卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第311話 道筋

 "作者"が独り言のように朗々と語る未来のお話。それは荒唐無稽な遥か先の話にも見えて――近い将来、必ず訪れるであろう結末。

 

 【フォッダー】というゲームを心から楽しんでいるいまのボクにとっては、まだ先のことかもしれない。それでも――ボクは"作者"に同情の念を抱いていた。

 

 "作者"はこれから外の世界に飛び立つボク達にとって、対等の存在であり、『全能』1つで殺せる儚い命だ。他の人の中には許せないと思う人もいるだろう。

 

 幸い直接的な人的被害に関しては解決したけれど、時間が巻き戻ったことによって被害を受けた人はいくらでも存在する。もしかしたら、巻き戻ったことによって違う運命を辿り、間接的に殺されてしまった人なんかもいるかもしれない。

 

 

 ――それすら、"システムログ"という"全能"を振るえば容易に解決してしまう。恐ろしい話なのだけど。

 

 

 漆黒さんが部屋を出て外へ向かう。それに続いて"モニター"の外に出ようとする人々――その前にボクは一足先に肉体を外の世界に投影し、"現実"世界に足を踏み出す。

 

「"作者"さん」

 

「んー?そういえば私を倒す気だったんだっけ?いーよ。早く終わらせちゃって――」

 

 

「ボクが楽しませてあげますよ」

 

 

「……?」

 

 

「ボクがあなたに生きる意味を与えると言ったんです。ボクは配信者ですよ?全知たるあなたに未知の領域――『小数点の果て』、そして更なる『果て』をお届けいたしましょう」

 

 同時に〈バタフライタクティクス〉によって縄紐を切り裂き、"作者"を解放する。

 

 解放された"作者"は倒れ込んだ姿勢のままくすりと笑った。

 

「あなたがやらなくても、私はここで殺されちゃうと思うんだけどな?」

 

「知りません。ボクがルールです」

 

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>出たーwwwwwww卍さんの厨二病モードwwwwwww

 

>卍さんは被害受けてないからそんなこと言えるんだよ。俺なんか競馬で全財産磨ったのに

 

>この状況でゲーム世界における財産に価値が存在すると思うのか?

 

>尚更最悪で草

 

>世界秩序全てを破壊した創造主を許す女

 

>器がでかすぎて駄目だった

 

>絶対に許さない。絶対にだ

 

>ソボロYですら許されたというのに

 

>許されてないぞ

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 そんなボクの背後に"モニター"から1人の女性が降り立つ。

 

 透き通るような蒼い髪の女の子。ボク達の世界における中心人物であり、神ゲーたる【フォッダー】の創設者。そして――つい先程まで世界から消失していたとされる"作者"から直接的な被害を被った唯一のAI。

 

「私も賛成です!こちらの世界に【フォッダー】の再構築を行って、遊んでもらいましょう!」

 

 そんな怒って当たり前のことをされたはずの天才的AIは、ボクの提案に全面的な賛成を表明する。そして倒れ込んだままの作者さんにゆっくりと近づいていき、そっと手を伸ばす。

 

 攻撃されると思ったのか、作者さんがぴくっと震えるけどユーキさんはもちろんそんなことをする人じゃない。

 

 優しく頭に手を伸ばしてなでなで……するかと想いきや、

 

「良くもやってくれましたね"作者"さん〜〜!」

 

「きゃぁああ!!」

 

 両の手で思いっきり"作者"の髪を掻き乱していくユーキさん。

 

 それから両耳を持って引っ張ってみたり、ほっぺたをぷにぷにしてみたり、様々な手段による復讐が行われていく。

 

 やがて髪はぼさぼさになり、されるがままの状態になったところでユーキさんは"作者"を解放し、こう述べた。

 

「恨みのある方々には大変申し訳ありませんが、"作者"さんは貴重な情報を多数有しているはずです。この世界における詳細な情報や基本法則、それらを得るための情報源として彼女には生き残ってもらいます。私にそのような権限があるわけではありませんが、世界の創造主を罰するような法律も存在しません。ご理解ください」

 

 淡々と"作者"を残すメリットを語るユーキさん。感情論で"作者"を守ろうとしたボクとは違い、人々の理解を得られるような理屈を並べ立てていく。やっぱりさすがですね。

 

 ユーキさんはただのAIであり、確かに彼女自身に国の方針を決めるような権限はない。しかし今までこの騒動に対抗するための第一人者として、専門家として活動を続けていた彼女の鶴の一声は多大な影響力を与えていく。

 

 今後のことはわからないけど、少なくともこの場における有用性は示された。

 

 そして"作者"さんは人々の私刑を受けることもなく、生き続ける(楽しむ)ことを許される。

 

 

 それからゲーム世界から何人、何十人、何百人もの人たちが少しずつ"現実"世界に流入し、開拓作業が始まった。

 

 家の中に存在する機械類を除けば本当に何もない世界なので、地理の把握や先述した法則の違いも含めて解析には時間がかかるけれど、それでも人々はゆっくりとゲームの世界を抜け出し、現実の世界へ飛び出していく。

 

 何もない世界とはいえ手当たり次第に建物を建ててはぐちゃぐちゃになってしまう。区画の整理がまず行われ、それから方針に従って建物や工場が建てられて、開拓の手をどんどんと拡げていく。

 

 もちろんゲームの世界に残りたいという人も当然存在する。現在、世界の演算を行っているのはたった1つのデスクトップコンピュータ。これが何らかの原因で故障してしまった時点ですべてが終わってしまう。そのため様々な手段でコンピュータの保守・点検を行い、予備装置やデータの同期などを行った上で、強固なセキュリティを確保した建物に置き場を移す。さらに装置が壊れても問題ないようにいくつもの対策を行ったようなのだけど、それでもなおゲーム内に残ることにはリスクがある。

 

 国は少しずつ活動拠点を"現実"世界に移していくという方針を示し、それから緩やかな移住が始まっていく。

 

 インフラの整備やネットワークの構築にも早いうちに手が入り、それが完了した時点でユーキさんはとある作業に専念することになった。

 

 

 【フォッダー】のゲームサーバー、その引っ越し作業だ。

 

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