卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「……凄い……」
「確かに魔力は凄いっすけど……所詮、魔力のままでは宝の持ち腐れっすよ?問題は使い手の技量っすよ」
小馬鹿にするような態度で虚勢を張るああああさんだけど、本心では理解している筈だ。これだけの魔力量があれば技量なんて必要ない。〈魔導〉に対する露骨な出力弱体化パッチが入っている【フォッダー】という環境下であっても、これだけのリソースがあれば〚ライトニングボルト〛1つで地上の全てを破壊するくらいは容易くやってのける。
その後に残るのは〈不壊化〉が施された【ホーム】のみだ。
今までログインしなかった訳だ。全能も〈トンネル避け〉も無い時代からこんな力を持っていたのなら、彼女に敵は存在しない。
サービス初日にログインした瞬間、魔力の圧だけで全てのプレイヤーが異常を訴え、たった一撃で絶対に勝ち目の無い格の違いを植え付けられる。今の時代でこそ冷静に勝ち筋を思考・考察できているけれど、当時そんなプレイヤーが出てきたら馬鹿らしすぎて全員引退していたに違いない。
そういう意味では【
「まだですかっ?お姉様たちと戦えるの、楽しみにしていたんですよ!」
ボクたちがあまりの威圧感に気圧されているところに、灑智はほんわかとしたきゅーとな声で催促する。……そうですよね。ボクが誘ったんですもんね。
灑智はボクと一緒に遊びたがっているだけだ。そのために本気の本気を出せる特別製のフィールドを作ってボクを待ち構えていた。
それなら付き合ってあげなくちゃいけないですよね!確かに凄くびっくりしたし混乱もしたけど、彼女が求めているのはすっごくシンプルだ。
姉であれば妹のお願いは聞いてあげないとね!
「みなさんはどうします?」
今まで【パーティ】メンバーとして付いてきてくれた仲間たちに声を掛ける。ここまでダンジョンを一緒に攻略してきたわけだけど、今回は完全に我が家の問題であって、他の人は関係がない。
一緒に遊びたいということなら灑智は喜んで加えてくれるだろうけれど、ダンジョンをクリアするだけならあの扉を抜ければいい筈だ。
「なーにいってんの。あたしは今日1日は下僕なんでしょー?」
「めりぃさん……」
「がんばる……!」
「ぷにりんさん……」
「じゃあ先にクリアして待ってるんで終わったら対戦よろしくっす。死に戻ってもリベンジより対戦が先っすからね」
「はっ倒しますよ?」
そこは友情パワー的な感じで乗ってくれるところでしょうが!他の2人はなんかそれっぽいことを言って感動的な演出をしてくれているというのに!
まだかなまだかなーとボクたちを眺めながら素直に待ってくれている灑智を配信に映しながらボクはああああさんを説得する。
「まあ嫌ならいいんですけどね?どうせ同じ〈魔導〉使いとして力の格差を感じとってしまって怖気づいている……といったところでしょうが。どうぞあの扉をお先にどうぞ?」
「はぁ?そんなわけないじゃないっすか。まったく、仕方ないっすね。あんたが僕の協力が必要だって言うんなら手伝ってあげてもいいっすよ?」
「さすがああああ様!器が大きい!ぜひお願いします!感謝感激雨あられ!」
「やれやれ、もっと感謝するべきっすよ。やれやれ。これは器の大きい僕の善意による協力っすから。やれやれ」
「チョロい」
さて、それでは本日のダンジョン攻略におけるラストバトルの始まりだ。
プレイヤー同士の戦いなら本来は試合開始の秒数カウントや条件を合わせるために全ての
今回の灑智はこのダンジョンにおけるボスモンスター。公平な条件なんて必要ありませんよね?――と言っていたところでああああさんが死んだ。
「ああああさんーっ!」
〈魔導〉もスキルも発動していないし、灑智は微動だにしていない。にもかかわらず、あっけなくHPが全損して消えていく。あんなに大言壮語を披露していたというのに、こんなにもあっけなく死んじゃだめですよ!?
「ここは私の魔力によって支配された空間ですよっ。そんなところで悠長に雑談をしてて生き残れるはずがありませんよね?」
……どうやら事前に準備をしていたのはボクたちだけではなかったらしい。むしろボクたちを覆う全ての魔力が彼女の一部分であると考えると、【イグニッション】なんて準備は灑智からすれば子ども騙しみたいなものだ。悠長に話している場合じゃありませんでしたね。
ボクも体内から魔力を意図的に外へ解放して、灑智の魔力を押し返していく。絶大な物量を持つ灑智の魔力だけど、彼女は宇宙空間全体に幅広く領域を押し広げている以上、ボクの周囲だけならそれに劣る魔力量であっても対抗するのは難しくない。
ああああさんがなるべく早く戻ってこれるように【ストレージ】から家を取り出してそこらへんにぶん投げておいて、さあバトルの開幕だ。簡単に妹に負けるわけにはいきません。姉として灑智を精一杯楽しませてあげましょうかっ!