卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第308話 TRPG

「とがみん!どこにいるんですか!?最新の"ログ"は!?」

 

「……読み上げるわね『わたしとがみん、今あなたのうしろにいるの。なんてね♥荒罹崇も灑智も気づいてくれないのかなー。そんなことを考えながらふよふよと自宅を飛び回りつつみんなの活動を眺めている。わたしを助けようと頑張ってくれているのはわかるけど、こんな近くにいるのになー。……あれ?今もしかして見てる?いえーい♥見てるー?』……何よコレ」

 

 ……後半の"ログ"は、リアルタイムで『VRステーション2』を経由して【フォッダー】の中継を見ているということだろう。

 

 なんというか、あまりにも脳天気な内容の"システムログ"に安堵を通り越して呆れ返る。……そうか、無事だったんだね。

 

 散々呆れ返った後、改めてとがみんの無事を実感して……なぜだか瞳がじわっとうるんでいく。

 

「よかった……ちゃんといるんですね」

 

 彼女の存在に確証を得た瞬間、ボクに酷似した声が脳に響き渡る――。

 

 

(今なら行けそうかも?またちょっとお邪魔させてもらうね、荒罹崇)

 

 

 瞬間、ボクの身体に何やら『異物』が入り込む感覚がして……すぐにそれを『自分自身』として受け入れる。

 

 ()()はふわふわとした優しい温もりとなってボクを包み込んでいき――やがてボクらは1つになった。

 

「おかえりなさい、とがみん」

 

(ただいま♥荒罹崇はわたしがいないとドジっ子だから心配してたよ?)

 

 何言ってるんですか。ボクほどのぱーふぇくとな存在は他にいませんよ!

 

「もしかして、とがみんいるのー!?卍さん、挨拶させてー!」

 

「いるよー。荒罹崇が心配で戻ってきちゃった♥」

 

 "作者"にたどり着くための手段が見つかったわけではない。けれど、とがみんがいれば百人力!不思議なやる気と自信、そして全能感が溢れてくる。

 

 なんの当ても方針もないけれど、それでも2人なら世界をぶち破れる!

 

 ボクは【フォッダー】世界をぶち破るが如き勢いで拳を強く突き上げた。

 

 瞬間、それに合わせてとがみんが文章を紡いでいく。

 

 

 

 ー荒罹崇が勢いよく拳を振り上げた途端、【グレイブウッド】の【女神】の空間に僅かなヒビが入るー

 

 

「……え?」

 

 とがみんが言葉を紡ぐと、【グレイブウッド】の空にヒビのようなモノが現れる。まるで彼女の表現に世界が従ったかのように――。

 

「やっぱりだね。ずっと外から見てて考えてたんだ♥帝王龍さんがどうやって時間を止めたのか、どうして帝王龍さんの思い通りに世界が歪むのか」

 

 

 ――たった今の現象を見てすべてを理解した。この世界の法則・仕組み・ルール・システム。どう呼ぶのが適切かはわからないけれど……たった今、ボクは真の"全能"に至った。

 

「なにあのヒビ!?」

 

「卍さんに合わせて発生したように見えたのです……」

 

 結論に達してから思い返せば、既に大きなヒントがあった。『アクタニア』だ。

 

 あの人は他者の主観を起点に世界を改竄する能力を持っていた。原理は殆ど不明で、一種の催眠のような何かだとボクは思っていたけれど、今ならその仕組みがわかる。

 

 

 これらの能力の根源は"システムログ"だ。知的存在すべてが持つありとあらゆる行動・思考のログデータ。この世界で起きた出来事は、生き物の主観という視点を通じて"システムログ"に記載されていく。

 

 

 それなら、"システムログ"に思考を通じて文章を紡げばどういった結果を及ぼすだろうか?

 

 

 【フォッダー】をプレイしてきて得た様々な戦いの経験。その原点にボクは立ち返る。

 

 

 言の葉を紡ぐことで全てを為す。それがこの"ゲーム"の原点――"TRPG"!

 

 

 手のひらを天に翳し、ボクは宣言する。

 

「壊せ!」

 

 ボクの宣言により【グレイブウッド】の空はガラスが割れるように粉々に砕け散り、上空には【フォッダー】ではない別の世界の光景が映り込む。

 

 当然【A−YS】でもないし、落書きのようなドラゴンがいた世界でもない。眼前に広がる壮大な世界は現実世界。

 

 全ての道理を無視してこじ開けられた上層への扉。ボクは勢いよく空へ飛び立ち、光の速度でその扉を潜り抜ける。

 

 そして、たどり着いた先は……現実世界のボクの部屋。背後には『VRステーション2』が設置されており、その中では現実のボクが目を閉じて【フォッダー】の世界にダイブしていた。

 

「灑智、ただいま!」

 

「おかえりなさい。お姉様――そして、とがみん」

 

「ただいまー。それじゃあ、さっそく行こっか♥」

 

「ですね!」

 

 【フォッダー】というゲーム世界を打ち破り、現実の世界へ飛び出したボク。既に要領は掴んだ。このまま"作者"の下へひとっ飛び!

 

 次元の壁を粉微塵に突き破り、上へ上へ……より高い次元へ!光の速度で《『位階上昇(アセンション)』》を繰り返し、上位の権限(パーミッション)を獲得し、ボクは"ディレクトリ"を遡る。

 

 細かい理屈は必要ない。ただ思うがままに言の葉を紡ぐだけで、全ての道理を覆し、突き進む。

 

 

 そして"ディレクトリ"の最上層、そこに"彼女"はいた。

 

 

「いらっしゃい、卍さん、とがみんさん。歓迎するよ!お菓子とか用意しちゃおっか?」

 

 

 "画面"という最後の次元を隔てた向こう側に、1人の少女がいる。

 

 "画面"の向こうには、病的なまでに無機質な真っ白い部屋があった。

 

 "画面"は小さな机の上に乗っているらしく、真っ白い髪色をした幼い女の子が頬杖をつきながらこちらをじーっと見つめている。

 

「……あなたが"作者"さんなんですか?」

 

「そうだよっ。私があなた達の創造主っ、つまり母親なの!崇めてね?」

 

 ボクの問いかけにニコニコとした笑みを浮かべ、きゅーとな返事をくれる"作者"さん。

 

「……まったく。母親ならロールバックなんてせず、この世界を見守っていればよかったのに。たとえこの世界が誰かに作られたもので、ゲームでしかなかったとしても……こんな形で脅かされさえしなければ、ボクらは平和に過ごすことができたのに」

 

「それはユーキちゃんが悪いんだけどなー?だってリセットした世界を観測してくるとは思わないじゃん?彼女がいなければ、君らは私のことを知らずに過ごせたのにね?」

 

 そして何も知らぬまま、いつの日か再び世界がリセットされる。

 

 確かに、知らなければこんなに怯えることも無かったのかもしれない。仮に時間を遡ったことを観測する者が存在しなかったのならば、ボクが焦り、悲しみ、絶望し、そして立ち上がることは無かった。

 

 いつの日か唐突に世界が消えてしまったとしても、悲しむ人は居ない(きえる)し被害者も居ない(きえる)

 

 

「でも、わたしは覚えてもらえてて嬉しかったなー♥」

 

 卍さんがわたしを……〈ロールプレイング〉で簡単に復元できる程度の存在に過ぎないわたしを、それでも必死に探してくれて。すごく嬉しかったんだよ。

 

 知らなかったら、この嬉しいって感情も味わえないもんね?

 

 

 まったく、恥ずかしいこと言っちゃってくれますね。まあいいですけど。

 

 

「知らないほうが良かったなんてボクは思いません。ボクたちの思い出・記憶・世界……好き勝手に消されちゃ困るんです。あなたを倒して、ユーキさんも、たくさんのボクも、新しいフォルダさんの装備も、ぜーんぶ取り返してみせますから!」

 

 

「――ふーん、どうやって?」

 

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