卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第334話 神話的立方体

 矢をふよふよ浮かせながらとことこダンジョンを進むボク達。ボクの【パスファインダー】が敵の存在をキャッチするとぷにりんさんが矢をすーっと動かして突き刺していく。

 

 ぷにりんさんの矢にはボクの炎属性ELMによる火力増加が【イグニッション】〈ムゲン発火〉の重ね掛けで最大限まで乗っている。

 

 【イグニッション】は基本的に次に使うスキル1回にだけ出力を上乗せするので、コストパフォーマンスで言うとかなり微妙だ。しかし貫通性能を持つぷにりんさんの【ピアースショット】はモンスターを1体倒したくらいじゃ消滅せず、距離による減衰で攻撃としての役目を果たせなくなるまで何度でも使い回すことができる。

 

 ボクが使う分には過剰出力にも程がある。この炎属性ELMにおける絶大な補正を最大最高のコストパフォーマンスで使える最強スキルが【ピアースショット】なのだ。

 

 サイコロのモンスターは明らかに厄介そうな特殊能力を持っていそうに見えるけれど、【イグニッション】【ピアースショット】にかかれば索敵範囲にも入らず一方的に抹殺できる。

 

 前の階層で厄介なモンスターとして登場した【アイズ・ファミリア】も出てくるけど、このダンジョンは見晴らしの悪い迷路型のエリアであることもあってボク達を視界に収めにくい。1層であればぷにりんさんの【ピアースショット】だけでは倒せなかったと思うのだけど、やっぱり戦闘環境が違えば同じ戦力でも結果は全く変わるのだ。

 

 そんな感じで特に苦戦もせずに順調に迷路を突き進んでいったボク達だけど……。

 

「うわっ、不意打ちですか!?」

 

 【パスファインダー】でも察知できず、光の速度すら捉える瞳でも追い切れない勢いでサイコロのモンスターがボク達の前に迫る。

 

 いや、正確に言えば捉えきれなかったわけではない。リスポーンによって目の前に出現しただけだ。

 

 モンスターの討伐はボクがぷにりんさんに【パスファインダー】の情報をお知らせして進めていたため、突如として目の前に現れたモンスターには彼も即座に対応できない。〈進化(エボルド)〉を果たして光速戦闘に対応できても、こういった想定外への対処はやはり経験が物を言う。

 

 念のために起動させていた«自動戦闘»の【マクロ】が、『うわっ、不意打ちですか!?』なんて驚きと真逆の反応速度で即断して【フェアリーブレス】を撃ち放つ。

 

 それに対してサイコロはその場でふわふわと浮きながら高速で回転し始める。なんらかの特殊スキルが発動したようだけど関係ない。【イグニッション】を乗せた【フェアリーブレス】はサイコロのゲージを一撃で削り取り、HPを全損させる。

 

 しかし残念ながら発動したスキル自体を止めることはできなかったようだ。粒子になってその肉体を消滅させながらも、その体の1から6までの数字を示す黒点だけがはっきりと残り続けている。

 

 職業(クラス)チェンジから別のスキル構成を持つ【メイジ】を引っ張り出して【シャラップ】を撃ち込もうか?そんな考えがよぎるけどもう遅い。賽は投げられたのだ、文字通り。であれば一体どんな効果のスキルが発動するのか、しっかりとその目で観察するしかないだろう。

 

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>イメージとしてはどの目が出るかで効果が変わるスキルだな

 

>1のほうが弱いのかな?強いのかな?

 

>スキルを使うモンスター側の視点で見れば6のほうが強いんじゃない?

 

>こういうスキルもダンジョン作成時に決められるの?面白そう

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 その気になればダイスの数値を改竄することもできるかもしれないけどコメント欄の言うとおり、どの数字がこちらにとって有利なのかという情報がありませんからね。運を天に任せてサイコロをジーっと見守っていく。

 

 ぷにりんさんも弓を両手に抱えながら、移り変わる賽の目をそわそわと見つめていて……やがてサイコロの動きが完全に停止した。

 

 出た出目は『6』。最良にも最悪にも繋がりそうな数字だけど、はてさてその効果は……。

 

 その瞬間、6つの黒点がぴかっと輝いたかと思うと魔法陣のようなエフェクトが地面に4つ発生し、サイコロのモンスターが4体同時に出現した。

 

「倍プッシュって奴ですか……!ぷにりんさん!」

 

「……うん……!」

 

 モンスターがスキルを発動する瞬間をボク達プレイヤーがわざわざ手をこまねいて見つめているだけのはずがない。魔法陣が出現した瞬間、ぷにりんさんは【ピアースショット】を走らせて華麗なるリスキルで敵を仕留めていく。今度はスキル発動の猶予すら与えない。魔法陣などという事前動作がある時点で前提条件は先程とは全く違いますからね。

 

 おまけにご丁重にも4体が1列にきちんと整列なんてしてしまえば貫通の餌食になるのは確定事項だ。一応【フルバーニング】の射程圏内でもあったので、配置の時点で勝敗が決まってましたね。

 

「6の目の効果が次も同じなら対処はできそうですね。複数体との遭遇戦になって対応が遅れると酷いことになりかねませんけど」

 

 4体のサイコロがそれぞれ賽を振ったらさらに追加で6が出てもおかしくないですもんね。そうしたら余計に処理に手間取って無限にサイコロが増殖し始めて……。対処するのが難しいというよりは対処できないと終わる類のモンスターですね。

 

「けれど……突然でなきゃ……だいじょぶ」

 

「ですです。ボクらが遭遇しなければ彼らはサイコロを振らないようですし、先程のような例外的遭遇を除けば基本的にぷにりんさんの矢で暗殺できますからね!」

 

 そう安心しながら迷路を進み始めて少し進んで……すぐに気づいた。

 

 そうだった。確かにサイコロさんはプレイヤーが近づかなければそのスキルを行使しない。

 

 

 けれど――プレイヤーはボク達2人しかいないわけじゃないんですよね……。

 

 

 【パスファインダー】が射程に捉えたモンスターの気配。壁を隔てたすぐ向こう側に、膨大な数の『何か』が蠢いている。

 

 からから、ころころと床に『何か』が転がり落ちる軽い音が響き渡る。その音は1つだけではない。無数の『何か』がただひたすらに己を転がし続け、まるで滝から落ちる濁流のようなうねりを響かせながら――ただひたすらに己を増殖させ続けている。

 

 

 そんな根源的恐怖に満ちた事実に気づいてしまったボク達は《SANチェック》だ。

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