卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第324話 くじ引き

 次の日、ボクは昨日の落ち込みが嘘のように意気揚々と【フォッダー】にログインしていた。ボクは落ち込みやすい性格だけど、立ち直りも早いのだ。

 

 猫ですさんがログインしていれば、懲りずにテクニックを考え、今度は【ホームタクティクス】を改善するような案を一緒に練ろうかと思ったのだけど、残念ながら今日はいないらしい。

 

 メッセージが届いているようなので確認してみると、今日は用事があってログインできないのだとか。

 

 ……ちょっとほっとした。恐るべき家具の概念をぶち壊す椅子を開発してしまったショックで寝込んでるなんて疑惑が頭の片隅にあったので、ただの用事のようで安心しました。

 

 彼女はなにやらこのゲームでは家具に拘っているようだけど、さすがに装備を椅子と言い張れるようになってしまったら、従来の椅子は需要がなくなってしまいますからね。ちょっと心配していたんです。

 

 しかし猫ですさんがいないのなら予定変更ですね。

 

 確かに強くなることは大事だ。

 

 しかしそれよりも絶対に重要なのは――。

 

「そう、【願いの石】が無いと本戦に出られないのです!」

 

 いくら【フォッダー】における最強のプレイヤーになったところで、【願いの石】が無ければ何も意味がない。

 

 よって今日の目標は【願いの石】を手に入れること!

 

 幸いにしてこの前のアップデート情報によると【願いの石】が手に入る新規のクエストが実装されたという旨が明記されている。あかりちゃんさんの攻略サイトでは既にどのクエストで【願いの石】が手に入るのか特定されているらしく、ボクはその情報どおりにクエストを攻略するだけでOKだ。

 

 それにしてもあかりちゃんさんの情報網は凄いですよね。噂によるとグループで情報を調べているらしいのだけど、【フォッダー】というゲームに関する貢献度としては最高峰と言える。以前はネット中のどこを見ても嘘しか書いてないような絶望的状況でしたからね。

 

 さらにあかりちゃんさんのサイトという信頼できる情報網が生まれたおかげで、以前のような【フォッダー】に関するデマもすぐに暴かれてしまう。結果として最近は【フォッダー】に関連するデマの数自体が大幅に減少しているようだ。

 

 自分のサイトのみならず界隈全体に影響を与える凄まじい配信者であることが伺える。……果たして配信者というカテゴリに収まるのか?というツッコミはさておくこととして。

 

「さてさて、【願いの石】の新しい入手方法はいくつか載っていますけど……どれがいいでしょうかね?」

 

 攻略情報をスクロールしながらどのクエストを達成しようかと吟味していく。普段は取れ高狙いで面白そうなクエストを選ぶボクだけど、今回は報酬だけが目当てですからね。面白そうなら大会の後に挑戦してみればいいだけの話で、今回はできるだけ簡単なクエストを達成していきたいところ。

 

 そして現在、攻略に載っている【願いの石】入手パターンのうち、ボクがまだ達成していないのは4つ存在しているようだ。

 

・条件を満たしたアイテムを作って納品する生産クエスト

・宝の地図を頼りに特定のクエストアイテムを掘り出しにいく冒険クエスト

・1日1回まで挑戦できる期間限定の宝くじイベント

・お金を集めて【願いの石】を購入できる施設

 

 どれも単純な戦闘系の内容ではなく、どちらかといえば戦闘以外を主軸とするプレイヤー向けのクエストのようですね。

 

 もちろんこれとは別にダンジョンにランダムで配置される【願いの石】や、植物を育てていると唐突に生えてくる【願いの石】なんかもあるんだけど、その辺はランダム要素が多分に含まれている。基本的にはこの4種のどれかを達成するのが良いと思う。まあ宝くじも運ゲーなのだけど。

 

 とりあえず宝くじは引いておいて損はない。【ダスター都市】に【願いの石】を購入できる施設があるそうなので、さっそく【ギルド】を経由して向かおう。【ダスター都市】にはボク達の経営している会社もあるので、ついでに様子も見ておかないとね。

 

 

 というわけで【ギルドリターン】を使って【ギルド】に戻り、宝くじ売り場へやってきた。

 

 1日1回わずかなお金で引けるようなので、そこそこの数のプレイヤーがくじを引きに集まってきているようだ。

 

 そして当然外れる人のほうが多い。ほとんどすべてのプレイヤーが外れるようなのだけど、さすがにこんなほぼノーリスクのくじ引きでそう簡単に【願いの石】が手に入るわけがないと、みんな理解しているので、くじを引いた後はノーリアクションで他の場所に向かっている。

 

「おっ!未鑑定装備が出た!」

 

「ほう、【願いの石】以外も出てくることがあるんですね」

 

 そうなると【願いの石】を集めきっている人も当然ながらここに引きに来ているわけだ。最近やや過疎の傾向にある【フォッダー】にしては随分な混み具合だと思っていたけれど、ログインしてきたプレイヤーみんながわざわざ引きに来るということであれば、この盛況さも理解できる。

 

「よし、社員君。今からくじを引いてきたまえ!」

 

「いやいや、NPCの社員は引いちゃ駄目なんですって」

 

「我が社の社員は100人。つまり毎日100回引けるぞ!!!」

 

「聞いてくださいよ〜」

 

 そんな感じでNPCに無茶振りをしている人もいれば、

 

「【願いの石】もう要らないのにでちゃった」

 

 などと、注目のレアアイテムが出たのに全く喜んでない人、

 

「はああああああっ……ちょいやあぁぁぁ……っキイィエエエエェエェ!!」

 

 などと掛け声をかけながらくじを引いている人など、やはり過疎ってしまったこのゲームをいまだに続けているようなプレイヤーはボクを除けば奇人変人であることに間違いはないようだ。

 

 そんな方々を尻目に巨大な白い箱のような物を目指してとことこと歩みを進める。

 

 白い箱の近くには同じようにプレイヤーが密集していて、思い思いの位置からずぼっと手を突っ込んで中から紙を引き抜いているように見える。

 

「この箱からくじが引けるんですね。さっそく試してみましょう!」

 

 一見すると手を入れる場所がないように見える。もしかして〈トンネル避け〉を経由して引く必要があるのかな?とは思ったのだけど、試しに手を伸ばしてみると外側の箱を突き抜けて手がすっぽりと中に入った。

 

 中には紙がたくさん入っているようで、2〜3枚くらい一気に取れないのかな?と思って試してみたけど、引き抜こうとした時点で紙がつっかえて出てこない。さすがにシステム的な対策は万全ですね。

 

 諦めてこれだと思う紙をがさごそと探りあてて引いてみる。【モーションアシスト】も含めて何もかも封じられているのでもう勘しかないけど、よしこいっ!【願いの石】!じゃなくても装備とかそういう奴!

 

 ずぼっと引き抜いてみると、感触で想像したとおりの小さな紙だった。紙にはでかでかと文字が書かれていて、それが賞品やらなにやらの内容を示しているらしい。

 

 さて、それではボクが引いた紙。そこに記されていた内容とは……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【ティッシュ】。

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