卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第341話 神話的ボスモンスター

 【グラットンイーター】が同じアクションを続ける限り、こちらも同じアクションで対応できる。

 もちろん警戒は緩めない。いつ行動パターンが変わるかは定かではないが、最後までこのような一辺倒の攻撃が続くとは到底思えない。

 

 ――おそらく戦況が動くとしたら、【グラットンイーター】の現在HPが最大HPを下回ったとき。HPの割合によって行動が変化するタイプのモンスターであれば、そこが分水嶺になるはずだ。

 

 ぷにりんさんも得意の【ピアースショット】こそ封じられたものの、懸命に弓を上下左右に振り回しながら未鑑定の矢を連射する。未鑑定の矢は相手にとどめを刺して初めて効果を発揮する性能だが、単純攻撃力も低くはない。武器攻撃に混ぜてぽんぽんと乱射しながらダメージソースとして貢献している。

 

 めりぃさんは後方から飛び交うぷにりんさんの矢を〈トンネル避け〉で回避しながら【グラットンイーター】に接敵する。相手の攻撃を避ける用途では確実性がないこのテクニックも、フレンドリファイア相手なら安定した回避性能を誇る。これによって前衛と後衛のぱーふぇくとなこんびねーしょんが成立する!

 

「うおー!くらえー!」

 

 【インパクトアップ】、【ディフェンスアップ】、【レジストアップ】――めりぃさんは次々と自身に付与(バフ)スキルを上乗せしながら突撃する。何か策があるのかと思いきや、やることはそれだけ。あらゆるテクニックを放棄し、付与(バフ)を共有したプレイヤーとお馬さんの2人がかりで体当たりを仕掛ける!

 

 相手はえげつない巨体を誇るボスモンスター。物質干渉力で勝利するのはさすがに無理がある――。

 

 しかし結果は予想を大きく上回る。

 

 めりぃさんの突撃で【グラットンイーター】はめこりと凹んでいく。

 

 めりぃさんのような物質干渉力を軸とするプレイヤーのタックルの主たるダメージソースは、弾き飛ばされて壁に激突したことによって生ずる地形ダメージとなる。

 

 つまり本来なら壁に叩きつけられた1回分のダメージ判定で済むはずなのだけれど、狼は壁を背にして戦っているがゆえに継続的な地形ダメージを受け続け、凹んでいく。

 

 たった一撃でもプレイヤーを即死させかねないレベルの物質干渉力を継続的に受けた狼さんのゲージは大きく下降に転じ――現在HPが最大HPを下回った。

 

 その瞬間、【グラットンイーター】は勢いよく壁を突き抜け、大きくノックバックしていく。

 

 間違いない。戦闘パターンが変化した、それも中身入りだ。このままめりぃさんの物質干渉力を受け続けていれば光速時間で10秒も経たないうちに死亡する。そう判断を下した中の人は壁を貫通して後方へ下がり、嵌め技から逃れたんだ。

 

 しかしこのダンジョンでは〈トンネル避け〉は使えないはずだ。少なくともプレイヤーは使えない。しかし鉄球が平気で壁を貫通してきたという前提を踏まえると、モンスター側のスキルや『特権』か……?

 

「ちっ、〚ライトニングボルト〛ではこの壁を抜くことはできないっすね」

 

「でも相手は鉄球を一方的に撃ち込めるんだよねー?」

 

 めりぃさんの懸念は的中した。こちらからは攻撃できない絶対に貫通不可能な壁。その外側から鉄球がごろごろと転がってくる。即座に【キネシス】で制御権を奪って撃ち返したけれど、残念ながら壁に当たった瞬間に跳ね返ってきた。どうやらアイテム自体には壁貫通の効果が備わっているわけではないらしい。ぐぬぬ。

 

 一見すると詰みに近い状況だけど、ゲーム内スキルだけでもこの状況を覆す手段はいくつもある。

 

 【アストラルプロジェクション】なら恐らく壁の向こうにいるであろう狼に近づくことはできるし、なんなら壁の向こうには空間が存在しているようなので、少し遠回りして迷宮を回って殴りに行くのが正攻法なのだろう。

 

 壁を抜けられる射程があるなら【テレポート】の類でもいい。もちろんその間は鉄球がごろごろとプレイヤーをめがけて放たれ続けるのだろうけれど、この攻撃自体には脅威はないので何も問題ない。

 

 このように解法がいくつも存在するバランスの取れたボスモンスターであり、初見のインパクトこそ大きいけれど警戒していたような奇想天外な能力は持って()()()()()のだと思う。

 

 

 ただしそれは普通のプレイヤーがダンジョンに挑戦するときの話だ。

 

 明らかに今回の挑戦には他の挑戦者とは違うであろう要素が1つだけある。

 

 

『ダンジョンにモンスター側として参戦できるようにしてみました。そういうシステムがあるわけじゃないんですけどギミックを利用してうまく作れたかも?』

 

 

 灑智のダンジョン更新履歴に書かれていたこの一文……。間違いない。このシステムが今回の敵に活用されている。【グラットンイーター】の行動パターンが変化した瞬間、〈ロールプレイング〉によってそれを理解した。

 

 

『おねえさま。勝負を致しましょうか♥』

 

 

 ボクが読むことを前提として【グラットンイーター】の中の人が行った思考だ。本当なら〈ロールプレイング〉を使うつもりはなかったにもかかわらず、強引にこちらのアクションを強制してくる極めて強力な〈感受誘導〉――。

 

 

 間違いない、明日香さんだ。

 

 

「まったく、【マインドハック】に匹敵するレベルの〈感受誘導〉を平気で使わないでいただきたいですね!」

 

「やっぱり相手は明日香さんなのー?勝てるわけないよー!」

 

「いやいや、相手は明日香さんじゃありません。明日香さんが操作しているだけのボスモンスターです。楽勝ですよ!」

 

「余計だめじゃん!」

 

 確かに。ボスモンスターという時点でキャラクタースペックはプレイヤーより高いはずだし、その能力を熟練度(プレイヤースキル)の高い明日香さんが使うと考えると恐怖しかありません。

 

 けれどボスモンスター特有のギミック系特殊スキルとプレイヤーが今まで考えてきたバランス崩壊のスキル群のコンボ。どっちが強いかと言えば甲乙つけがたいところもあると思いますよ。

 

『早速【女神像】で職業(クラス)チェンジをしてっと……♥やっぱり【サイキック】ですね。使いやすいスキルが多いですし、【ジョーカー】もありますから♥』

 

 やめて!?

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