卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
断崖絶壁の向こう側に到達するための作戦会議が始まった。
「解決すべき問題点はMPをどう確保するか、よね? MPが無限にあれば半永久的に跳躍できるのだから」
「そうだな。ただ、ポーションには
「あっ、それは大丈夫ですよ。【アンプルアロー】には
「は?」
ボクの使っている【アンプルアロー】。これにはアイテムであるポーションと武器である矢、その両方のフラグが同居している。
極論をいえば、ポーションを矢として撃ち出しているだけなので、撃たずにそのまま飲むこともできる。しかし、この場合、次に使用するときは通常どおり
一方、矢として撃ち込むのなら
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>今まで使ってたテクニックがさりげなく凶悪性能だった
>バランスが崩壊するから再詠唱時間が設定されてるのにそれを踏み倒すのか(呆れ)
>アーチャー最強伝説かな
>もう全てのアイテムを矢に変えて撃ち込もうぜ
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「なるほど♥ それでしたら、〈ロードウィング〉で飛んでいる人にMP回復薬を撃ち込めばいいだけですわね♥」
「ただ、問題はあります。もちろん距離が遠くなればなるほど、矢は当たりにくくなりますからね。地上から援護する限り、限界があるでしょう」
矢が届く範囲でMPを補給するだけで向こう岸にたどり着けるのなら話は簡単だ。だが、結論としては不可能だ。この手段は、序盤のMPを節約する程度の役割しか果たせない。
「補給者も〈ロードウィング〉でついていけば矢を当てることはできるけど……補給者自身のMPが補給できないわね」
そう、ボクの装備スキル【アーチャータクト】は杖を振るって前方に矢を射出するスキル。自分自身にポーションを当てることはできないのだ。
「矢を上に向けて発射し、うまい具合に位置を調整すれば自分に当てることはできるな。……負担はかかるだろうが」
殺キリト戮さんがそんな作戦の穴を補強してくれた。なるほど、かなりアクロバティックな芸当ですが、【モーションアシスト】を使いこなせるなら理論上は可能ですね。
「練習すればいけそうな気がしますね。試してみますか?」
「お手伝いいたしますわ。【ギフトパス】【対象:プレコグニション】」
明日香さんが【ギフトパス】で【プレコグニション】を貸してくれた。これは【サイキック】が持つ、攻撃や動作の挙動を予測してくれるスキルだ。
撃ち出す矢の軌道を視覚化し、自分からそこへ当たりに行く。かなり変則的な使い方ですが、今回の作戦には有用なパーツです。
「ありがとうございます。他に成功率を上げる手段と言えば……」
「最初にMPを使わずに距離を稼ぐ、いい方法があるわ」
アスナさん(仮)がそう言うと、キリトさんを不意に背負い込み、
「とりゃあッ――!」
背負い投げでぶっ飛ばしたのだった!!
「次!」
「えっ! ボクも!?」
驚きのあまり抵抗することもできず、アスナさん(仮)に投げ飛ばされ、宙を舞うボクたち。せめて心の準備というやつをですね……!
前方を見るとキリトさんはすでに〈ロードウィング〉を使い始めているようだ。ボクも【エアジャンプ】によって体勢を整え、空中を蹴ってその背を追う。
そして隙を見てキリトさんに【アンプルアロー】を撃ち込み、同じものを山なりに撃ち上げる。
【アンプルアロー】の落下予測地点は【プレコグニション】の効果で視覚化されている。あとは自分から当たりに行くだけ。簡単でしょう?
動作自体は意外と簡単に再現できた。あとは失敗しないよう向こう岸にたどり着くだけ。
勝利条件は、キリトさんが向こう岸にたどり着くこと。ボクでもいいのだが、どちらかがたどり着けば【コールグループ】で全員がまだ見ぬ大地に足を踏み入れることができる。
――もしかして、これは楽勝ムード? そんな甘い期待は、次の瞬間に打ち砕かれる。
空中を飛ぶボクたちを見て、飛行型のモンスターが襲いかかってきたのだ。
「おっと、鷹さんですかね?」
【メイジ】としてこの場面で扱えるスキルは
「おっと、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ。これが俺の《二刀流》だ!」
キリトさんは【ストレージ】から1本の剣を取り出すと、勢いよくモンスターに飛びかかる。
「【ペネトレイト】!」
そのままモンスターの翼へ刃を突き立てた瞬間、剣がわずかにぶれた。否、正確にいえばぶれたわけではない――二度の刺突を同時に繰り出したのだ。
だが、あれはスキルの効果ではない。【ペネトレイト】は相手の防御力を貫通するスキル。
考えられる可能性は1つだけ――〈
「って、それのどこが《二刀流》なんですかー!?」
そのままモンスターを踏み台にして距離を取ったキリトさんは、一瞥もせずに再び【エアジャンプ】で先を急ぐ。
モンスターはまだ生きている。本来なら反撃を警戒するタイミングだろう。しかし、それはまともに飛んでいられる場合の話だ。
翼に大きな損傷を受けたモンスターは、かろうじて羽ばたきを続けているが、ボクたちが本気で【エアジャンプ】をすれば到底追いつけない程度の速度しか保てていない。
とどめを刺す手間を惜しみ、靴裏で空気を蹴った――今は速度こそが命綱だ。
モンスターを無視してボクも跳躍を続けることにした。
それにしても、1つ疑問に思うことがある。
キリトさんの使った《二刀流》。あれは明日香さんの〈
たしかに《SANチェック》も戦況を左右するほどの大きな力を持っている。しかし、仕組みを紐解けばその中身は極限に達した演出に過ぎない。
ステータスやシステムが関わるわけではなく、あくまで圧倒的な演技力によって間接的に結果を生じさせているだけ。だからこそ、荒唐無稽な技術でありながら〈
しかし、《二刀流》は違う。
いくら言葉を重ねようと、数値では越えられない天井がある――はずだった。彼はそれを一時的に超越したのだ。
これが許されるのなら、なんでもありになってしまう。おそらく一定の理屈はあるのだろうが、一度の観察では解析しきれない。仮説はいくつか立つものの、現状では断定には至らない。
何にせよ――末恐ろしい人ですね、キリトさん。
テクニックその28 『再使用時間踏み倒し』
ポーションに限らずありとあらゆるアイテムには5分の
余談ですが、食事アイテムにも
憧れの主人公のように二刀流を扱いたいという情熱から生まれた