卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第348話 ゲーム機破壊タクティクス

 ボクの放った【アブソーブ】は――届かない。

 

「私の〚エデン〛は多重構造ですので」

 

 〚アンチマジック〛では一度に一つ〈魔導〉しか打ち消すことができない。多重に阻まれ外界を隔てる〚エデン〛のせいで、システムが虚しくも『ターゲットが見つかりません』と告げる。

 

 即座に凝縮した魔力の針が生成され、隙だらけのボクを襲う。

 

『《«ガゼルフット»》!』

 

 自力での回避は困難だと判断し、ボクは〈ディープワード〉として〈魂の言葉(ソウルワード)〉と【マクロ】を同時に起動させる。【モーションアシスト】は無限の未来から回避の最適解を導き出し、上半身と下半身を分離させ、攻撃を回避した。

 

「〚アンチマジック〛!」

 

 再び〚アンチマジック〛を発動させると同時に、灑智の眼前に生み出された雷の〈魔導〉が即座に掻き消えた。

 

「くっ!」

 

「〚アンチマジック〛は打ち消す〈魔導〉を指定することができません。私の雷より疾く撃ち込んで来てくださいねっ」

 

 そんなことを言われても、今の〚ライトニングボルト〛は完全にノータイムでしたよ!?そんなクレームを入れる間もなく蒼い針がボクをめがけて四方八方から襲い来る。ボクはそれを〈トカゲの尻尾避け〉でなんとか回避していく。

 

 この針の攻撃も厄介だ。威力だけではない。()()()()()()()。隙が見当たらないほど量子単位でぎっしりと魔力が詰まっていて、〈トンネル避け〉では回避できない。〈トカゲの尻尾避け〉は回避行動のたびに僅かな隙が生まれてしまうし、このままでは命中するのも時間の問題だ。

 

 せめてもの抵抗としてボクは灑智に視線を向けて〈観察破壊〉を起動するが、やはり〚エデン〛に阻まれる。あの〈魔導〉を破らなければ――!

 

「何をやってるんすか。ちまちま単発の〈魔導〉を撃ってる場合じゃないっすよ」

 

 後方からああああさんの『ナノドローン』が大量に飛んでくる。針の魔力を器用にかわしながら灑智をめがけて〚アンチマジック〛を起動させた。

 

 そうか、ああああさんの『ナノドローン』はそのすべてが〈魔導〉の噴射機構だ。多数の〚アンチマジック〛を同時に起動させれば灑智の〚エデン〛を打ち消せる!

 

 ボクはああああさんの〚アンチマジック〛に合わせて再び【アブソーブ】を――。

 

「【シャラップ】」

 

 その瞬間、ボクのスキルが打ち消される。【フォッダー】版の〚アンチマジック〛である【シャラップ】だ。

 

 同時に灑智の針がボクの右耳を掠め、HPのほぼすべてを削り取られる。【パインサラダ】が起動して全損は免れたが、威力が高すぎる……!

 

 その場に留まるのは危険と判断し、ボクは【ホームリターン】で後方に下がって【ファストリカバー】を起動する。そして予備の【パインサラダ】を取り出し、もぐもぐ食べ始めた。

 

「なにやってるんすか、チャンスだったっすよね?」

 

「そんなことを言われても!」

 

 【パインサラダ】を咀嚼しながらああああさんの文句に反論するが――ふと気がついた。そういえばめりぃさんが戻ってこない。

 

 ふと横を見るとぷにりんさんが矢を乱射して針を相殺しようと頑張っているのが視界に映る。けれどやはりめりぃさんがいない。ああああさんですら戻ってきたのだから、めりぃさんの性格なら速攻で戻ってきそうなものだけど――。

 

「めりぃさんは戻ってきませんよ」

 

 ボクがめりぃさんを探していることに気づいたのだろう。さも当然のように、彼女はさらりと疑問に答えた。

 

 

「私の魔力に『バーチャルステーション2』如きが耐えきれるはずがありませんので」

 

 

「は?」

 

----

>【悲報】灑智さん、他人のゲーム機を破壊してしまう

 

>草

 

>これ半分犯罪だろ

 

>どういう仕組みだよw

 

>めりぃさんかわいそう

 

>責任取って卍さんが賠償しろ

----

 

 『バーチャルステーション2』が耐えきれない?つまり、壊れるってこと?人のゲーム機に何をやってるんですか、この妹は!

 

「逆にああああさんはなんで戻ってきたんですか?」

 

「予備のゲーム機っすよ。後で弁償してもらうっすからね」

 

 何にせよゲーム機が壊れたら戻ってこれない。ゲーム内のボスは【ホームリターン】で何度も戻って戦うのが王道だったけれど、その手法は使えないということだ。

 

 もちろん――妹を相手に何度も全損させられる気はありませんでしたけどね?

 

「ああああさん、予備の『バーチャルステーション2』はいくつありますか?」

 

 ああああさんはボクに視線も向けずに答える。

 

「2つ持ってるだけでも褒めてほしいくらいっすね。本当は3台あるっすが――もう死ぬ気はないっすよ」

 

 そう言いながら灑智を睨みつける彼の瞳には、確かな闘志が宿っていた。

 

「了解です。しかし、ぷにりんさんをこの戦いに巻き込むのはひどいですね」

 

「……気にしないで……」

 

「そうは言われても、気にしちゃいますよ。ああああさんならまだしも」

 

「先にあんたを全損させるっすよ?」

 

 仲間たちと軽口を叩き合う間も、灑智からの攻撃は飛んでくる。針は無慈悲にもぷにりんさんをめがけて迫り来るが――。

 

「ご迷惑はかけられませんのでね、本気を出しちゃいますか」

 

 〈流水誘導〉で魔力の針を明後日の方向へと逸らし、灑智をめがけて再び光の速度で駆け抜ける。

 

「ああああさんは〚エデン〛の解除をお願いします!ぷにりんさんは――応援してください!」

 

《……《『頑張って』》……!》

 

 ぷにりんさんの応援は『権能』の域に達している。魂が揺らぎ次元を震わせて〈進化(エボルド)〉していくのを感じ取る。

 

 期待に応えなくちゃいけませんね。ぷにりんさんの――そして灑智の。

 

「さぁ、第二ラウンドの開始ですよ!」

 

「お姉様、来てください!」

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