卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第312話 そして始まる

「みなさんお久しぶりですー!きゅーてくちゃんねるへようこそ!ぱちぱちぱちぱち!」

 

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>きたあああああああああ!!!

 

>卍さん待ってた

 

>うおおおおおおお!!!!

 

>おまえらいつもの辛辣なコメントはどうしたんだよ

 

>ツンデレなんだから仕方ないだろ

 

>チャンネル登録しました!!

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 現実世界への移行が完了し、ついに【フォッダー】はサービスを再開した。ゲームデータも再びロールバックされ、時間が戻る直前の最新データと、戻った後のデータが統合された状態になっている。

 

 例のコンピュータから拾い集めた情報で復元したものらしく、もしかしたら復元しきれていない可能性もあると運営は言っていたけれど、軽くステータスや装備を見た限りでは恐らく問題ない。

 

 【フォッダー】のサーバーは移行したけれど、人々の移行が完全に完了したわけではない。とはいえ現状はゲーム世界からでも現実世界からでも同じ【フォッダー】のサーバーにログインできるようになっており、世界情勢の混乱を除けば従来と同じようにこのゲームを遊ぶことができる。

 

 ただそれはあくまで()()()()()()()()というだけであって、今までのプレイヤーみんなが再びこのゲームをプレイしてくれるというわけではない。

 

 なぜなら、このゲームのお題目として掲げられていた優勝賞金1000億円が、現在の情勢ではあまりにも価値が不安定すぎるからだ。

 

 今はゲーム世界と現実世界……2つの世界が存在しているわけだけど、両世界において通貨の価値は大きく異なる。その上で現状、どちらの世界でもまともに通貨制度が機能しているとは言えない状況だ。

 

 なにせ今まで使っていたお金がいわゆる仮想的なゲーム内通貨と化してしまい、しかもちょっとデータを弄れば無限に増殖できる程度の代物になってしまったのだから仕方ない。

 

 だからといって、新しい現実世界の通貨が機能するかというと、そんなことはない。具体的にデータを弄って増殖させるなんてことは流石にできないけれど、〈バタフライタクティクス〉が使える時点でその気になればたいていのものは自分で創造できてしまう。

 

 マシンのプログラミングや料理の追求となると話は別だけど、原料を好きに加工したり、別のものに作り替えたりする程度なら個人レベルでも簡単にできる単純作業だ。これによって物の価値は従来とはまるで別物になった。

 

 このような世界において、1000億円に今までと同じ価値はない。"作者"さんの言っていた『果て』の世界というものが一体どういったものなのか、身に沁みて理解できた気がする。

 

 そんな世紀末的状況下であってもやはりゲームは一定の人気がある。仮に技術的に『果て』の世界に達していたとしても、娯楽は遊び尽くされてはいない。ただし、従来までのゲームが()()()()()()()()()()()()()()()()()()であったのに対して、現状のゲームは()()()()()()()()()()()()()()()()()()という印象になっているのは否定できないところがあるのだけど。

 

 そういう意味では【フォッダー】は行動とルールによる縛りが極めて少ないゲームと言えるかもしれませんね。しかし【フォッダー】は以前と比べるとプレイヤー数を大きく減らしているようで、今までのように一大人気(?)ゲームとしての地位を保ち続けることはできなかった。かのユーキさんが提唱した神ゲーに値するゲームの条件である『利益』が大きく損なわれたからだ。

 

 それでもプレイしている人が残っているというのは嬉しいことなのだけど……。なぜだか道行くプレイヤーたちの傾向が違う気がする。

 

「あちらに見える集団は研究者の【ギルド】らしいですね。【フォッダー】を用いれば【モーションアシスト】によって効率のいい研究ができるのだとか。そしてあちらは料理研究会。美味しいものを作って美味しくいただくための【ギルド】なのだとか。ボクの【ギルド】以外にも対抗勢力が現れたのは嬉しいことですが、ちょっと趣が違う感じですね」

 

 周囲を観察しながら配信前に集めていた情報を軽くまとめていく。配信者としては本番時だけではなく、スムーズに配信を進行するための事前の情報収集が欠かせないのだ。

 

「でも、そういえば【モーションアシスト】は〈魔導〉の特殊性を利用して作られたシステムでしたよね。〈魔導〉はボクらのゲーム世界に"作者"さんが追加した機能の筈ですから同じ仕組みでは動作できないと思うんですけど、どうなんでしょう?」

 

「えっ、卍さん知らないの?普通に現実世界でも〈魔導〉使えるよ♥」

 

「えっ、ちょっと待ってくださいよ。さんざん今まで考察してきたじゃないですか。〈魔導〉はまるで誰かが後から追加したゲームのスキルのようにしか見えないって」

 

 散々そう言われてきましたよね?伏線が貼られてましたよね?

 

「使えるものは使えるんだから仕方ないよね♥」

 

「……まさか、ここよりさらに上層にこのゲームをプレイしている人がいたりなんてしませんよね?」

 

「さあ?」

 

「……考えないことにしておきましょう。久々に【フォッダー】にこれたので、今日はまったり遊びましょうか!ちなみにアップデートもされてるんですよー」

 

 アップデートされた割には利用者が激減しているのが非常に悲しい問題なのだけど、まだまだ世界情勢は大荒れだから仕方ない。そんな大変な時にこの配信を見てくれるみなさんのためにも、今日は自分が楽しむと同時にみなさんを楽しませていく!それが配信者としての役目でしょ!

 

 【フォッダー】の公式ページを思念入力でささっと開き、アップデートのページを表示させて視聴者に提示する。

 

「まず新スキル追加。まだ見てないですけど炎属性スキルがあるといいですね。それから新クエスト追加。中には【願いの石】がもらえるクエストもあると書いてあります。新マップはないみたいですね。前回のアップデートと比べるとややボリュームが少なめかもしれません。ただ、対人フォーマットに【転生杯】ってものが追加されてるみたいですね。これはとがみんみたいにモンスターのアバターで戦うレギュなのかな?」

 

 『異形』の人みたいな素で人間のアバターじゃない人も【転生】システムを経由しなければ参加できないらしい。ボクの周りでこの機能を使ってるのは、とがみんと明日香さんくらいですし、テコ入れとして実装されたのかな。

 

 他にもごちゃごちゃと更新情報が並んでいるけれど、配信でわざわざ着目することじゃないね。するーっと読み飛ばしていく。そんなこんなでやがてページの一番下までたどり着いたのだけど……。

 

 

・総額賞金1000億円の世界大会について、詳細が決定しました。

 

 

「おや?」

 

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