卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「さすがですぷにりんさん!ボスモンスターという枷が掛けられていたとはいえ、明日香さんを相手に勝利ですよ!よっ!次期アクタニア!」
「……それ……褒め言葉……?」
確かにいずれアクタニアになってしまうなんて最悪の侮辱でしたね。撤回します。
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>アクタニアかわいそう
>かわいそうに失礼だぞ
>失言だったわ。すまん
>アクタニアってやっぱり異形に嫌われてんだな
>あんな変態ストーカーが異形の頂点なんて恥だし……
>ぷにりんさんを崇めよ
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それから狼さんを討伐しに壁の向こうに行ってしまっためりぃさんやああああさんと合流し、ボスモンスターを討伐したことによって解放された階段を駆け上がっていく。
1階層は水晶の森。2階層はお空の上。さてさて、3階層はどんな所かな?
そうして階段を登った先に見えたのは真っ暗な夜空――違いますね。ここは……。
「わー!宇宙だねー!」
ボク達が登ってきた階段を除けば、周囲にオブジェクトは何もない。地面すらも存在しない。遠くの方で星々が明るく発光しているのは見えるけれど、恐らくあれはただの背景だろう。
〈トンネル避け〉を封殺してまで構築したガチガチの迷路を抜けた後にやってきたのはx軸、y軸、z軸……全ての方向に自由自在に進むことができるかつてない自由度のダンジョンだった。
重力という
幸い酸素がどうこうとか気温がどうこうとかそういう細かい話は特に問題なさそうなので、身も蓋もないことを言えば重力がなくて足場がないだけの普通のマップなのだけど、まあ細かいことはいいですね。
周囲を見渡すと、1階層にもいたタコさんがふよふよと浮きながらこちらに接近してくるのが目に映る。宇宙人と言えばタコさん、というのが大昔から受け継がれてきた常識なのですが、この世界でも同じようだ。まるで水を得た魚のように足をじたばたさせながら俊敏に襲いかかってきた。
《……《『帰って』》……》
その言葉と同時にタコさんは180度向きを変えて逃げていく。
「ぷにりんさんすごーい!超凄い〈感受誘導〉みたいなー?」
「似たような物ですね。対策も難しいと思いますよ」
アクタニアの『権能』とほぼ同等の性質を持っているのだけど、アクタニアさんはその理屈をよく理解せずに行使していた。恐らくは『異形』として最初からその力を与えられて生まれたが故なのだろうけど、逆に後天的に『権能』を行使することができるようになったぷにりんさんはアクタニアが抱えていた弱点を克服している。
『権能』は受けた『言葉』に対して無条件で従ってしまう強力な力だけど、それゆえ解釈を意図的にねじ曲げられてしまえば、逆に相手に優位性を与えてしまう諸刃の剣だ。
しかしそれなら〈感受誘導〉で相手にどんな意図で言葉を紡いだのかを強引に伝えてしまえばいい。最終進化系である『権能』だけを所持していた当時のアクタニアとは違い、〈感受誘導〉の極致として発展したぷにりんさんならそれができる。
アクタニアがさんざん暴れ倒した力の上位互換を持ってるとか危ないって?ぷにりんさんがそんな悪い子な訳ないじゃないですかー!
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>卍さんが自己都合で世界を終わらせた音が聞こえた
>奇遇だな。俺もだ
>ぷにりんさんを崇めよ
>おいやめろバカ
>ぷにりんさんは可愛いから何やってもいいんだぞ
>卍さんが何やっても叩かれてるのは可愛くないからだったのか
>卍さんはきゅーとだから何をやってもいじめられるぞ
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「全国のきゅーとなプレイヤーに謝ってください。……まあ大丈夫ですよ!誤差です、誤差!ぷにりんさんのことは一旦置いておいてそろそろダンジョン攻略再開と行きましょうか!」
「必死に話を逸らそうとしてるねー?」
「下僕は口出ししちゃいけないんですよ?」
「ごめんなさいー」
余談はさておき、ボク達は灑智の作ったダンジョン、その最終階層である第3層の攻略を開始する。
ここまでなんだかんだ色々あったけど、やはり現行の最終層ともなれば難易度が高いことはまず間違いない。
油断せずに行きましょう!
《……《『ばいばい』》……》
《……《『さよなら』》……》
《……《『仲良くしよう』》……》
ぷにりんさんが囁くたびにモンスター達は無害化されていく。なぜか【アイズ・ファミリア】にだけは仲良くしようと声を掛けて、そのたびにお餅みたいな生物がふわふわとボク達の周りに寄ってくる。抱きしめてみると、ぬいぐるみの感触と完全に同じだ。それでもやっぱり本物は可愛い。
ぷにりんさんの言葉で仲良くなった【アイズ・ファミリア】さんは、ボクが抱きしめると「ふにゅー」などという鳴き声を上げながらリラックスし始める。心なしか柔らかさがアップしている気がするのだけど、警戒してないと柔らかくなるみたいな性質があるのかな?
めりぃさんもぷにりんさんも同じようにアイズ・ファミリアを構って遊んでいるけれど、さすがにああああさんはこんなことには興味がないらしい。
もしかしたら戦闘をして経験を稼ぎたかったのなら申し訳ないかな?と思ったのだけど、あらゆるモンスターを戦闘せずに突破していることに対して思うことはないようだ。彼曰く、安定した戦術によって突破できるならそれが最適解とのこと。
【アイズ・ファミリア】は1層から出ずっぱりのモンスターだけど、サイコロやゴーレム、それにタコさんも同じように出現し続ける。迷路のダンジョンではその狭いエリア構成故に実力を発揮しきれていないモンスターもいたけれど、第3層は移動を遮るようなオブジェクトが存在しない宇宙空間だ。索敵範囲も広いのか、うじゃうじゃと押し寄せてくる。
このエリアにはボク達の他にも現在ダンジョンを攻略中のプレイヤーがいるようで、遠くの方で無茶苦茶な数のモンスターに囲まれながら乱獲を繰り返しているプレイヤーがいますね。しかしすでに6人【パーティ】のようなので声をかけるのはやめておく。
もちろん新規モンスターもいるらしい。それは全身を金属甲冑で覆った人型のモンスターなのだけど、明らかにサイズが大きい。ボクらの何倍もの大きさを誇る巨人のような体躯をしていて、あるいはボスモンスターでもおかしくないと思わせる風貌だ。
「初見のモンスターだねー。1回普通に戦ってみる?」
ぷにりんさんの力で他のモンスターと同じように逃がせることは確認済みだ。しかしどんな戦い方をするのかも知らないまま戦闘を回避していてはもったいないし、通用しない敵が現れた時には厄介だ。
そう、ぷにりんさんの『権能』が通用しないタイプのモンスターというのも存在し得る。基本的にこの辺りのモンスターはAIが制御している――要するに中の人がいるようなのだけど、だからこそ彼の言葉は通用する。
しかしモンスターの中にはHPが一定以下になったら回復するだとか1番攻撃力が高いキャラクターを狙うだとか、プログラミングされた戦術パターンに従って動く中身のないキャラクターという例もあって、そういう敵の場合は意志が存在しないのでぷにりんさんの力が介入する余地がない。
基本的にはAIが操作するモンスターより弱いので採用する必要はないはずだけど、この場なら出てきてもおかしくない。なにせこのダンジョン攻略は灑智が見守っているのだから。
やはり他のみんなも新しいモンスターがどんな能力を持っているのかについてはみんな気になるようで、試しに戦ってみることになった。
まずああああさんが〘Code:Rods from God〙を起動させ、四方八方から騎士のようなモンスターに雷撃を浴びせていく。1発の威力は低いけれど、圧倒的な物量から考えればボクの炎属性スキルにも引けを取らないDPSを叩き出しているはずだ。戦うとは言ったけれど、これほどの弾幕を撃ち込めば戦い方を見る前に戦闘が終わってしまってもおかしくはない――。
そんな考察はこのダンジョンのモンスターにおいては当然のように成立しない。絶え間なく撃ち込まれる雷の嵐をもろともせず、騎士は棒立ちのままだ。
【フォッダー】のモンスターは攻撃を受けると同時に名前とHPゲージが頭上に表示される。あの騎士は攻撃自体は受けているようなのだけど、明らかにダメージは0だ。ミリ単位どころかナノ単位で見てもゲージに変化はない。
「よほど防御力が高いのでしょうかね。彼の〚ライトニングボルト〛は一桁でもダメージが与えられれば洪水のようにダメージを重ねられるわけですけど、肝心の威力が低すぎる。あまりにも硬い敵に対しては通用しないのでしょう」
「これは要研究っすね。どこぞの【メイジ】やおおよそのプレイヤーの防御力ならそれでも貫通できる筈っすけど、対MOBには向かないようっすね」
ああああさんが攻撃を諦め、〘Code:Rods from God〙を停止させたところで騎士が動く。
騎士は光の速度でこちらに距離を詰めて拳を振りかぶる。武器を使いそうな見た目とは裏腹に、拳で勝負か。
「【タウント】ー!」
即座にめりぃさんが馬と共に前に躍り出て、その攻撃を受け止める。物質干渉力では当然のようにめりぃさんが勝利した。激しいぶつかり合いが発生したにも関わらず、まるで微動だにしないめりぃさん。反撃として馬が思いっきり頭突きをすると、騎士は派手に吹き飛んでいく。
しかしダメージはない。めりぃさんの
しかしそれを差し引いても〚ライトニングボルト〛よりは高いダメージを与えられると踏んでいたのだけど……。どうやらこの騎士もダンジョンの例に漏れず、特殊な性質を持っているのでしょうね。