卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第332話 未鑑定の消耗品

 ぷにりんさんは【アイズ・ファミリア】をボクの手助けなしに単独で討伐した。ボクは何もしていないのに、【パーティ】を組んでいるボクの【ストレージ】には自動的にアイテムが飛んでくる。

 

 リザルトを見てみると、先程もあった【アイズ・ファミリアのぬいぐるみ】の他にもいくつかのアイテムを落とすようで、魔法の力が込められた『魔眼』という説明文が書かれたアイテムや、普通のお餅なんかもドロップアイテムに追加されている。

 

 まあこの辺は気が向いたときにいろいろいじってみようと思うんだけど、他にも気になるアイテムがあって……。

 

「アイズ・ファミリアの【カード】ですか。このモンスターは灑智が作ったこのダンジョン特有のオリジナルモンスターだと認識していたのですが、【カード】が存在するんですね」

 

 【カード】を取り出してまじまじ眺めてみると、やっぱりすごく可愛い。

 

 【カード】を突いてみるとぷにっという感触とともに絵の中の【アイズ・ファミリア】が少しへっこむ。つまんでびよーんと引っ張ると、少しだけ【カード】の外側まで身体を引っ張れた。そのまま取り出すことはできないみたいだけど、なんだか楽しいですね。

 

 【カード】の中のアイズ・ファミリアはぐいっと引っ張られても特に嫌がる様子は見せず、ボクの顔をじーっと見つめている。かわいい。

 

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>HP減ってんぞ、見えてるか?

 

>反撃を食らってて笑う

 

>絶対嫌がってるだろ

 

>単体だと減り方は地味だな。やっぱり数の暴力で戦う系か

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「えっ、【カード】の中からも魔眼が撃てるんですか?ごめんなさい、【アイズ・ファミリア】さん」

 

 ぺこぺこと【カード】の前で謝罪すると、HPの減少が止まったので、【ストレージ】にいったんしまい直すことにした。後で改めて謝ろう。……この【カード】の中でも普通に動いて反応してくれるって、良いシステムですよね。戦闘とか関係なく、いろいろ集めたくなっちゃいますね。

 

 この辺りには【アイズ・ファミリア】と水晶のゴーレム、それから8本足のたこさんが主に生息するようだが、基本的に苦戦はしない。更新情報によるとまだまだ2層、3層と続くようなので最初から高難易度の作りにはなっていないのだろう。

 

 と言っても逆に難易度が低いというわけでもない。たこさんは8本の足それぞれが独立したモンスターで、かつ再詠唱時間(リキャストタイム)が著しく短い回復スキルを多用する。蘇生スキルすらも行使可能らしく、一度にすべての足を破壊しないとすぐに復活してしまう地味にいやらしいモンスターだ。

 

 単独で出てくる分には火力も低いし簡単に潰せるのだけど、ほかのモンスターとセットで現れるとすごく厄介。たこ自身だけでなく、周囲のモンスターまで蘇生するので真っ先に仕留めないと話が進まない。

 

 こいつとアイズ・ファミリアが組んだ瞬間なんかは地獄そのもので、普段は遠くからひょっこりのぞき込んでくるだけのはずの彼らが身を挺してたこさんを守りに前線へ飛び出してくる。

 

 そして仕留めきらない限りは実質的に常時こちらにダメージを与え続けてくるので、回復にリソースを回さざるを得ない。一手でも回復を挟んだ時点で向こうの布陣は完全に復活してしまうので、速攻戦術が求められる。

 

 なので一度コイツと相対してからは【イグニッション】を常に重ねておき、開幕と同時に【フルバーニング】で仕留めることにしている。

 

 ぷにりんさんにも定期的に【イグニッション】を掛け直して、水晶だらけのダンジョンを突き進んでいくと、階段があった。

 

 エリア的には屋外にしか見えないダンジョンなのにもかかわらず、そこには高々とそびえ立つ上り階段があった。途中で階段が途切れてるように見受けられるけれど、そこが次の層への境目なのだろう。

 

 意気揚々とボク達は第2層を目指して階段を上っていく。このまま現在作られているという第3層まで攻略しちゃいましょう!

 

「れっつごー!」

 

「……ごー」

 

 第2層はボクの想像していた通りの迷路型ダンジョンだ。壁に触れてみたが〈トンネル避け〉が封じられている。迷路を順繰りに通ったほうが出口にたどり着きやすいと灑智の更新情報には書かれていましたね。

 

 もちろん灑智は見た目にもこだわるきゅーとな妹だ。ただの殺風景な迷路ではないらしい。まず地面だけど、感触がすごい。なんだかふわふわしている。真っ白の綿雲のような見た目をしていて、ちょっとでこぼこしてはいるけれど、戦いに支障はない程度か。

 

 迷路を構築している壁もやはり壁というよりは雲。あるいは綿菓子というべきか。触ってみるともこもことした感触が返ってきて、これが『不壊』だとは到底思えない不思議な空間だ。

 

「恐らくは空の上……という演出なのでしょうね」

 

 空を見上げると相変わらず真ん丸のお月様が昇っているのだけど、1層で見た時より少し大きい気がする。少しだけ距離が縮まっているということなのかな?

 

「……綺麗」

 

「ですね。……でもここは第2層、1層とはひと味違う凶悪なモンスターが生息しているはずです。油断はせずに【イグニッション】を維持しつつ慎重に行きましょう」

 

 ボクの少し配信を意識した高らかな宣言に無言で頷くぷにりんさん。そして【ストレージ】から1本の矢を取り出す。

 

 なんだろう?特別な矢なのかな?そうして彼の取り出した矢を見てびっくり。

 

「未鑑定の矢……ですか」

 

 矢は使えば基本的に回収できず、そのまま消滅する。【アーチャー】のスキルには矢を使い回すことができる受動(パッシブ)があると聞いたこともあるけれど、それも確定成功ではない。基本的には何回か使っていれば消費されてしまう。

 

 そんな消耗品に未鑑定・鑑定という概念のアイテムが存在していたこと自体が驚きだけど……よく考えれば昨今は【四つ葉のクローバー】を無限に増殖できるので、消耗品に追加効果を付与するという選択肢もないわけではないんでしょうね。

 

「……お気に入りの矢……消したくないけど……油断しない」

 

「いやいやいや!別にそこまでしなくていいんですよ?レアアイテムを切ってまで攻略するようなダンジョンじゃないです!」

 

 そうぷにりんさんを止めようとすると、どこからか某妹の文句の声が聞こえてきた気がしたが、盛大にスルーします!

 

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>エリクサーかな?

 

>使う機会2度と無さそう

 

>本人の好きにさせてやれやw

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 しかしぷにりんさんの決意は堅いらしく、絶対にこの階層で秘蔵の未鑑定矢を使うと言い張っている。

 

 確かにコメントの言う通り、出し惜しみしてたら一生使えませんよね。それならせめてぷにりんさん秘蔵の矢が発揮する破壊力を配信で激写致しましょうか!

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