卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第314話 地獄絵図

「新しいフォルダさん、こんにちはー!」

 

「久しぶり、2人とも。元気だったかい?」

 

「超元気ですよ!【フォッダー】が再開されるまではあり余る元気をどこに使おうかと悩んでいたくらいでした!」

 

「なんかおうちで無駄にぴょんぴょん跳ねてたよねー♥何してるのかと思ってたよ♥」

 

 あり余る元気を放出するため、無意味にジャンプしまくってました。傍から見たら確かに異常ですね!

 

「それはよかった――で、本題なのだけど……」

 

「えぇ、わかってますよ――()()ですよね?」

 

「もったいぶらないでくれ!さあ早く!」

 

 一種の薬物患者みたいな言動で()()を催促し始める新しいフォルダさん。危なげな人にも見えるけれど、()()は別に危険なものでも何でもない。

 

「はい、【ジョーカー】×3の水着です」

 

「うおおおおおおお!!!!!!!」

 

 水着を手渡すと新しいフォルダさんは速攻で【ストレージ】にしまい込み、【メニュー】から装備変更を行う。そして女性用の水着を堂々と装備した究極のガチ勢がここに誕生した。

 

 同時に【ジョーカー】×2がセットされたハンマーも装備し、謎のポーズでアピールし始めた。撮影してほしそうなので〈ストリームアイ〉に映してあげようとしたが、みるみるうちに視聴者数が下降していったのでカメラを逸らした。

 

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>過去最悪のガチ勢で草

 

>やめろ     やめろ

 

>ジョーカー5つで好きなスキルを選べるとかこれもう最強だろ

 

>絵面だけで相手にデバフ掛けられそう

 

>こわい

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「まあ、あえて見た目に突っ込みを入れることはしませんが、新しいフォルダさんはまだ装備厳選を続けるんですか?」

 

「服と武器以外にもいくらでも厳選対象はあるからね。けれど、そろそろ俺も戦闘に出てもいいかなと思うよ」

 

「ついに延々と装備厳選をしていた新しいフォルダさんが戦闘を……!狙うは例の大会ですね?」

 

「大会には出ないけどね」

 

「えっ」

 

「俺は今度の【転生杯】に出るんだ。たまたまだけど、そのために強いモンスターの【カード】も確保してある」

 

 そう言って【ストレージ】から取り出して見せてくれたのは――【ヒュマデサタン】のカード!?

 

 正規シナリオにおいてラスボスを担当する種族人間の魔王、【ヒュマデサタン】。明らかに典型的な悪役だけど和解ルートなんてのもあり、現在【フォッダー】をプレイしているおおよその人はそちらのルートを進んでいると思う。

 

「しかしそんなぽんぽん出るもんじゃないでしょう。一体何人の【ヒュマデサタン】を虐殺したんですか?」

 

「〘リアルステーション〙と【マクロ】の合わせ技で余裕だったからね。時間はかかったけど大変じゃなかったよ」

 

 【ヒュマデサタン】かわいそう。

 

「でも別に転生しても大会出られるでしょ?出ようよー♥」

 

「でも1000億円いらないし……」

 

「まず百歩譲って大会は出てもいいけど、1000億円がいらないんですよね。贈与の際に余計なやり取りとかありそうで……。腐ってもお金ですから」

 

「わかる。賞金なしなら出てたと思うよ」

 

 いらないを通り越して、ない方がマシという領域に達してしまった。【フォッダー】はなんだかんだ1000億円のネームバリュー一点特化で初期の人気を稼いでいったゲームなので、世界の危機への対抗策というメリットも含めて、大ヒットした理由が瓦解してしまっている。

 

 それでも新しいフォルダさんはなんだかんだゲームを続けてくれているのが嬉しいですね。お友達リストにも現在ログイン中の人が表示されているし、完全にオワコンになったわけでもないようだ。

 

 さて、そんな会話を続けながらも新しいフォルダさんは新たな装備の加工準備をしているらしい。この分では、結局延々と装備を作り続けていそうですね。

 

 そんな生産の行方を観察していると、新しいフォルダさんがとあるアイテムを取り出した。

 

「えっ?」

 

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>草

 

>そりゃそうなるわ

 

>ここまでの会話全部巧妙な伏線で草

 

>フォッダー史における最悪の無駄遣いやめろ

 

>正規の利用方法のほうが間違いなく無駄遣いなんだよなあ

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 その発想はなかった。新しいフォルダさんが取り出したアイテムを見て、これから生まれるであろう装備への期待が高まっていく。

 

 なにせこのゲームにおける重要アイテム、()()()()()()()()()()使()()というのだから。

 

 そのレアリティは並み居る素材を超越する最高クラスのアイテム。イベントで確定入手できることもあり、そこそこ出回ってはいるけれど、それでも参加条件のイベントアイテムを加工しようなんて考える人はなかなかいなかっただろう。

 

 発想自体は生産系のプレイヤーなら出てくるかもしれないけど、それでも出場枠に必要な【願いの石】を消費するのはかなりリスクがある行動だ。それこそ出場条件を満たした上で余ったら……といったところか。

 

 さて、そんな思考が過ぎっている間にも生産が始まる。最高品質の素材を使うのにもかかわらず、加工方法はランダムガチャ!さすがは新しいフォルダさん!

 

「さあいくよ!」

 

 掛け声とともに新しいフォルダさんがメニューからガチャボタンをタップする。

 

 すると一瞬にして【願いの石】の形が変形していき、キラキラと七色に輝く麦わら帽子が生まれた。

 

 石を加工したにもかかわらず、麦わら帽子が生成される……。非常に突っ込みたいところだけれど、ランダムだから仕方ない。むしろ既存の水着や武器と重複する装備ジャンルじゃない分だけ運がいい。けど問題は効果だ。

 

 新しいフォルダさんは完成した帽子を【ストレージ】にしまい込み、効果を確認する。ついでにボク達にもその効果を見せてくれた。

 

【魂の共有】

[パッシブ][スイッチ]

効果:[ソウルコネクト]状態の[味方]が持つ[アクティブスキル]を一時的に[獲得]する。

 

「うわぁ……。【シャーマン】の受動(パッシブ)……」

 

「【ソウルコネクト】状態って【ソウルコネクト】がないとならないよね……?装備効果としてはほぼ死んでるね……」

 

 ちなみに【ソウルコネクト】は精霊に対して付与(バフ)を掛けるスキルだ。つまり【魂の共有】は付与(バフ)を掛けた精霊の持つ能動(アクティブ)スキルを自分も使えるようになるという効果だ。

 

 精霊に職業(クラス)を獲得させられることを考えると、実質的に多くのアクティブを一瞬で獲得できるため、効果としては間違いなく強いのだけど、普通に【シャーマン】で覚えられるので意味がない。せいぜいスキルポイントが1つ分空くから、他の【シャーマン】スキル取れるねーといった程度。

 

 新しいフォルダさんは【ジョーカー】が山ほどあるから職業(クラス)チェンジしなくても必要なスキルを揃えられるのは確かだけど……。

 

 スキルとして強いのは間違いない。間違いないんだけど……。装備の汎用付与スキルは、その職業(クラス)に就いてなくても他の職業(クラス)の利点を拡張的に利用できるのが取り柄なのに……。

 

「さて、残りの【願いの石】は5個。次々作ってくよ」

 

 正気ですか?

 

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