卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第336話 スケアクロウ

 めりぃさんが攻撃を受けてくれている間に、ボクは〈魔導〉〚マインドフルネス〛を発動させて思案に入る。ゆうたさんが教えてくれた、思考速度を加速させる〈魔導〉だ。

 

 今のボクはステータスに妨害(デバフ)を受けている。範囲攻撃である【フルバーニング】は再使用時間(リキャストタイム)待ちだし、たとえ発動できたところでサイコロ共を一掃できるとは限らない。

 

 しかし一撃で倒せなければ無限の増殖が再開され、数の暴力で圧殺されてしまうだろう。

 

 今、必要なのはステータスの妨害(デバフ)を無視できる圧倒的な高火力と範囲攻撃。そんな手札は――ある。

 

「久々ですね――めりぃさん!ぷにりんさんを守ってください!」

 

「りょうかいー!」

 

 めりぃさんに一声かけて、ボクは【オートユーザー】を起動させる。こんなタイミングにぴったりのアイテムがありましたね!

 

 次の瞬間、一条の光線が杖から放たれて1体のサイコロに命中する。光線が命中するとともに小規模な爆発が生じ、巻き込まれた他のサイコロも連鎖的に爆発する。

 

 連鎖するほど爆発は範囲を拡大し、威力を高めていき――ほんのわずかな時間で部屋中を巻き込む巨大な爆発と化した。

 

 数的不利をひっくり返す破壊的な連鎖の前では、妨害(デバフ)の有無など些細なことだ。炎属性の耐性を持たないキャラクターがこの場で生き残れる道理はない。

 

【チェインボム】

[アクティブ][投射][炎属性][攻撃][魔法]

消費MP:8 詠唱時間:0s 再詠唱時間:30m

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[命中時][周囲]の[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[連鎖]に[比例]して[出力]を[増加]させる。

 

 これまでサイコロが足の踏み場もないほどに犇めいていた大部屋は、最終的にボクとぷにりんさんとめりぃさんの3人しかいない寂れた空間になった。

 

 普段なら地形の破壊を心配するところだが、このダンジョンは床も壁も『不壊』で構成されており、なんの影響もなさそうだ。

 

「めりぃさん、ありがとうございました!【チェインボム】は仲間を巻き込むのが欠点ですからね。めりぃさんがいなければ使えませんでしたよ」

 

 そう口ではお礼を言いつつ、ボクは【女神像】で【ナイト】に職業(クラス)チェンジしてスキル一覧を開く。【メイジ】に新スキルがあるように【ナイト】にも新スキルがあるはずだ。

 

「いやいやいいんだよー!卍さんのためならあたし、頑張っちゃうんだからー!」

 

「――見つけた。【スケアクロウ】」

 

「あっ」

 

「新スキルですね。かかしを召喚して『ガード』系、つまり【タウント】や【アトラクト】の起点にできるスキルですか。へぇ」

 

「妹ちゃんがやれって言いました」

 

【スケアクロウ】

[アクティブ][座標][エリア][召喚][魔法]

消費MP:36 詠唱時間:10s 再詠唱時間:1m 効果時間:4m

効果:[スケアクロウ]を[召喚]する。[スケアクロウ]は[召喚者]が[ガード]を[発動]する際、[自身]として扱うことができる。

 

----

>マッチポンプで草

 

>灑智ちゃん速攻売られてて草

 

>めりぃさん最低だなめりぃちゃんねるのチャンネル登録外します

 

>そんなチャンネルはない

 

>卍さんが撮れ高を得られるように悪魔に魂を売ったんだぞ

 

>これ半分MPKだろ

 

>全部MPKだぞ

 

>卍さんなら勝っても負けても美味しいからな。これもファンとしての活動の一環よ

----

 

「灑智?」

 

「めりぃさんが勝手にやりました。私は悪くありません」

 

「ちょっとー!?」

 

 恐らく外で配信を見ているであろう灑智に問いただすと、ボイスチャット越しに盛大な責任逃れが返ってきた。我らがきゅーとな妹の灑智さん。灑智ってたまにこういうことするよね。

 

「他に刺客はいるんですかね?めりぃさん」

 

「知らないー。メールで誘われただけだし。でも確か一斉送信メッセージだったから他にもいるかもー?」

 

「やはりめりぃさんは駄目ですね。時代はぷにりんさんです。めりぃさんなんか知りません。ぷい」

 

「ええー!?許してよ卍さんー!?何でもするからー!」

 

 こうしてめりぃさんはボクの忠実な配下になって一緒にダンジョンを攻略してくれることになりました。

 

 

 まあ灑智は基本、ちょっと頑張れば攻略できる良い感じのバランスでダンジョンを作る方針なのでしょうね。けれどそれだとボクにとってはちょっと頑張っただけで攻略できてしまう。だからこうして刺客を配置してテコ入れを図ったのでしょう。

 

 とはいえめりぃさんはなんだかんだ助けてくれた。けどそれは本人の性格ゆえで、さらなる刺客が忖度してくれる保証はない。

 

 まったく、ボク1人ならまだしも、ぷにりんさんがいるんですよ?一般人を巻き込まないでいただきたいですよね。

 

 ボクが帰るかあるいは別チャンネルに移動すればぷにりんさんが巻き込まれることはない。そう提案してみたけれど、彼はやる気充分のご様子。辿々しくも力ある言葉で「……ついてく」と答えてくれた。

 

「覚悟があるというのならボクもがんばるしかありませんね!幸いめりぃさんというボディガードに最適な下僕も仲間になったことですし、みんなではーどもーどなだんじょんを駆け抜けましょう!」

 

「下僕なのー?お友達扱いしてよー!」

 

「元刺客なんて下僕で十分です。これから敵の攻撃は全部受けてもらいますからね!」

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