卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第328話 先客

「ごめんねー!!灑智ー!!!ボクが悪かったよー!」

 

 ダンジョンの更新履歴を読んでいくたびになんだかすっごく申し訳なくなって、思わず灑智に抱きついてしまう。灑智はよしよしとボクの頭をなでなでしながら、

 

「いいんですよ。だってついに今日!お姉様が私のダンジョンに挑んでくださるのですからっ!それに時間がかかった分、当初よりもダンジョンの完成度も上がっていますしっ!」

 

 そう優しくフォローしてくれる。ううっ……ボクは灑智にこんなに酷いことをしてしまったというのに、まるで天使のように優しい……。ボクの妹はきゅーとです……。

 

「……わかりました!では雨が降ろうが槍が降ろうが隕石が降ろうが、今日のボクは灑智のダンジョンを攻略しますよ!」

 

 仮に攻略できなくても徹夜で挑み続けます!そう固く決意を込めて、灑智の返事を聞かぬまま勢いよくポータルに足を踏み込む。その瞬間、周囲の景色がガラリと変わって……。

 

 気がつくとボクは灑智の作ったダンジョンの中にいた。

 

「うわぁ……きらきらしてて綺麗なダンジョンですね」

 

 一口にダンジョンと言っても実際にはいろいろなパターンのステージがあるけれど、ボクは【A−YS】のように無骨な壁と真四角のブロックで形作られた迷宮のようなものをまず最初に想像する。これはボクがこれまでプレイしてきたゲームによくある傾向であり、そもそもVRMMOにおいてこれに当てはまらないステージはどちらかというとダンジョンではなく『フィールド』であるという印象があるからだ。

 

 しかし灑智の作ったダンジョンはボクのそんな一方的な先入観とは正反対なように、ボクの視点で言うと『フィールド』のような世界が形成されている。

 

 そこは半透明な水晶のようなオブジェクトが無造作に配置された神秘的な空間。地面もまたきらきらと光を発する水晶で構築されていて、天井には大きなお月様が昇っている。エリア的には夜なのにもかかわらず、まるで真昼間のように明るい。【グレイブウッド】に少し似てますね。

 

 試しに近くの水晶を全能の力でこつんと小突いてみたけれど、ヒビ1つ入らない。どうやら更新履歴に書かれていた『オブジェクトが不壊』というのは事実らしい。

 

「【フォッダー】世界はもとからあるオブジェクトやら地形やらは破壊し放題なのに、プレイヤーが作ったアイテムやらダンジョンに限って壊れなくなりますよねー」

 

 【フォッダー】において絶対に壊れないアイテムといえば【ホーム】。武器やら防具もなんだかんだ言って対戦中には壊れてない節があるけれど、それはあくまでプレイヤーが装備しているからだ。実際にほとんどのアイテムは壊れるし、プレイヤーが装備している武器もたまには耐久値を回復してやらないと壊れてしまう。

 

 プレイヤーが作ったアイテムは壊れてしまったとしても元の形と効果を持ったアイテムに修復できるけど、何が言いたいかというと絶対に壊れないオブジェクトは極めて珍しいということだ。

 

「この水晶、どうにか持って帰れないんですかね?」

 

 灑智にはダンジョンを攻略すると宣言しておいて速攻横道に逸れているけれど、気になるものは仕方ない。こういう疑問はとことん気にしていかないと【フォッダー】は攻略できないのだ。

 

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>今ポータルの外で灑智ちゃんが配信じーっと見てるぞ

 

>卍さんが灑智ちゃんの作ったダンジョンを破壊しようとしてる!!

 

>地面から掘れないかな?

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「壊すんじゃなくて引っこ抜く感じですかね?……でも無理ですね。地面も水晶で作られているので『不壊』のようです」

 

 少なくともどうにか壊して持っていく手段は取れないみたい。長々と検証を続けていても仕方ありませんし、ダンジョンを進んでみましょう。

 

 無造作に置かれた水晶を避けつつ、ボクはダンジョンをとことこと進んでいく。どうやらここはインスタンスダンジョンではないらしく、少し先で他のプレイヤーさんが戦っているようですね。

 

 ボクが見つけたときには巨大な水晶のゴーレムが高々と掲げた右腕を勢いよく振り下ろす光景と、それをひらりとバックステッポで後方に下がりつつも弓矢を乱射し続ける【アーチャー】の姿だ。

 

 ぶんぶんと弓を上下に振り回しながら高速で矢を番えて【ダブルショット】を撃ち放っている。

 

「……正統派の【アーチャー】は本当に珍しいですね。ボクもそうですけど、【アーチャータクト】を活用したサブ【アーチャー】の方が多い印象ですから」

 

 ボクが見てきた例では帝王龍さんも恐らくはサブ【アーチャー】の(ビルド)を使っていた。今も同じ(ビルド)で戦っているのかは存じ上げないけれど……。少なくとも【アーチャー】という職業(クラス)は【フォッダー】でも下の方に位置する存在だと認識している。

 

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>メイジ、ナイト、サイキック、アイテムマスター辺りが使い勝手良すぎるんだよなぁ

 

>モンクも応援してます!!

 

>アプデで実装されたガンナーと役割が被ってるのに使用率で負けてるという

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 ただどうやらあのプレイヤーも【アーチャータクト】を使用していないわけではないらしい。ぶんぶんと弓を上下に振る動作がどうやら近接物理攻撃として判定されているらしく、【ダブルショット】の発動タイミングとは明らかに異なる状況で、通常の矢とはあからさまに違う物体が射出されているのがわかる。

 

【アーチャータクト】

[パッシブ][スイッチ]

効果:[近接][攻撃][物理][発動時]に以下の[効果]を[発動]する。

[投射][攻撃][物理][矢]

効果:[対象]に[ダメージ]を与える。

 

「斧にハンマー、それから槍……【アーチャータクト】で武器を射出しているようですね」

 

 それらの武器にはそれぞれスキル効果が付いているようで、ゴーレムに命中するたびにどかんどかんと小規模な爆発物のようなエフェクトを放ちながら追加ダメージを与えている。……いや、あの爆発自体が武器の与えるダメージの本体なのか?

 

 ゲージを見ていると違和感がすごい。怒涛の勢いで武器がゴーレムに命中し、命中するたびに火力が増加していく。同じ攻撃であるはずなのに一撃の威力がどんどん跳ね上がっているのが伺える。なんらかの装備効果だろうか。

 

 そうしてボクがのほほんと戦いを観察していると、瞬く間にゴーレムはHPを全損させて沈んでいった。

 

 面白そうなプレイヤーですね。話を聞いてみましょうか? 

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