卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

327 / 542
第318話 燃えるしちゅえーしょん

「子虎ちゃんが準備をするというのなら俺もこんなところで雑談をしている暇はないね。トンズラさせてもらうとするよ」

 

 そう言い残して嵐のように去っていくおっさん。これは油断していると、いつの間にかとんでもない差をつけられてしまうかも……。

 

 ただ、準備をすると言ってもなんの準備をすればいいかはわからないんですよね。

 

 もちろん【願いの石】を手に入れるのは確定事項として、問題はその後。

 

 単純に考えれば戦闘に備えるべきなのだが、今回の大会は前提として生産系のプレイヤーでも優勝の目がある筈なんだ。

 

 生産系の活動をしているだけでも【願いの石】が手に入るチャンスがあるというのに、いざ大会が始まってみたら戦闘ガチ勢以外は生きる価値なし――そんなクソゲーがあるわけがない。いや、【フォッダー】は客観的に見るとクソゲーなのでそういったこともあるのかも知れないけど、ユーキさんはその辺の分別というか絶対に必要な調整は怠っていない節がある。

 

 そういった意味では戦闘系のスキルと生産系のスキルを併せ持っている現状のボクの(ビルド)は特殊な環境にも対応しやすいはずだ。【ドローイング】は汎用性も高く、装備ガチャとは違ってランダム性が存在しないため安定性も高い。

 

 と、ここまで考察した上で導き出される方針は2つ。どちらも達成する必要がある。

 

「戦闘の熟練と、生産の熟練。両方を高水準にしておくに越したことはありませんよね!」

 

----

>でも生産特化でも勝ちの目があると考えると、普通に特化したほうが有利かもしれないよね

----

 

「……なるほど、一理ありますね」

 

----

>速攻で論破されてやがる……

 

>生産系でも勝てる可能性がある大会なのに両方を求められちゃ敵わんわな

 

>でも単純にフォッダーの頂点を決めるなら両方極めてる人が強いわけだし……

 

>特化してる人が次々脱落して中途半端なエンジョイ勢が優勝しそう

 

>普通は無いと思いたいんだけどありえないと言えないのが恐ろしいところだ

 

>というか大会開催前に基本ルールを公開してないってどういうことやねん。イカれてんのか

 

>イカれてるぞ

----

 

「大会のルールを限られた情報から推測して準備を行う知性が求められるのかもしれないじゃないですか!!……なんて、本当にどうとでも考えられるのが恐ろしい」

 

 なにが正解なのかわからない。とりあえず戦闘経験を積んでおくことにしましょうか。

 

 ボクらは"作者"を打ち倒して世界を抜け出したわけだけど、その過程でいくつもの〈進化(エボルド)〉やテクニックの派生が起きている。日常の中で使えるテクニックというわけでもなく、【フォッダー】が稼働していなかった今までは練習や実践の機会もなかったけれど、間違いなく再び界隈の戦闘環境には大きな変化が起きているはずだ。

 

 というわけで早速【闘技場】へ見学にでも行こうかなとも思ったんだけど……。なんなら出てみてもいいかもしれないね?

 

 定期大会の開催日程を見ると、今日は【シングル杯】が行われる日らしい。ボクはなんの準備もしていないけれど、【フォッダー】自体が止まっていたのだから他のプレイヤーも同じ条件だろう。ここは出場して軽く優勝をもぎ取り、ラスボスとしてアピールしてしまいましょう!

 

 さっそく【闘技場】の扉を開き、試合会場へひとっ飛び。まだサービス再開直後で開催時刻には達していないけれど、そこそこのプレイヤーが集まっていた。

 

 どうやら大会の参加というよりも雑談用の場所としてこのエリアを利用しているらしい。どの場所からでも来られて、いつでも元の場所に戻れるわけだから、フレンド登録なんてしてないけどなんとなく集まりたいという時に活用されるのだろう。

 

 大会待ちの参加予定者もいるようだけど、まだまだ開催までに時間があるため、以前の【ダブル杯】よりは少ない。あるいは1000億円という神ゲーの根拠を失った【フォッダー】が求心力を失っているせいもあるだろうか。

 

 なんにせよまだ時間があるため、適当に流れてくるコメントに返信しながら雑談話を続けていく。知り合いがいればそちらに会いに行ってもいいかなとも思ったけど、今はまだいないようだ。恐らくゆうたさん辺りはそのうちくると思いますけどね。ログインしてはいるようですし。

 

----

>最新環境のフォッダーはどんな世紀末環境なんだろうな

 

>その気になれば矛盾操作もできるようになったからな。もうゲームスキルとかいらんわ

 

>そういえばこの前取得スキルとか関係なくフォッダーのスキルを使ってた気がするけどあれってまだできるの?

----

 

「ああ、【フォッダー】のスキルをテクニックに変換する技法ですか?あれは"システムログ"の改竄と同じレベルの身も蓋もない部類の技術ですけど、今の【フォッダー】は現実世界にあるからできない筈ですよ。"システムログ"も見えませんしね」

 

 "作者"と同じ次元に到達した以上、"作者"が世界を管理するために作り出したシステムである"システムログ"は存在しない筈だ。そしてあの技術は別次元の周波数――括弧を書き換えることによってゲームスキルである現象をゲームとは関係のない技術(テクニック)に落とし込むという理屈によって成り立っていた。

 

 つまり"作者"が自在に設定を変えて作り出した仮想的な世界だからこそできる正真正銘なんでもありのバグであって、今のボクたちがいる場所は紛れもない現実(にサーバーがある【フォッダー】)。

 

 この世界にはそんなゲームみたいなバグは無いんです!ほんとですよ!

 

 最近は時折"システムログ"ともまた違う変なものが見えたりするんですけど、この世界は現実なんです!

 

----

>フラグかな?

 

>全能も矛盾操作も現実で使えてるけどこれバグでしょ

 

>仕様だぞ

 

>なんだ仕様か

 

>マジでてっきり元の世界がゲームだから許されるクソ物理法則だと思ってたんだが

 

>逆にあの作者が追加した独自の物理法則ってあるの?

 

>魔導がゲームのスキルみたいだって話はなんだったの???

 

>私作者だから解説するけど魔導なんて無かったんだけど?君たちがこっちに実体化した時に魔力を持ち込んできちゃったんだよ

 

>作者はこんな所で油を売ってないでフォッダープレイしろ

----

 

「作者さんはボクが楽しませると宣言したから視聴勢でいいんですよ!……しかし、そうなんですね。〈魔導〉に関しては絶対ゲーム世界の独自仕様だと思ってたのに普通にこちらでも使えてびっくりしていたのですが……」

 

 こうして視聴者と仲良く話していると、大会の開催時刻になる。過疎り気味だと思っていたけれどさすがに大会となると人も集まるようで、観客席は人混みでごった返している。おっ、あちらには『ボク』がいますね。

 

「こんにちは、ボク!」

 

「おっ。本体さんですね。いつもお世話になっています!」

 

「いやいや、本体とかコピーとかそういう区別はやめましょうよ。アイデンティティが崩壊しかねませんよ?」

 

 『転式学園』の事件によって増殖した『ボク』、そのうちの1人のようですね。あの時から経済活動の支援などは行っていますけど、この人は早くから自立して活動している『ボク』で確か配信ではなく、てくにかるなプレイ動画を投稿することが多い人だったと思います。

 

「っていっても事実は事実ですからね。それにコピーが本体を超えようとする展開って――燃えるしちゅえーしょんだと思いません?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。