卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第321話 アイテムショップ、再び、再び、再び

 最終的にゆうたさんはブロック内で優勝した。『ボク』もまた、ゆうたさんとは別のブロックで優勝を果たしたらしい。

 

「『ボク』が優勝したということは……。つまり、ボクは凄いってことですよね!?」

 

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>チャンネル登録外しました

 

>最低のゴミ発言で草

 

>プライドとか無いんか???

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 そんな言い訳をして、いつものようにコメント欄を盛り上げていく。しかしボクとしてはやはりネタで盛り上がるのではなく、華麗な『たくてぃくす』とその勝利で沸かせていきたいところだ。

 

 大会も無事に終了し【闘技場】から参加者たちが抜け出していく。雑談を目的としたプレイヤーや、大会での戦いだけでは飽き足らずに個人的に対人戦を始めるプレイヤーなんかは残っているけれど、先程までの盛況ぶりと比べれば閑散とした状態だと言えるだろう。

 

 その後は優勝した『ボク』がボクのところにやってきて戦績を誇ったり、ゆうたさんに叱咤されたりしつつ、会場を後にした。

 

「……駄目ですね。今回のボクはキリトさんによる初見殺しで早々に敗退してしまいましたが、そもそも【フォッダー】というゲーム自体が初見殺しまみれのゲームです。〈トンネル避け〉レベルのテクニックが出てこようが初見で突破できなきゃいけない。そうでなきゃこのゲームは勝ち上がれない」

 

 キリトさんの剣技は攻防一体の汎用性が高い技ではあったものの、初見で対応することは不可能ではなかったはずだ。

 

 来るとわかっていれば〈トカゲのしっぽ避け〉でも躱せたし、知らなくても警戒していれば同じことが言える。

 

 【ソウルフレア】の火力だけで【オフセット】をぶち破れるという、そんな慢心と油断がそこにはあった。

 

「これからのボクは油断なんてしません!つまり無敵ですよ!」

 

 もちろん油断をしないなどと宣言したからといって本当に油断がなくなるかと言えばそんなことはない。

 

 しかし負けたときに反省して、さらなる強化を模索するのは大事なことだ。

 

「こうしてはいられません。久々の買い物回と洒落込みましょうか!」

 

 

「こんにちはー!新製品を見に来ましたー!」

 

「いらっしゃいませにゃん!是非是非見ていってくださいにゃん」

 

 アイテムショップに訪れると、猫ですさんはいつも通りににゃんにゃんと出迎えてくれた。

 

 とはいえこの前ボクが訪れたときと比べて、品揃えはあまり変わっていなさそうだ。まあ毎日のようにぽんぽんと新製品を開発しているわけはないですよね。

 

 それなら今まで目を向けていなかった製品にも着目しようと思って店の中を見て回る。やはり彼女は家具系の製品を作るのが好きなようで、特に目立った性能があるわけでもなさそうな普通のテーブルや椅子なんかが並んでいた。

 

 しかし当然ながら家具以外のアイテムも充実している。形状や材質の異なる小さな石が棚の上に陳列されている。一見すると石であること以外に統一性はないように見えるけれど、使い方は同じだ。

 

「これは〈テセウスの船〉で作られた複数の効果を持つ石ですか。しかし、効果としては無難ですね」

 

 石の下に書かれているエンチャント効果を1つ1つ見ていくけれど、使い勝手が良さそうなものはあまりない。〈テセウスの船〉は基本形として3つの効果が付随している。1つだけなら便利そうなスキルが付いているものもあるけど、他の2つも含めて有益な石というのはこの棚にはなさそうだ。

 

「そこそこ良い効果がついている石はすぐに売れちゃうんですにゃん」

 

 まあそりゃそうですよね。毎日ここに来てチェックしてたらいいアイテムと巡り会えるかもしれないけど、たまにしか来てませんし。

 

「良いアイテムとか販売するときは告知してくれたら急いで飛んでくるんですけどねー」

 

「一応告知はしていますにゃんよ?」

 

「そうなんですか?」

 

「アイテム宣伝用の【コネクション】があるんですにゃん。商人系のプレイヤーはもちろん、新製品の情報がほしいなら入っておいて損はないですにゃん」

 

 そう言って猫ですさんは【メニュー】を開き、【コネクション】の紹介ページをボクに見せてくれた。なるほど、そういうのがあったんですね。

 

 ちなみに【コネクション】とはゆるいつながりのチャットルームみたいなもので、誰でもいくつでも作成できる。

 

 今回の場合は商人が宣伝の書き込みをすることを目的としたチャットルームで、他にも以前にボクが活用していた【コールグループ】を利用するためのチャットや【フォッダー】となんら関わりのない話をする部屋もあったりする。

 

 パスワードをつけたりもできるけど、基本的には来るもの拒まず去るもの追わず。特に申請や申込みなんかも必要なく参加できるんですよね。

 

 しかし、そんな部屋があったんですね……。まったく知りませんでした。ボクもその【コネクション】に登録して宣伝をチェックできるようにしておきましょう。

 

 猫ですさんが見せてくれた【コネクション】のページから登録し、さっそく流れてくるチャットを見てみると、確かにいろんな宣伝が書き込まれていますね。過去のログを見る限りでは新しいフォルダさんも利用しているようです。

 

 そこから興味を惹かれるお店を吟味して、これから行ってみようかなーと思っていると、「はぁーにゃん」とため息をつく猫ですさん。

 

「どしたんですか?猫ですさん」

 

 普通にため息をつくなら、『にゃん』なんて語尾をわざわざ付けないだろう。そう考えると、ボクに聞いてほしいアピールだったのだろう。ボクはそういう視聴者さんや期待にはちゃんと答えますよ!

 

「最近は面白いアイテムの案がさっぱり浮かばなくて困ってるんですにゃん……確かに〈テセウスの船〉製のアイテムや〈ホームタクティクス〉用の家は売れるけど、そろそろなにか斬新な開発を行いたいんですにゃん」

 

 なるほど、猫ですさんはスランプ中でしたか。とはいえ新製品の開発をしていないわけではないようで、先程軽く見て回った限りでは例えばジェット噴射の機能が付いた車椅子なんていう面白いアイテムが展示されていたけれど……。残念ながら現環境ではジェット噴射なんて光速の下位互換ですからね。

 

 椅子に座って戦えれば自然回復の効力があるのでメリットはあるのだけど、かといって光速戦闘に対応できないのであればわざわざペナルティを背負って使用するほどの価値はないだろう。

 

「つまりボクがなにかアイディアを考えれば良いんですね?いいでしょう!爆売れ間違いなしの『ぱーふぇくと』な提案をしてみせます!」

 

「おねがいしますにゃん!」

 

 猫ですさんはにゃんにゃんと両手で猫を表現しながらお願いしてくる。お願いというよりはおねだりをしているようにしか見えないけれど、彼女はきゅーとなのでどんな硬派プレイヤーだろうとこれで陥落するに違いない。

 

 さて、猫ですさんのお願いに負けて新製品のアイディアを提供することになったけど、なにかあるかな?

 

 こういう新製品の開発は現状で不便な要素を改善できるアイテムが考えやすいのだけど、なにかあるかな?もちろん実現可能性も重視しないといけないですし、安請け合いした割には難易度が高い。

 

 自分がなにか思いついたときにお願いするならともかくとして、何もないところからアイディアをひねり出すのってこんなに難しいんですね……。

 

「視聴者のみなさんはなにかアイディアはありませんか?よろしくおねがいします!!」

 

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>丸投げじゃねーか

 

>俺達は下請けだから仕方ない

 

>利益の中抜き反対!!

 

>この案件の利益って何やねん。なにを中抜きされるんだ、

 

>猫ですさんの笑顔

 

>配信で見ろ定期

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 まったく、ボクが利益の中抜きなんてするはずがないでしょう!猫ですさんのきゅーとなシーンは余すところなく配信に収めますよ!

 

 そんな冗談はさておき。コメント欄の流れもいつもどおりただのジョークだったようで、ぽつりぽつりと改善してほしい要素や必要なアイテムの具体的な提案がぴょこぴょこと流れていく。

 

 その多くは5秒で考えたような絵空事だったり、逆に実用性皆無のネタ提案だったりもするけれど…ちょこちょこと良さそうな提案がいくつか上がってきている。ちょっと吟味してみましょうか?

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