卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第317話 ラスボス

「ボクが挑戦される側……?でもボクは最近だって神様に負けてますし、彼のほうがよっぽどの存在ですよ」

 

「神様ねぇ。俺はその配信を見てなかったから適当に言うけど……どうせ卍さんのことだ。『リベンジ』を果たしたんだろう?」

 

「……まあ、そうですね。ボクの性格としては『リベンジ』しなきゃ気が済みませんので」

 

 まるで見てきたみたいに言いますね。確かに最後はボクが神様を打ち倒したけれど……あれはまさに薄氷の上の戦いと呼ぶに相応しいものだった。

 

 普段の臨機応変な戦術は通用しないし、当たるのは限られた手段の攻撃だけ。しかも効果を発揮する攻撃も限られている以上、相手はそういった一部の攻撃にだけ対策を取ればいい。

 

 そしてその時に使ったテクニックは対戦相手どころか全プレイヤーに割れていて、同じ戦術は間違いなく二度とは通じない。

 

 あの時のボクは全能系のテクニックを縛っていたから、全力というわけじゃないけれど、少なくとも挑戦される側だなんてとても思えない。

 

 そう説明しようと思ったのだけど、もはや言葉にする必要はなかった。ボクの言いそうなことは〈ロールプレイング〉の機能に近い思考シミュレートで、すぐに予測できたらしい。

 

「とがみんさん、どう思う?」

 

「我ながら自己評価が低いというか、なんというか。それに意外とメンタルも弱いよね。【フォッダー】は意志が力を持つんじゃなかったのかな?」

 

「うっさいですね。普段はこんなもんですよ。いざという時に意識的に引き上げているんです」

 

 怒りマークの感情表現(エモート)を飛ばして遺憾の意を表明すると、とがみんがハートの感情表現(エモート)を飛ばして対抗する。2つの感情表現(エモート)がぶつかって相殺され、花火みたいなエフェクトが生じた。

 

「とにかく、だ。卍さん。君にはこれを提供しよう」

 

 そう言って【ストレージ】から取り出したのは……【願いの石】!?

 

「いやいや、受け取れませんよ!?」

 

「俺は出場分の【願いの石】は持ってるからね。足りてないんだろう?これを受け取って大会に出てもらうよ」

 

 ……おっさんは自分が出場する分の【願いの石】を確保しているというけれど、それこそ余った【願いの石】なら新しいフォルダさんみたいに装備の材料にするなり使い道はいくらでもあるはずだ。

 

 例に挙げた新しいフォルダさんは運ゲーで盛大に爆死したお方なので、そういった選択肢を取ったからといって優位に立てるとは限らないのだけど……それでもリソースとしての価値は未知数だ。運ゲーはともかくとして、他に使い道はいくらでも出てくるだろう。

 

 仮に大会に出ないとしても、非常に重要なアイテムだ。それをこんな簡単に手渡してくる。

 

 

 ――求められたなら応えなきゃいけませんよね?それが配信者ってものですから!

 

 

「いいでしょう。やってやりましょう!おっさん以外にどれだけの挑戦者がいるのかは知りませんが、ボクがみなさんを薙ぎ倒してみせますよ。視聴者のみなさんもまとめてかかってきなさい!大会で!」

 

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>盛 り 上 が っ て き ま し た

 

>チャンネル登録しました!!!!

 

>ついに卍さんがラスボスに君臨するらしい

 

>課金者を超えて、AIを超えて、神を超えて、作者を超えた先に出てくるただの配信者

 

>弱そう

 

>卍さん馬鹿にすんなよ??今までなんだかんだあんまり負けてないからな

 

>あんまり負けてない程度の実績でラスボスに君臨する女

 

>卍さんに勝つって言うほど小数点以下の可能性しかないか?

 

>なんだかんだ一般プレイヤーでも数%くらいは余裕でありそう

 

>卍さん「無限の試行を繰り返し、夢幻の夢を追い続け、数%のその果てで――!」

 

>可能性が数%あって無限に試行していいってマジ??

 

>おまえらあんまり卍さん馬鹿にすんなよ。90%以上の確率で対人に勝てるとか結構凄いんだからな!!

 

>なお、視聴者の95割はエアプなので勝ち目がないとする

 

>ここに来て勝率小数点以下説再浮上

 

>一般人を薙ぎ倒して勝率稼ぐ卍さん最低ですねチャンネル登録外します

 

>で、大会の種目どうなってんの?1on1?ダブル?サバイバル?

 

>願いの石は生産だけしてても手に入るってのが謳い文句なのに普通に1on1始まったら笑う

 

>逆にどうすんだよすごいアイテム生産しろみたいな企画で勝敗決まったら

 

>盛り上がりそう

 

>1000億掛かってたら絶対炎上案件だけど今ならアリだな

 

>俺は大会に出るからな。おまえらエアプとは違うんだ

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 凄まじい勢いで文字が流れていくコメント欄。中身を読むといつもどおりのコメントばかりだけど、ボクが出場することを決めただけでこの盛り上がりよう。

 

 ボクへの期待と言っていいのかは定かじゃないけれど、この大会には注目が集まっているんだ。

 

 それならボクが度肝を抜いてやらないといけない。

 

 おっさんの言うように、ボクへの挑戦者が集まってくるというのなら、ボクは当然のようにそれを打ち倒す。

 

 小数点のその果てなんて見せてやらない。絶対に勝って1000億円を獲得してやりますよ!

 

「ただし、【願いの石】は受け取りませんよ。最後の1個くらい、自分で集めますから」

 

「そうかい?二言はないね?当日に揃わなかったって言われても提供はしないよ?」

 

「当然ですよ!自分の力で出場権を得て、自分で優勝を決めてやりますよ!……まあ、ボクが出ることでみなさんも出場してくれるならの話なんですけど。実際、どうなんでしょう?ゆうたさんとか出てくれるんですかね?」

 

 あるいはAWPさんやああああさんも。ここまで盛り上がっといて、蓋を開けたら過疎大会で塩試合じゃ済まされませんよ?

 

「ゆうたさんなら出てくれそうだよね♥わたしも今から【願いの石】を集める予定だし」

 

「とがみんも出てくれるんですか?」

 

「でも【願いの石】が必ず手に入るクエストを全部こなした上であと2つ集めなきゃいけないから、間に合わなかったらごめんね♥」

 

「いやいや!とがみんは絶対出てください!視聴者に頼めば貢いでもらえますから!」

 

----

>最低過ぎて草

 

>卍さんはともかくとがみんなら貢いでもらえそう

 

>同一存在なのに扱われ方が全く違うとがみんさん

 

>とがみんはえっちだから仕方ない

 

>ただのうさぎさんなのに

 

>水着を着ているのに特になんとも思われない系某配信者

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「じゃあ今から早速集めに行くから。またねー♥」

 

 そう言い残すと、とがみんはうさみみをふりふりしながらボクたちの元を離れる。かわいい。

 

 さて、大会への出場を決めた以上、開催まで座してのんびり配信を続けているわけにはいかない。ボクも動くとしましょうか!

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