卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
めりぃさんの馬に派手に弾かれた騎士だが、当然ながらダメージはない。
その間にボクはぷにりんさんへ【イグニッション】を付与する。ぷにりんさんは同時に【ピアースショット】を放った。単純に防御力が高いだけなら【イグニッション】で抜けるはずだ。
矢の発射をその目で捉えた騎士は最低限の動作で少しだけ半身を捻り、攻撃を回避しながら再び直進しようとしたものの、〈流水誘導〉の使い手に対してそれは悪手だ。
騎士の動きに合わせて矢は巧みに軌道を変えて胸部に直撃し、そのまま貫通する【ピアースショット】。これまでのあらゆる敵をその一撃で葬り去ってきた絶大なる火力。ボスモンスターならともかく雑魚モンスターなら当然一撃で――。
「……耐えた……」
「マジですか!?」
ダメージは入った。これまでの攻撃ではダメージすら入らなかったのだから、確かに最高峰の火力は存分に発揮されている。しかしそのダメージはゲージの半分を削るには至らず。【イグニッション】込みでこのダメージだとしたら、この世にいるほとんどのプレイヤーはこのモンスターを倒せないのでは……?
再びこちらに迫る騎士に対してめりぃさんが馬を走らせながら相対して――騎士はするりと彼女をそのまますり抜ける。
「あれー?」
〈トンネル避け〉だ。ドヤ顔で攻撃を受け止めようとしためりぃさんを問答無用で無視し、後方のプレイヤーへ迫る。
基本的に受け手側の〈トンネル避け〉と攻め手側の〈トンネル避け〉の干渉は五分五分だ。相手の攻撃を完全に回避できることもあれば、逆に全く逸しきれないこともある。
この辺はプレイヤーの精神状況やらタイミングやらでいろいろと変わってくる。今回のめりぃさんが敵の突撃を素通りさせてしまった理由は【ナイト】のスキル【タウント】にある。
相手モンスターの攻撃ターゲットを誘導するスキル【タウント】――これを発動すれば普通のモンスターはめりぃさんを狙って攻撃する。まさかすり抜けて後方を狙うはずがない。その油断を突かれたんだ。
それならばここはボクが受けよう。幸い今回のボクは【パインサラダ】を食べているので連撃でなければ受けられる。一撃を受ければその間にめりぃさんが対応してくれるはずだ。
というわけでボクは正面から【フェアリーブレス】を撃ち込む。【フェアリーブレス】は特殊能力に偏ったスキルなので【イグニッション】がない限り威力はさほど高くないが、命中さえすれば【煈颷の刻印】によって炎属性ELMを上げられる。これを布石に次のスキルを――。
「グギャアアアアアアアアァァ!!」
そしてあっけなく騎士のHPが全損し、消滅していく。……あれ?
----
>VIT特化タイプだったか
>いくらなんでもフェアリーブレスで即死するか??
>めっちゃ能力偏ってて草
>こりゃMND型もいるな
----
ボクなんかよりもよっぽど勘がいいようで、コメント欄の人が先に答え合わせをしてくれた。なるほど、そういう類ですか。
「ごめんねー。次はちゃんと受け止めるからねー」
「いえいえ、致命的な事態にはなりませんでしたし、大丈夫ですよ。それにしても――〈魔導〉って、ダメージ計算時はVIT参照してるんですね」
ボクは先の戦いで疑問に思ったことをああああさんに問いかける。しかしああああさんは当たり前だと言わんばかりの態度で答えた。
「そりゃそうっすよ。スキル以外の攻撃は全部が物理っす。使えるとは言えゲームに具体的な定義がされてるわけじゃないっすから」
システムに定義されていない現象が起きていると考えると理屈はわかる。けれど〈魔導〉は世間に広く認知されていて実質このゲームでも発動が認められている。〈魔導〉という名を冠するくらいなのだから、MND依存にしてもいいのではと思うんだけどね。
「なんにせよ次から今の騎士はボクが対処します。MND耐久の高い相手がいたら皆さんにお任せしますね」
そうしてボク達は再び宇宙空間をただよい始める。一見すると周りには背景の星々以外、何もない。どこに行けばいいのかはわからないけど、とにかく【モーションアシスト】によって正解であろう道を選択してその方向へ向かう。
先程の騎士に似ているようで少し違う、黒騎士のようなモンスターも出てきたけどこちらはMNDに大きな耐性を持っているようだ。【ピアースショット】で瞬殺できたので特に問題はなかったけれど……このダンジョン、ソロで挑んでいたら苦戦してましたね。
こうして安定の攻略パターンが確立され、作業のようにモンスターを討伐し、【アイズ・ファミリア】だけは仲間にしていく。このまま順調ならクリアできそうですけれど――さて、どうなるでしょうか?