卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第338話 過剰戦力

「そんなこと言っても大丈夫っすか?こっちには新兵器があるんすよ?」  

 

「……へいき……?」

 

「あぁ、ああああさんはリアルの肉体に機械を移植してゲーム内に持ち込むプレイヤーなんですよ」

 

 ぷにりんさんはああああさんを知らないと思うので、軽く解説しておく。

 

 基本的にこのゲームは【モーションアシスト】と〈魂の言葉(ソウルワード)〉、それと〈バタフライタクティクス〉があればなんでもできる。それにわざわざ機械を埋め込まなくても〈進化(エボルド)〉で必要な能力を得られる。

 

 そう考えると当時の環境ではインパクトがあったああああさんの戦術も、現環境においては時代遅れ感は否めない。けれど――この自信満々ぶりから察するに、なんらかの隠し球があるのだろう。

 

 以前の彼の姿は右腕に〘銃器〙、脚には〘ジェット噴射〙。そして頭に巨大なカードチップがぐさりと突き刺さった姿だった。さらに左腕には〘Code:Rods from God〙というドローン型の〈魔導〉噴射機構に対する制御装置が搭載されていた。

 

 今の彼も見た目は全く同じと言えるだろう。しかしよく見ると右腕の〘銃器〙や脚の〘ジェット噴射〙機構にも明らかに以前と違う改造が施されていることが伺える。

 

「いいですよ。あなたが灑智からの刺客だというのなら受けて立ちましょう!タイマンで――」

 

「ちょっと待ってくださいっす。なんの話っすか?」

 

「えっ」

 

 ……どうやら灑智に誘われたわけではなく、単純に自分の意志だけで辻斬りしに来たらしい。よく考えたら、そんなに絡みがあるわけじゃなかったですしね。

 

「えっと……刺客じゃないんですね。それなら後にしてもらえませんか?こっちは純粋にダンジョンに挑みに来てるので」

 

「いいっすよ。ならあんたがダンジョンをすぐに攻略できるようにサポートしてやるっす」

 

 そう言いながら【パーティ】の加入申請が送られてくる。それを即断で許諾し、改めて先を急ぐ。ボクとの戦いの前に手の内を見せてくれるかはわかりませんが、配信的にもすごく面白いお人だ。拒否する理由なんてありません。

 

 ただでさえ過剰戦力だったところに新たな仲間が加わり、ダンジョン攻略はますます安定していく。

 

 ああああさんの〘Code:Rods from God〙にはシステムとしての射程限界が存在しない。かつてめりぃさんが使っていた【ドローン】みたいに小型のナノマシンを先行させ、【パスファインダー】よりも遥かに広範囲の敵を索敵していく。

 

 おまけに彼のナノマシンは明確にスキルによる攻撃であると定義されている【ピアースショット】とは違って、モンスターには察知されない。正確には察知されているのかもしれないが、攻撃対象として扱われていないらしい。実態としては彼の肉体の一部であり、ダメージ判定を持つアバターではあるはずなので、攻撃されそうな気がするのだけど――。

 

 そんな感じで今回は、味方であるはずのああああさんの戦い方を観察しつつ、こっそり考察を続けていく。

 

 このダンジョンにおいてボクは【パスファインダー】による索敵役を担当していたこともあり、そのお株をああああさんに奪われて暇になってしまったのだ。

 

 もちろん近くに強い敵が出てくれば高火力の攻撃をぶつけるつもりではあるけれど、基本的には【イグニッション】をかけまくってれば、ボクじゃなくても現状で出現する敵は一撃で倒せる。

 

 しかしその役割も、【イグニッション】の効果が常時維持されている【ピアースショット】が護衛として待機しており、そうでなくてもめりぃさんが完璧な盾役(タンク)としての防御体制を整えているので全く怖くない。

 

 他のみんなはそれぞれ役割を持って活躍しているのに、本当にボクはなにもしていない。

 

 そんな状況をボクはどう思っているのかというと――。

 

「出たー!【ピアースショット】! 次々と5匹の敵を田楽刺ししていくー! ぷにりんさんの矢は相手にとどめを刺す度に新しい矢が増えていくんですよね。今は何本くらいあるんですか?」

 

「……500本くらい……」

 

「凄い、永久機関ですね!確か威力が上がる効果もあるんですよね?」

 

「……うん……でも【イグニッション】があるから……あと、倒した数の分だけ自分がダメージを受けてもHPが『1』残って耐えられる効果もあるけど……今は安全だから」

 

「ですよねー!めりぃさんがいればその効果を発揮する機会なくないですか?めりぃさんやっぱ帰っていいですよ」

 

「ちょっとー!卍さんいじめないでよー!あたしも一緒にダンジョン潜りたいー!」

 

「裏切り者はこの程度の扱いでいいんですよー」

 

「無駄話してる暇があったらもっと【イグニッション】かけてほしいんすけど?」

 

「配信者にとって無駄話は立派なお仕事ですよ!」

 

 すごく満喫しています!暇なのはいいことです。なにせボクの本業である実況解説配信に専念できるのですから!

 

 本当は大会に向けて何か練習なりモンスターの討伐で修行とかしたほうがいいのかもしれないけど、他のプレイヤーさんの動きを観察するのもそれはそれで立派な修行になる。

 

 このゲームは土壇場の対応力や的確な判断力はともかくとして、単純に最適化された動きをするだけなら【モーションアシスト】1つですぐにでも完成された動作をこなせるわけだ。

 

 実戦における慣れももちろん重要だけど、それよりも大事なのは発想力と心の鍛錬。そういった意味ではどんな状況下でも【フォッダー】で生き抜くために必要な鍛錬ができる。つまり、ボクは悪くない。

 

 それに現状の快適な圧殺プレイも、そう長くは続かないでしょうしね。

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