいものね?」

 

 【女神】による皮肉交じりの提言に帝王龍さんは答える。

 

「わかった……。やってみせよう。()()()

 

 帝王龍さんが言葉とともに腕を【女神】に向け、宣告する。その瞬間、世界の動きが――止まらない。少なくとも【『クロノス』】のように観測できる世界の停止は発生しない。

 

 当然ながら止まった時間を観測できるようでは真の意味で世界が止まったということはできないけれど、観測できなければ世界を止められるという証明にはならないのでは? 一瞬そう思ったけれど……違う。止まっている。 

 

 【女神】様が止まっている。

 

 まるで精巧に形作られた彫像のように、ぴたりと動きを停止する【女神】。

 

 即座に《『心眼』》で解析を試みたけれど、何もわからない。特殊な力が掛かっているわけでもなく、ただただ全ての道理を無視して【女神】を形作る量子の活動すべてが停止している。

 

「止められる対象は自由なんですか?」

 

「そうだな。この世界を全て止めることもできるし、逆にプレイヤーだけを止めることもできる。一説には実際に時間を止めると自転の影響でふっ飛ばされるなんて話も聞いたことはあるが……俺はそういった経験をしたことはない。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()……」

 

 やがて【女神】の時間停止が終了し、彼女は再び動き始める。本人の主観では止まったという自覚がないので「何も起こらないじゃない!」と怒っているけれど、それ以外の人々はたった今、時間停止の力を目の当たりにした。

 

「もしかして、」もほんとうはそういうことできるのかな?うーん……えいっ!」

 

 【黄金の才(ユニークスキル)】保持者である」さんもたった今の現象を見て同じように何かを試そうと念を込めているけれど、何も起こらない。

 

 時間の停止は帝王龍さんだけの固有能力……?

 

「すいません、〈ロールプレイング〉で視点を見させてもらっても大丈夫ですか?」

 

「あぁ、構わねェ」

 

 承諾を得てから〈ロールプレイング〉を発動させ、【女神】を止めた瞬間の記憶を再現する。

 

 そこから読み取れたのは……。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()、そんな()()()()()だけだった。

 

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